2.
余裕の課長。の巻
「野村くんと同級生だとはね。驚いただろ」
「そりゃもう。高校卒業していらい全然関わりなかったし」
その夜、私と課長は松浦さんの店で食事をしていた。
「3年間同じクラスだったって言ってたけど、もしかして彼氏だった?」
「和哉さん、冗談やめてよ。だいたい、あの男は私に“骨董”なんてあだ名を勝手につけて呼んでたんだから」
「骨董って・・・そりゃまた渋いあだ名だね」
「董子の“とう”の字が、骨董品の“とう”だからって。でも私を骨董と呼んだのは野村だけで私も友達もドン引きだったんだから。」
まったく、やつが「骨董」と呼び、やたらと話しかけてくるもんだから私はやつと付き合ってると思われて甚だ迷惑したんだ。こっちはその気がないのにやつのことを好きな女の子たちに絡まれたり、好きな男の子には「野村とつきあってるんだって?」なんて言われたり。
ああ、思い出してくると腹が立つ。
「董子、どうしたの」
「あ、ごめんなさい。何か、いろいろ思い出してきたら腹が立ってきちゃったの」
そう言うと、私は課長に高校時代にあった出来事を話し始めた。私としてはどちらかというと嫌な思い出なんだけど、課長はなぜか笑いをこらえているようにみえる。
「和哉さん?」
「あのさ董子。たぶん、野村くんは当時違うことを董子に言いたかったんじゃないのかな」
「は?」
「・・・俺、高校時代の野村くんに同情しちゃいそうだよ。」
「はあ?」
私が首をかしげると、課長は「でも俺にとっては董子が気づかないでいてくれてよかったかも。」とまたも意味不明なことを言って私の手を握った。
「おーおー、仲がよろしくていいねえ」
松浦さんが注文した料理を持って、ニヤニヤして立っていた。
「空気読めよ、松浦」
「出来立てを食べてもらうのが当店のモットーなんでね。はい董子ちゃん、スモークサーモンとマッシュポテトのオーブン焼き。皿が熱いから気をつけてね。」
「はい、ありがとうございます」
「ミヤの分のチキンソテーだよ。それからカリフラワーとブロッコリーのサラダ。お邪魔しました。再開していいぞ」
そういうと、松浦さんはパチンとウインクして立ち去った。
食事を終えて、松浦さんの店を出る。
「・・・私、ウインクする人初めて見たかも」
「あれがアイツには普通なんだよ。董子もいい加減慣れたほうがいい」
確かに松浦さんがやってもイヤミにならないわ。きゃー、素敵って思う人はたくさんいても、ドン引きする人はあんまりいないかも。
「今、松浦ならありかもって思っただろ」
「はいい?」
「董子はすぐに顔に出るから分かりやすくていいね」
私は思わず顔を押さえる。すると課長がちょっと笑って私の耳元に口を寄せた。
「大丈夫、俺にしかわからないよ」
「そ、外でやらないで・・・・恥ずかしいです」
顔がほてってくるのが分かる。課長は私の顔がちょっと赤らんできてるのを楽しそうに見ている。
それが分かってるから、私はますます視線をどこに向けたらいいのか分からないのであった。
読了ありがとうございました。
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課長は野村くんに対しては余裕です。
むしろ同情しているフシが・・・。
でも、董子に当時の野村くんの心境を教えてあげるほど
親切じゃありません。




