2.
廊下ではお静かに。の巻
3課に向かう廊下を歩いていると呼び止められた。
「・・・いつから宮本課長とつきあってるんですか」
声をかけてきたのは長めの髪にふんわりゆるやかなパーマをかけた可愛らしい女の子で、なぜか私に対して敵意のこもった視線をむけている。後ろでは別の女の子が「やめなよ」と小声でいさめているけど耳に入ってない模様。
直接聞いてきたのはこの子で8人目。にやにやされたり、ひそひそ言われたのは数え切れない。私じゃなくて課長に聞きに行く猛者はいないのだろうか・・・うーん、いないか。私が彼女の立場でも、課長に聞くなんて恐ろしくてできない。
「藤枝さん。何やってるんですか、こんなとこで」
ラッキーなことに高橋くんが通りかかった。
「高橋くん、なんでもないわよ。」
「そうですか?」
高橋くんが女の子たちのほうを見ると、なぜか焦った様子。
「わ、私たちはたまたま通りかかっただけよ。ねえ」
「そ、そうよ」
そう言うと、そそくさと立ち去った。私が歩き出すと、高橋くんも横に並ぶ。
「藤枝さん、なんか絡まれていませんでした?」
「ちょっと話しかけられただけよ。」
「本当ですか?でも彼女たち・・・」
そこで言葉を切ると、ちらりと私を見る。
「宮本課長のファンなのかな?」
「はい。あの中の1人は同期で、合コンに課長を呼べと頼まれたことあります。断りましたけど」
「高橋くんって、いくつだっけ」
「俺ですか?24ですけど」
「そっか。」
24歳か・・・課長ってすごいわー、どんだけ人気の幅が広いのかしら。
3課に高橋くんと一緒に戻ると、課長と坂本さんがなにやらサンプルを持って話していた。
いったい何を話してるのかな。席に戻ると二人の話が聞こえてくる。こういうとき課長の席に近いのっていいんだか悪いんだか。
「・・・・誰かいないのか」
「相手に届けるだけですから大丈夫ですよ。ま、行かせたくないのは分かりますけどね」
「誰もそんなことは言ってない」
「じゃあいいですね。藤枝さん」
「は、はい」
いきなり名前を呼ばれて、私は課長の席へ行った。
「藤枝さん、今仕事のほうはどんな感じですか?」
「課長に頼まれた分は、もうすぐ送信できます。それ以外では急ぎのものは抱えていません」
「じゃあ、ちょっと届けてほしいものがあるのですが大丈夫ですか?」
「いいですよ。どちらまで行けばいいんでしょうか」
「ありがとう。それでは野村くんにこのカタログとサンプルを渡してくれませんか。彼には連絡しておきますから」
「わかりました。課長に送信してからでも大丈夫でしょうか」
「ええ。大丈夫ですよ。申しわけありませんがお願いしますね」
私たちのやりとりを聞いていた課長は、なぜか不服そうだ。もっとも、仕事のときの課長の表情はそんなに変わらないので、課長が不服そうだとわかるのはたぶん坂本さんと私だけ。
疑問に思いつつも、私は課長に資料を送信し、3課を出た。
会社を出ると、メールの着信音がなった。課長からだ・・・なんだろう。
『寄り道しないで、なるべく早く帰ってくるように』
・・・・私は小学生か!その内容に私は小さな声でつっこんでしまった。
読了ありがとうございました。
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高橋くんをちょっとだけかっこよく書いてみました。
その代わり、課長がじゃっかん情けなく・・・あっ、まずい。




