おまけ
山崎くん視点です。
彼女はいたけど、どっかでいつも気になっていたのが同期入社の藤枝董子。
当時は今みたいなショートカットじゃなくて、肩までのセミロングでゆるいカールのかかった髪だった。総務に配属された彼女は、教育係だった総務のラスボスこと林さん(現在の姓は秋山さん)に見込まれたらしくいつも忙しそうに、だけど楽しそうに働いていた。
最初の同期会のときに偶然隣になったので、軽い感じで現在の状況を聞いてみた。
「仕事、大変みたいだな。林さんの下なんだろ?」
「まあね。でも林先輩に教わってることに無駄なことは一つもないよ。全部納得できてるから楽しい。」
だけど、緊張はするよねえとちょっと笑った藤枝をみて、どきっとした。
大学時代から付き合っていた彼女は、いかに先輩が嫌な人間なのかとか仕事が辛いとか言い寿退社がしたいと匂わせてきていた。
いけないと思いつつ、彼女とデートをしていてもついつい思い出すのは藤枝だった。
それからだいたい8年・・・・その間も俺は彼女がいて、藤枝にも彼氏がいた。藤枝が彼氏と別れる少し前、俺も彼女と別れていた。
気持ちを自覚した頃、俺にもたらされたのは東北支社への辞令だったのである。
藤枝に決定的にふられてしまった俺は、なぜか坂本さんと酒を飲んでいる。
「俺、ふられてしまいました」
「そのようですね。山崎くんなら新しい出会いはいくらでもありますよ。ああ、秘書課の山下さんなんてどうですか」
坂本さんから山下の名前をきいて思わず酒を吹き出しそうになる。
「いや・・・それはちょっと。俺にも好みと言うものがあります」
「まあ、確かに藤枝さんとは雰囲気が違いますね。」
坂本さんは失礼しましたとにこやかに言う。この人・・見た目は優しげだけど、3課設立の際に宮本課長が引っ張ってきた人だけあって、相当な人だ。
「山下さんは結婚願望が強いみたいですからね、山崎くんがプロポーズすればすぐにOKしそうだったものですから」
「もしかして、坂本さん・・・山下のこと嫌っていますか?」
「いいえ。嫌うほどでは。ただ、ときおり用事もないのに3課に顔を出すのがうっとうしいなと。秘書課はそんなにヒマなのかと思っているだけですよ」
それって嫌ってるということじゃないですか・・・。
とはいえ、それを突っ込む勇気は俺にあるわけがない。
「山崎くん。そのうちきみにもお似合いの人が現れますよ。藤枝さんはうちの課長に譲ってやってください。あの人もああなるまで大変だったんですよ」
そう言って、坂本さんが話してくれた藤枝をつかまえるまでの話は、思わず宮本課長に同情してしまうほどだった。
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山崎くんにも明日はきっと来る・・・はず。




