5.
酔っ払いの理由。の巻
課長視点です。4.消えていく不安の前の話
俺の最寄り駅で降りた董子は、俺を見て「ごめんなさい!」と頭を下げた。
「董子?」
「すみません、響子先輩に携帯持ってかれました」
「あー・・・・まあ、酒の入った秋山さんに逆らうのは大変だよな」
「あの、響子先輩は何を言ったんですか?すごく満足した顔をしてたのですが」
それにしても、さっきから董子が敬語に戻っているのはどういうわけだ。もしかして、一見普通だけど、酔ってるのか?
「董子、行くよ?」
「はい」
いつものように、俺は彼女と手をつないだ。
部屋に入れて彼女をソファに座らせると、ペットボトルの水を渡す。
「はい、水」
「ありがとうございます~」
董子はそういうと水を飲み、ぷはーっと満足げに息をはいた。
「董子、どれくらい飲んだの」
「えっとですね・・・まずは梅酒水割り2杯、巨峰サワーに・・・あ、イチゴの焼酎!あれ美味しかったなあ・・・・もううっとり。」
そういう董子の目はとろんとした。かわいいので思わず顔に手をやってしまう。
「それは飲みすぎじゃないのか。どうしてそんなに」
「和哉さんの手、つめたくてきもちいーです。ふふふ。・・・・やっぱり負けちゃだめなのかな」
「負けるって、だれに」
「えー、川辺さん」
「は?川辺?」
どうして、ここで川辺の名前が出るんだ。あれから俺は川辺に会ってないけど、董子は会ったってことか?
「董子。川辺と会ったのか」
「はーい会いましたよ。和哉さんって罪な男で鈍い男だよね」
鈍い董子に言われる筋合いはないが、いったいどういうことだ。しかも罪な男呼ばわりまで。
「董子、どういうことかな?」
「いわないもーん。知りたかったら直接川辺さんに聞けばいいんだもーん。オニミヤなんかに絶対いわないもん」
オニミヤって・・・部下がそう呼ばれてることは知ってたけど董子から言われると、ちょっとへこむ。 いったい、なにがあったんだろうか。
董子のほうを見ると、今度は「私だって知りたいもん・・・」とぶつぶつ独り言を言いながら、ペットボトルの水をちびちび飲んでいたが、急にすっくと立ち上がった。
「と、董子?」
「・・・化粧落とさなきゃ。」
そういうと、酔っているはずなのにしっかりした足取りでさっさと洗面所に向かい、しばらくするとさっぱりした表情で戻ってきた。
「さっぱりしたか?じゃあ、俺に川辺と何を話したのか教えてくれないか」
「だから教えませんよ~だ。直接川辺さんにきいてくらさい」
それだけいうと、董子は「ねます」と言って寝室に歩いていって、そのまま戻ってこなかった。
いちおう様子を見に行くと、ベッドのはじっこで寝ている。しかも服を脱いで。
「・・・・俺は理性を試されてるのかな。」
でもキスをするくらいは許してくれよな・・・秋山さんからの電話がよみがえってきた。
“宮本くん、あなたの女友達は董子に何してくれたのかしらあ?ちょっと聞いてみてくれないかなあ”
なんだか俺の知らないことがあったのは間違いない。
川辺に聞いてみなくちゃいけないな。
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課長をへこませてみました。




