3.
話題の人。の巻
野村は、爽やか体育会系の外見と人当たりの良さで、女性社員注目の人になった。
そして、私と同級生だったことが知られるようになると皆一様に「藤枝さん、今日は野村さん来る予定はないの?」と聞いてくる。
野村の来社予定なら、私より坂本さんに聞いたほうが早いと思うんだけどな。
だけど、私がそう言うと野村目当ての女の子は皆顔をひきつらせて「無理。藤枝さんじゃないと聞けないわ」と尻込みするのだ。
確かに坂本さんの「逸話」は社内で知れ渡ってるから気持ちは分かる。
響子先輩や真生と久しぶりにランチを一緒に食べていると、やっぱり野村の話題になった。
「新しく出入するようになった営業の男の子、藤枝の同級生なんだって?」
「響子先輩・・・その質問今週入って耳にタコです」
「あらまあ。みんな目ざといわね~」
「同級生だからって親しいとは限らないのに・・・・」
そういうと、私は課長に話したことを2人にも話した。
「董子が転じて“骨董”か。うまいわね~」けらけらと真生が笑う。響子先輩も隣で笑いをこらえている。
「真生、そこ感心しなくていいから」
「その藤枝の様子じゃ、宮本くんは何の心配もしてないでしょうね」
「そうですね。」
なんか、2人の反応が課長と似ているのは気のせいだろうか。
昼食を終えて、コンビニに寄るという響子先輩と別れた私たちは会社に戻った。そこで真生もATMに寄るというので、私は1人でエレベーターを待っていると、誰かが隣に立った。横を見ると野村で、向こうも私に気がつく。
「あれ、骨董じゃん。」
「野村・・・」
「お昼か?」
エレベーターが開いて乗り込む。他に誰も来ずドアが閉まる。
「今戻ってきたところ。3課に用事?」
「そう。坂本さんと打合せなんだ」
「そう。」私は黙って、3課のあるフロアのボタンを押した。
「なあ、骨董」
「そのあだ名で呼ぶなって高校生のときに言ったと思うんだけど」
「そういえば怒られたよな。」
何を思い出したのか、くくくと笑う。
「何笑ってんのよ。野村目当ての女の子に絡まれたり、先輩に誤解されたりで嫌だったんだから」
「それは悪かったって。でも今言うか」
「この間、あんたを見て思い出しちゃったのよ」
私がそう言うと、野村は「なるほど」と言い、なんだか嬉しそうだ。そうだ、山下さんからコイツが来たら内線で教えろって言われたんだっけ。
「そういえば、野村ってもてるのね」
「は?何をいきなり。否定しないけど」
「そこは否定しなさいよ。野村のこと、あちこちで聞かれるのよ。よかったわね。」
「ふーん。そういえば骨董って独身?」
「独身だけど。それがどうしたのよ?」
「いや?俺も独身だし、彼女とは別れちゃったし」
「へー。それは残念だったわね」
「・・・なんか感情こもってねえな」
「こめる必要がないでしょうが」
そんなやりとりをしているうちに、エレベーターは3課のある階に到着した。野村が「じゃあな」と言って3課に向かって歩いていく。
そういえば、高校生の頃もこうやって話したことあったっけ・・・なぜか思い出してしまった。
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