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動き出すもの-3
「山崎くん、あの、離して?」
「嫌だって言ったらどうする?」
そう言うと、山崎くんは腕をつかんでいる手に力をいれた。
腕をつかまれて困っているのは私なのに、なぜか山崎くんの顔も辛そう。普段の人当たりがよくて同期のリーダー格でもある片鱗はどこにもなかった。
「どうするって・・・うーん・・・とりあえず足をけっとばす?」
私は思いつくまま言ってみる。すると予想外の返答だったのか山崎くんの手がゆるみ、笑い出した。
私があわてて腕を外したのを見ても、山崎くんはふたたびつかもうとしない。
「普通、そこは助けを呼ぶとかじゃない?まいったなあ・・・俺、強引に迫れないじゃないか」
「へっ・・・ご、強引に迫るって」
「俺、藤枝が好きだよ。」
「えええっ!今言われても」
「今言われてもって藤枝は言うけど、いつも宮本課長が邪魔をするし・・・」
「は?課長が邪魔するって?」
「・・・俺、宮本課長を違う意味でも尊敬するよ」
それは暗に私が鈍いということを言われているようで、イマイチ気分がよくないのですが。
「山崎くん・・・」と私が口を開きかけたところで、「そこまでだ。山崎」と棚の向こうから課長が顔を出した。
「宮本課長!」
私も驚いたけど、山崎くんはもっと驚いたようで寄りかかっていた机から離れた。
「ファイル1冊しか頼んでないのに、藤枝が戻ってこないから心配して来てみれば・・・ったく、山崎。なぜ資料室にいる?」
課長がじろりと山崎くんを見る。
「総務に用事があって立ち寄ったら藤枝さんが、資料室の鍵を借りていくのが見えまして。探すのを手伝おうと思っただけです」
「え。課長に言われたんじゃなかったの?」
「悪い。そこはウソをついた」
山崎くんが両手を合わせて拝むように謝ってくる。
「藤枝、ちょっとは疑えよ。重いものだったら最初から高橋を行かせる。」
課長はあきれた口調で私のほうを見て、ため息をつくし・・・私が悪いのかい?でも、山崎くんを疑うなんて私にはできませんよ。
「課長。山崎くんは同期で友人です。とても信頼できる人です」
私がきっぱりとした口調で言うと、課長はちょっとびっくりした顔をしたもののうなずき、山崎くんも目を見開いた。
「山崎、藤枝が信頼してるってさ。よかったな」
「・・・いいんだか悪いんだか。藤枝もひどいよな」
山崎くんは私をみて苦笑いした。
「え。」
「何も彼氏の前で、振らなくても。」
「へっ?」
山崎くんに言われて今までの流れを考えると、確かに私が振っている・・・課長の目の前で。
「ご、ごめんっ。山崎くん」
「・・・いいよ。藤枝から信頼のできる友人って思われてるだけでも。」
そういうと、山崎くんは私の頭に手を乗せて、わしわしとなでる。
「・・・山崎」
なぜか隣にいる課長の声から冷気が漂っているように感じるんですが。
「心が狭いですよ、宮本課長。」
山崎くんはそういって人の頭をなで続けるけど、私はペットじゃないんですが。
どうやら気が済んだらしく、山崎くんは出口に向かって歩いていき、なぜか途中で振り向いた。
「あ、そうだ。藤枝、課長と別れたらいつでも連絡してくれよな」
「えっ」
「そんな予定はこれから先も絶対ない」
課長がぴしゃりと言うと、山崎くんは楽しそうに笑って資料室から出て行った。
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董子のボケた性格だもん、緊迫しないよねえ・・・
山崎くんと課長の間では、多少の緊張関係はあったみたいですけど。




