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宮本和哉と藤枝家の人々(後編) 課長視点です
「お父さん、宮本さん来ましたよ」
母親に声をかけられて、ソファに座っている男性は慌てた様子で新聞を置いた。
「ただいま、お父さん」
董子が声をかけると、嬉しそうに「おかえり」と言う。その後、「やあ、いらっしゃい」と言葉が続いた。
「宮本さん、どうぞこちらにかけてくださいね。董子はもちろん宮本さんの隣ね」
「「かーさん。俺たちは?」」
居間に入ってきた双子が言うと、お母さんは「あなたたちは自分の部屋で待機」とまるで犬にハウス、と指示するように恐らく階段のある方向を指差した。
「「えー、なんでだよ」」
「つべこべ言わない。ほら、さっさと行きなさい」
どうやら藤枝家で一番の強いのは母親とみた。
仕事柄、営業の人間と同行することも多いため人と話すことに緊張はしない。
だけど、さすがに彼女のご両親に結婚の挨拶をするというのは勝手が違う。
互いに、今日の用件が分かってるだけにタイミングを計ってる感じで、時間が流れていく。
董子とお母さんは会話が弾んでいるけど、俺は質問されたことに答えるくらいだし、お父さんも同じようなもの。
どこで切り出したらいいものか・・・そう思っていると、ふと会話が途切れた。今なら言えるかも。
「あの・・・お父さん、お母さん」
とたんに場がちょっとした緊張感でいっぱいになる。
「なんでしょうか、宮本さん」
お父さんが背筋を伸ばしてこちらを見つめる。隣にいるお母さんは、なぜか瞳がきらきらしている。
「藤枝さん、董子さんとの結婚を許していただけないでしょうか」
「お父さん、お母さん。私と和哉さんの結婚を許してください」
俺の隣で、同じようにご両親に頭を下げる董子。
「宮本さん、頭を上げて?私たちは反対するつもりなんかちっともないわ。ねえ、お父さん」
お母さんが黙ったままのお父さんをチラリと見る。
董子もお父さんに視線をむけたので、俺も思わず同じ方向を見てしまう。
「・・・・確かに、反対する気はないよ。でも董子、一つ聞いてもいいかな。宮本さんは董子を大事にしてくれるかい?」
お父さんが静かに口を開いた。
「お父さん、心配しないで。和哉さんは優しいし頼りになるよ」
「そうか。宮本さん」
「はい」
「董子をよろしくお願いします。」
お父さんがにっこり笑った。
その後、お母さんに勧められて夕食をご馳走になったときに俺は弟さんたちの職業を知った。
「え。海上保安官!?」
「はい。現場で勤務しています」
「文斗はさー、ドラマ見て憧れちゃったんだよね~。そのあと原作のマンガも読んで俺も潜水士になるって、それから一直線」
理斗君がけたけたと笑いながら言う隣で、なぜかむすっとしている文斗君。
ドラマってあれか。映画になったやつ。
「理斗君も公務員だと聞いたけど」
「僕は科捜研で働いてます」
「は?」
「理斗だって、好きな海外ドラマに影響されて同じような仕事がしたいって決めたくせに」
「まあねー。あのとき、自分の性格と成績から考えてまあいけるだろうと踏んで頑張ったからね」
海外ドラマってあれか。いろいろスピンオフのあるやつ。
「2人ともすごいんだね」
「「別にそんなことはありませんよ」」
まるで合図をしたかのように、2人同時に同じ答えがかえってきた。
読了ありがとうございました。
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双子の職業ですが
文斗は、ノリで決めました。だってドラマみたことないし。
理斗のほうは・・・
マイアミやらNYのスピンオフがある例のヤツです。
すいません・・・作者の趣味です。




