3.
火のないところで煙がたつ。の巻
私と課長が付き合ってる?・・・2人とも、なにを言っているのだろうか。
「繁華街を二人で親しげに歩いてたって聞いたのよ。私も響子先輩も、もうびっくり。」
どうして昨年の休出が今さら噂になるんだ。出て来い目撃者!!
「それってクリスマス前のことだよ。私は課長に頼まれて休出したの。それでお昼をご馳走になって、確かに駅まで一緒に帰ったけど・・・。勘弁してよ~」
私は思わず頭を抱えてしまう。
「え。それだけ?しかも昨年の話・・・」響子先輩が拍子抜けしている。
「そうですよ。もー、なんでよりによって課長と噂にならなきゃいけないの~。」
「響子先輩・・・よくよく考えてみれば、董子は仕事のときの宮本課長を知ってるんですよね・・・あれに恋愛感情って持てますか?」
私の様子を見た真生が響子先輩に話しかける。
「それもそうか・・・宮本くんのファンは営業企画部以外の女子ばっかりだし。」
響子先輩も納得している。
「もう誰だよお。一緒に歩いていたくらいで、どうしてつきあってるなんて飛躍するかな・・・ほんとにもう・・・・どんだけヒマで気長なんだ」
「でもさ、藤枝。」
「なんですか?響子先輩」
「宮本くんって仕事中はアレだけど性格悪くないし、イケメンの独身よ?それに、よっぽどの妨害やしくじりがない限り、将来出世間違いなしの成長株だし。」
「仕事だけじゃなく、プライベートでもダメだしされろと?仕事で関わってるだけでいいです」
「プライベートでは溺愛系かもよ?」
「真生まで、何言ってんのよ。そんなロマンス小説みたいな話があると思う?」
「でも・・・そんな宮本くん、見てみたいわよねえ」響子先輩までもがなぜか楽しそう。
「二人とも・・・どうしてそんなに妄想がたくましくなれんのよ・・・」
「「だって、面白いから」」
それは私以外の誰かで妄想してください・・・楽しそうな二人を見て私は思わず深いため息をついた。
仕事は予想どおり残業となった。
いつの間にか、3課は私と課長だけになっている。いつもなら「終わらないっすよ~」と言いながら残業してる高橋くんですら、先ほど「お先に失礼します」と帰って行った。
まあ・・・この資料を保存してしまえば終わりだし。私は上書き保存をクリックして、データを保存した。
時計を見ると、7時・・・・今から帰ればスーパーに余裕で行ける。キャベツと・・・それから青菜がほしいな。あとは魚の見切り品が残ってればラッキーかも。
別に生活が苦しいわけじゃないけど、もう少し広い部屋に引っ越したいと思っていて最近私は節約がモットーだ。まあ実家に戻れば今よりも貯金できるけど、乗換えがあるうえに1時間かかる・・・・残業多いことを考えるとちょっとなあ・・・やっぱり通勤時間は乗り換えなしの1時間以内にしておきたい。
画面を見ながら考え込んでいると、頭の上から「藤枝」と課長の声がした。
ひょいっと上を向くと、私の机のそばに課長が立ってる。
「は、はい。」
「もう仕事は終わるのかな」
画面を見ると、とっくに保存は終了している。
「はい。データの保存は終わりましたから・・・」私はそう言うとPCの電源を落とした。
課長は私が電源を落としたのを確認すると、席に戻ってコートとビジネスバッグを取り出した。
そういえば何度か私と課長だけが残業になったときがあるけど、課長は絶対先に帰らない。高橋くんによると、男性だけが残業している場合は先に帰ることもあるそうだ。女性だからって心配してくれてるのかも・・・こういうところはちょっとうれしいかもしれない。
「藤枝。帰る準備にかかる時間は?」
「へっ?そうですね、10分くらいでしょうか」
「そうか。じゃあ、3課の入り口の前で待ってるから」
「は?いやいや課長、先に帰っていただいてかまいませんから。」
「同じ沿線なんだから、一緒に帰ってもおかしくないじゃないか。ついでに夕飯につきあえ。藤枝も腹減ってるだろ?」また課長が決め付けたような口調で言う。
「そりゃすいてますけど、今日は買い物して帰ろうと思ってるんです」
「明日は一斉定時退社だよな。明日のほうがゆっくり買い物できるんじゃないのか。おごるからつきあえ。松浦の店でどうだ?」
「う・・・」頭の中に、この間のグラタンが浮かぶ。コクのあるホワイトソースに焼き色のついたチーズ、きつね色のチキンと程よい歯ごたえのマカロニ・・・・私の中で夕食(課長のおごり)が職場の噂話に勝った。
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