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珍客万来の土曜日-1
課長視点です。
サイドボードに置いてある携帯の着信音で目が覚めた。
今日は隣に董子がいない。時計を見ると朝9時で、携帯の着信は兄からだった。
「・・・もしもし?」
「悪い。寝てたか」
「あ~・・・まあね・・・でもそろそろ起きようと思ってたから。どうしたの」
「もし今日の予定がないんだったら、10時頃そっちに行ってもいいか。頼み事があるんだ。」
「ああ、いいよ。」
頼み事の予想がつかないけど、まあ特に用事もないからいいかと思い承諾する。
「ありがとう、じゃあ10時に」
「ああ」
確か義姉さんが二人目を妊娠中で、ちょっと体調を崩したからと入院している。退院するまで兄が甥っ子と2人暮らしで、普段はシッターさんに来てもらってるって言ってたっけ。
とりあえず兄が来る前に、着替えて部屋を片付けるか・・・。
10時近くになって、ビジネスバッグを肩にかけ、小さめのキャリーバッグを持った兄と車の柄がついてるリュックを背負った甥っ子の信史がやってきた。
信史は兄夫婦のしつけがしっかり行き届いているのか、兄の隣でおとなしくコンビニで買ってきたジュースを飲んでいる。
「俺の部屋に来るなんて珍しいな。いったいどうしたんだ?それにその荷物」
「すまん和哉。のっぴきならないことになってしまったんだ。信史を今日の夜8時まで預かってくれ!!」
「はっ??おれ??」
「今日、急遽出勤になってしまってな。頼めば来てくれるだろうけど、双方の実家とも遠いだろ?そこで、実家よりは遠くない場所に住んでる和哉が頭に浮かんだ。」
「俺はかまわないけど、うちには子供向けのおもちゃなんてないぞ?」
「そこは大丈夫だ。おもちゃと絵本に念のための着替えもここにある。」
兄は俺に頼むにあたっていろいろ持ってきてくれたらしく、バッグをたたいた。
「食物アレルギーとかは大丈夫なのか?」
「アレルギーはない。それからこれは信史のかかりつけの医者の電話番号。風邪ひとつひいてないから大丈夫だろうけど。」
「兄さん、至れり尽くせりだな」
「独身のお前に頼むんだ。準備はしておくものだろう?それにしても・・・」
兄が食器棚のほうへぶらぶら歩き出す。
「なんだよ」
「女性用の茶碗と箸か・・・うちの母親の物なわけないし。なるほど彼女できたのか。しかも部屋に食器を置く関係ね。もちろん洗面所には歯ブラシか?」
「・・・・兄さん。」
「今日は急いでるから、これ以上は聞けねえな~。残念残念。こんど会わせてくれよ」
「・・・ああ。」
「さて、俺はそろそろ行かないと。」
そういうと、兄は身体をかがめて信史に視線を合わせた。
「信史。家でも言ったけど、パパは急ぎの仕事が入ってしまった。迎えに来るまで和哉おじちゃんの言うことを聞いて待ってられるか?」
「うん、ぼく4さいだもん。」
「もうすぐお兄ちゃんだもんな。パパとの約束守れるか?」
そのあとの2人の会話をきいて、俺はそっとため息をつく。
兄さん・・・なに自分の好きなアニメを息子に見せて洗脳してんだよ。
とはいえ、2人の会話はとてもほほえましいもので、俺は邪魔をしないようにしていた。
読了ありがとうございました。
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なんとか更新できました。
この章は、課長視点がメインになります。




