Case2-8 警戒心
しん、とした夜の山道。
そこに、純色の赤が浮かび上がる。
その赤色は、フラフラとゆっくりと人里の方向へと進んでいる。
翌朝。
何時もの様に愛歌と飛夜理は歩いている。
「昨日、奇妙な物を見た村民がいたの....」
愛歌がそうぼやく。
は?と話を聞いていた飛夜理は首を傾げた。
「奇妙な....物....?」
「えぇ。赤くてそれが来た地面には、数十メートル近く、刃物を引きずったような跡があったらしいのよ」
ふぅん、と顎を支えた。
この話には裏がある、そう飛夜理は考えた。
「それより、舞菜は....?」
「?そういえば見てないな。」
ガラッ
小さく木のかすれる不協和音が響いた。
二人は無意識にドアの方を向いた。
「あ、お、おはようございます....」
へなっと不安定な笑顔の優が現れた。
「おはよう、どうかしたか?」
「い、いえ!なんでもないです....あはは」
今日は何時にも増して、警戒心が強い。
何かあるな、と飛夜理は軽く睨んだ。
「な、なんですか....?」
「........お前、何か隠してないか....?」
「なんにも、ないです....よ....?」
ならいいが、と目つきを緩めた。
隣の愛歌もいつもと違う飛夜理の表情に目を見開いた。
そして、一拍置いた次の瞬間、優は軽く右手を握った。
その時、飛夜理と愛歌の目に入ったのは、長袖の裾の赤い塗料の様なもの。
「優、なんだそれは。」
「昨日、創作はなかったわよね?文化祭も秋祭りも用意には早いわ。」
「........!」
あはは、と苦笑いをして見せる優。
妙な事が重なった中、もあが入ってきて授業が始まった。
絵:たぴおか様




