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天使の前髪  作者: 春隣 豆吉
再会のち発覚
39/73

1.

まさかの再会。の巻

 取引先の担当が替わったということで、担当の坂本さんと課長が顔合わせを兼ねた打合せをすることになった。

「今度の新しい担当者は関西支店にいたらしいんだけど、社長に指名されて戻った人らしいよ。」

「へー、そうなんですか。仕事がすごくできるか、できの悪さで社長の監視下に置かれたのかどっちかですね」

「藤枝さん、言うねー。だけど監視下に置かれたような人間が担当になるとしたら、よっぽどこっちが舐められてるってことか。」

 私に書類作成を頼みに来た坂本さんが笑う。


 坂本さんは課長が自分のいた課から唯一ひっぱってきた人だ。オニミヤと密かに言われる課長とは違い、いつも穏やかな人である。

ただし、課長がひっぱってくるだけあって“穏やか”なだけじゃない人なのは当たり前で・・・以前いた部署で、合コンがあるからと重大な入力ミスをそのまま放置して帰った事務の女性に“あなたが仕事よりも合コンを優先させるのは勝手ですが、もうこの部署であなたに仕事を頼む人間はいませんよ。頑張ってくださいね?”と、にこやかに言い、居づらくなったその社員は会社を辞めていったという逸話があるのだ。

 私の知ってる坂本さんは、家族(奥様と3歳のお嬢さん)をこよなく愛するお父さんであり、後輩には仕事を優しく根気強く教えてくれる人だ。

  課長は“俺たちのことを坂本には言っておきたい”って言うんだけど、私がどうにも恥ずかしくて言わないでほしいと頼んでいる。

「坂本。お客様がいらっしゃったようだ。藤枝、打合せは第5会議室になる。終わったら内線するので片付けを頼めるかな」

 内線を切った課長から声がかかり、坂本さんは「お。来ましたか。じゃあ行って来るか」と言い、自分の席に戻っていった。

 使った会議室の後片付けは、その部署がやるのが決まり。3課は皆忙しくて、だいたい片づけは私の仕事の一つになっていた。そして片づけを終えて戻ると、私の机の上には飲み物かお菓子が置かれている。


 課長から内線があり、私は席を立って第5会議室に向かった。

 机もイスも特に動かしてないようで、片付けるのは紙コップだけらしい。3課は皆きれいに使ってくれるから助かるなあ・・・と紙コップを回収しようとしたとき、イスのうえにある書類に気がついた。

「なんだろう?」

 手に取ると、営業計画の資料だ。課長か坂本さんの忘れ物かしら・・・とりあえず机の上に置いたとき、会議室のドアが開いた。

「すみません。こちらに忘れ物・・・・・」

 入ってきたのは、私と同じ歳くらいの男の人だ。

「もしかして、こちらでしょうか」

 私が書類を手渡すと、男の人はなぜか私の顔をまじまじと見た。

「あの、何か?」

「やっぱり骨董だ」

  私が知ってる限り、人のことを「骨董」と呼ぶのはただ1人。高校の同級生だった野村だけだ。

「まさか野球部の野村?」

クラスでも賑やかな一人で、用もないのに人の周りをちょろちょろして「俺の応援しろよ!骨董!!」などとほざいていたバカ。

  こいつが・・・・社長に指名されて戻った新しい担当。


「野村さん、忘れ物ありましたか?・・・あ、藤枝。片づけ中に悪いな」

 課長が会議室に入ってきて、私と野村さんが顔を合わせているのを見てちょっと驚く。

「宮本課長。すいません、書類ありました。実は、こちらの骨・・・藤枝さんが高校の同級生だと分かって驚いてしまいまして」

「高校の同級生?藤枝、本当か?」

「はい。」

「ええ。3年間同じクラスでした。」

 野村がにこやかに付け加えた。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


遅くなりまして申し訳ありません。

なんとか「再会のち発覚」の章をUPすることができました。

5日間お付き合いいただけると嬉しいです。


今回から登場の坂本さんは

私の中ではイメージとして「鬼○の佐嶋与力」です。

で、高橋くんは忠吾(汗)。

いいのさ・・・分かってくれる人たけが”そうなんだ~”って思ってくれれば。

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