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動き出すもの-1
季節は秋になり、真生が結婚した。式と披露宴に招待されて、私は真生に式後に呼ばれてブーケをもらった。
プリザーブドフラワーにしてもらったワインカラーのバラとカラーのブーケは、とてもきれいで、部屋に飾るとすごく華やかになるのは間違いなしだ。
「ありがとう、真生」
「次は董子の番かなあ」
「それは分からないよ。」
「そうかなあ~」
真生は首をかしげるけど、課長と結婚の話が出たことなんてこれまで一度もないのだ。
3課に山崎くんが顔を見せたのは、真生の結婚式から1週間たった頃だった。
「藤枝」
「あれ?山崎くん。いつこっちに来たの?」
「さっき。これから1課で打合せなんだ。」
「そうなんだ。今度はどれくらいいるの?」
「今週いっぱいかな。明日は3課と打合せだよ。これいつもの」
そう言って、私に差し出してきたのは某松モナカ。
「わー、ありがと」
「あのさ、藤枝。こっちにいる間にメシでも一緒に食わないか?」
「うん、いいよ。同期のみんなに声かけておくよ」
「え。いやそうじゃな・・・」
「藤枝」
そこに課長の声が割り込んできた。
「はい」
「山崎、久しぶりだね。」
「お久しぶりです。失礼します」
「ああ、明日の打合せはよろしくな」
山崎くんが頭をさげて3課のフロアを出て行く。
「藤枝。悪いがこの書類の修正を頼んでいいかな」
渡された書類には付箋があちこちに貼ってあって、結構な量だ。ぱらぱらとめくっていくと、定時までにはちょっと厳しいかもしれない。
「わかりました。いつまでに提出すればいいでしょうか」
「明日の午前中だな。山崎との打合せに使うんだ」
「そうなんですか。あ、課長。山崎くんから課長も好きなモナカいただきましたよ。あとで分けますね」
「・・・それはありがとう。」
そこでなぜか私をちらりと見る。何か顔についてるんだろうか。
「課長、私の顔に何かついてます?」
「え?いや、なんでもないよ。仕事、頼むな」
「はい。」
課長が自分の席に戻っていく。なぜか、坂本さんが笑いをこらえていた。
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「天使の前髪」
本編+おまけで全5話。8/18(日)まで更新いたします。




