おまけ
野村サイドです。
当時、素直じゃなかった俺は“好きだ”と言えなかったばかりか、本人が「骨董」と呼ばれるのをよく思っていなかったことを知っていたけど、あえて呼んでいた恋愛レベルが小学生の高校生だった。
だけど、そのせいで俺の “ファン”と称する女子たちに絡まれたり、好きなヤツに俺と付き合ってると誤解されたと彼女が怒ってきたとき、心底反省した。だから思い切って告白しようとしたけど周囲は受験一色。俺は関西の大学、彼女は東京の大学と進路が別れたのもあって同じクラスにいても話をすることはなくなった。
ずっと好きだったわけじゃなくて、俺も彼女がすぐに出来たしその後も何人かとつきあった。だけど、何となく忘れられない存在。次に再会するのは同窓会かなあ・・・と思っていたところに、本社への辞令。
そして取引先での再会・・・・なんだかキレイになった骨董がいた。友達から始められるかなあと思っていたけど・・・・・。
骨董が宮本課長に手をひっぱられて帰っていくのを、俺は呆然と眺めていた
それは、誰もが同じだったらしく騒がしかった雰囲気が一変した。
「今の・・・・あの、坂本さん。あの2人って付き合ってるんですか」
俺は隣にいた坂本さんに尋ねる。
「やれやれ・・・ここでばらしますか。宮本さんは」
「え?坂本さん知っていたんですか?」
「私以外の3課の人間も全員知ってますよ。なあ、高橋」
苦笑いした坂本さんは、近くにいた3課の高橋くんに声をかけた。
「はい。俺も最初見かけたときはびっくりしたんですけどね。でも、課長と藤枝さんならお似合いですし」
高橋くんがそういうと、坂本さんもうなずく。
すると、それに釣られたのか他の人間も「知らなかったけど、まあいいんじゃないの」という温かい空気になってくる。ただ、俺にしつこく合コンを持ちかけてきた山下さんは別のようだ。
「まったく、なんで藤枝さんばっかり・・・」
「山下さん。何か言った?」
本当は聞こえていたけど、あえて聞いてみる。
「え?う、ううん。何でもないの。お、驚いたわね。宮本課長と藤枝さんが付き合ってるなんて。よく隠していたものね。ねえ、それより合コンいつしましょうか」
うーん。確かに山下さんは美人だしスタイルもいいし・・・俺が大学生の頃だったら喜んでお持ち帰りしちゃうタイプだけど、これから付き合うんだったらやっぱり結婚も視野に入れたい俺としては、彼女は何か違うんだよなあ・・・・。
といって、ここではっきり断ると骨董のほうに災難がふりかかりそうだし。ここは頑張って遠まわしにお断りするしかないよなあ・・・・。
「あのさ、山下さん。俺まだこっちに来たばかりで社内にそんなに知り合いがいないんだ。それに毎日忙しくて、ちょっと合コンまでは手が回らないんだよね」
「そう・・・・仕事大変なのね。じゃあ、せめてメルアド交換しない?」
「え」
山下さんって・・・遠まわしが通じないんだろうか。どうする俺。
「野村くん。」
そこに坂本さんが声をかけてきた。
「はい。」
「私は二次会行かないで帰りますが、君はどうしますか?」
坂本さんが行かない二次会に俺が行くわけがない。坂本さんは“救いの神”!!
「あ、俺も帰ります。山下さん、おつかれさまでした」
「ちょっと、野村くん??」
俺はあっけにとられている山下さんに一礼して、坂本さんと一緒に駅に向かうことにした。
「先ほどはありがとうございました、坂本さん」
「大げさですね。どうやら困っていたみたいだから、ちょっと助け舟を出しただけです。私は自分の仕事をきちんとしない人間には優しくないんですよ」
そう言うと、坂本さんはニヤリと笑ったのだった。
読了ありがとうございました。
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山下さんのコンカツが成功するかどうかはわかりませんが
5日間お付き合いいただいてありがとうございました。
次回更新まで、また間が空くかと思いますが
気長にお待ちいただけると嬉しいです。




