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珍客万来の土曜日-2
部屋に2人だけになると、とたんに会話のネタがなくなる。
「信史、メシは食べたか?」
「パパとたべたよ」
「そうか・・・俺はメシがまだなんだ。スープくらい飲むか」
「うん、のむー」
俺はパンを焼き、レトルトのミネストローネを入れたマグカップに熱湯を注いだ。
「おじちゃん、パンにバターぬってあげるー」
「お。ありがとう」
トーストした食パンにバターナイフを使って楽しそうに塗り始めた。
「「いただきます」」
「信史。今日は天気がいいから動物園とか行くか?ちょっと歩くけど公園もあるぞ。このまま家で過ごしてもいいし」
「んとー、んとー」
「・・・まあ、ゆっくり考えてくれよ。」
小さい頭で懸命に考えてる様子をみてるのは結構楽しい。俺は、子供の前で行儀悪いな~と思いつつ、新聞を開いて食べながら読み始めた。
悩みに悩んだ信史が決めた行き先は動物園になった。うまい具合に座ることができ、動物の話になった。
「ぼくねー、ぞうがいちばんすきー。おじちゃんは?」
「そうだなあ、猿かな」
「どうして?」
「人間関係の縮図を見てるみたいでな~」
「にんげんかんけいのしゅくず?」
「んー、あと10年もすれば分かると思うぞ」
どうやら、俺の回答は彼には難しかったようで「あとでパパにきくー」と言われてしまう。どうやら俺の言動は兄に筒抜けになってしまうようなので、ちょっと気をつけないとまずいか。
動物園に行ったら、お昼は園内で食べて家に戻ってちょっと休憩してから、夕食は松浦の店だな。俺は自分の頭のなかでスケジュールをたてる。
動物園は土曜日で天気がいいということで、家族連れでごった返していた。まずは象を見て、次はサル山。さらにはキリンやライオンに、子供動物園でヤギや羊などにもさわってみる。
楽しそうな様子に連れてきて正解だったと思うが、それでもときおり親子連れを見て寂しそうな様子を見せる。
「信史、疲れたか?」
「ううん・・・」
「ゾウが見れてよかったな」
「うん・・・おじちゃん、ぼくゾウみれたから、もういいや」
「そうか。お昼を食べて家に帰るか」
「・・・うん」
おとなしく家で過ごせばよかったかな・・・俺は信史に悪いことしたのかも。
家に戻って休憩をとったあと、松浦の店に夕食を食べに行く。
「ミヤ、その男の子はお前の子供か」
「甥っ子だよ。兄さんの息子。」
「へー。こんにちは。お名前おしえてくれるかな?」
松浦は信史の目線まで身をかがめた。
知らない人に名前を教えてはいけないと言われているのだろう、俺をチラリと見る。
「このおじちゃんは、俺の友達でパパもよく知ってる人だから大丈夫だよ」そう言うと、信史はうなずいた。
おじちゃんと言われた松浦は面食らったようだが、すぐに立ち直った。さすがだな。
「みやもとのぶふみ、4さいです」
「のぶふみくんか。よろしくな。うちのお子様ランチは美味しいぞ?」
「ほんと?」
「ほんとだよ。ほっぺが落ちちゃうくらいだぜ」
「うそだあ」
「和哉おじちゃんなんか、ほっぺた落としていつも拾って帰るんだぞ」
「ほんと?」
そういうと、信史は俺の顔を真剣に見ている。
「松浦・・・・おまえ、どういうオチをつけるつもりだ」
「いや~、そこは“和哉おじちゃん”に任せるよ。」
小声でやりとりしたあと、メニューを俺に渡して席から離れた。
「おじちゃんのほっぺ、ほんとにおちるの?」
「・・・・今日は落ちない日なんだ。残念だな」
そうなんだ~、とつまらなそうな信史。松浦・・・覚えてろよ。
読了ありがとうございました。
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ちなみに私は、ありきたりですが動物園といえば
パンダです。
小さい頃は、よく見に行っておりました。
こどもパンダの可愛らしさはまさに「動くぬいぐるみ」!!




