表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天使の前髪  作者: 春隣 豆吉
お菓子と誘惑は甘いもの
23/73

3.

美味しくいただく。の巻

R-15です。

少し長め。

 課長と駅で待ち合わせをし、買い物と食事を済ませる。そのあとに向かったのは、駅から歩いて10分くらいの場所にある、3階建ての薄茶色のマンションだった。

「オートロックだから、あとで暗証番号を教えるね」

「そ、そんな大事なことを簡単に他人に教えちゃだめです」

「そう?・・・・これからじっくり教えればいいか」

「あ、あの。今何か言いませんでした?」

「ん?何でもないよ。さて、行こうか」

 課長はにっこりと私を見て笑い、手をぎゅっとつなぎなおした。

 まるで、もう逃がさないって言われてるみたいで、私はちょっとだけ背筋がぞくっとした。


 課長が番号を入れて鍵の開く音がする。

「さあ、どうぞ」

「お、お邪魔します」

 課長の部屋はマンションの3階で、南向きの角部屋だ。今日は天気がいいから外の光が部屋を明るく照らしている。

 玄関をあがると、キッチンスペースのそばには、小さめのダイニングテーブルとイスが二つ。その奥には、茶色のロースタイルのソファに木のテーブル、テレビ。テーブルの上にはノートパソコンがある。

 課長にすすめられて、私はソファに座った。すこし沈み込む感覚があって座り心地のいいソファだ。課長が持ってきてくれたティラミスは軽く4人分はありそうな大きさだった。

 私に紅茶を渡すと、課長は一緒に持ってきたスプーンで小皿に取り分けながら部屋の説明をしてくれる。

「右の部屋が寝室。左の部屋は、ほとんど物置。」

「宮本さんの部屋はきれいですよね~。私の部屋はもっと雑然としてて・・・見習わなくちゃ」

「董子が来るから、ちょっと頑張ってみました。普段は見られたもんじゃないよ」

 課長のちょっとおどけた口調に、私は緊張がほぐれてくる。

「はい、食べてみてくれる?」

「いただきます」マスカルポーネの濃厚さにコーヒーのしみこんだスポンジ生地が美味しい。「そういえば、董子はティライスの意味って知ってる?」

「意味ですか?さあ・・・」イタリアのお菓子だってことは知ってるけど、意味までは知らないや。

「俺もパティシェの先生に聞いて初めて知ったんだけどさ、“私をひっぱりあげて”とか“私を元気にして”って意味らしいよ。」

「面白いですね」

 ティラミスを食べてる私の隣で、課長はコーヒーを飲んでる。外は気持ちのいい天気で、部屋の中は暖かい。なんかすごくくつろいでしまう。

「・・・ごちそうさまでした。とても美味しかったです。」

「よかった。」課長はそういうと、私をぎゅっと抱きしめた。

「み、宮本さんっ」

「・・・悪い。ちょっと余裕がなくなってきた」

 そういうと、課長は私に深いキスをしてきた。まったく・・・課長はキスが上手すぎる。

 私の力が抜けてきたのが分かったのか、課長はいったんキスをやめて「董子、寝室にいこ?」と耳元でささやいてきた。

 私は、黙ってうなずいた。


 課長の寝室は、セミダブルサイズと思われるベッドとクローゼットだけのシンプルなものだった。

 私はゆっくりとベッドに倒されて、課長を見上げる形になっている。

「み、宮本さん・・・」

「和哉」

「か・・和哉さん。あの、先にお風呂・・・」

「あとで一緒に入ろうね。だから・・・」そういうと、課長は私にキスをしながら、服のうえに指をすべらせていく。

 唇だけじゃなくて、耳や首筋・・・鎖骨。服で隠れて見えない場所には跡をつけるみたいに。

「董子に俺のしるしをつけたい」

 課長はそういうと、私の全身をくまなく愛してくれる。私がぐったりしていると、素肌の課長にぎゅっと抱きしめられる。

「・・・私、その、すごく久しぶりで」

 モトカレと別れてからは、ぜんぜんそういうことになったことはない・・・もう3年近くだ。

「偶然だな。俺も久しぶりだよ。だから、あんまりうまくないかもね」

「・・・うそ・・・んんっ」

 ゆっくりと私の様子を見るように始まって、そのまま激しく溶かされてしまう。私の声とベッドのきしむ音、課長の余裕のない表情と、繰り返される甘い言葉。何度も高みにのぼって、最後は目の前が真っ白になって、お互い抱き合いながら一緒におちていく。


 そして、課長はうそつきだ。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


細かい描写は皆様の想像にお任せいたします。

ちなみに私がティラミスの意味を知ったのは

「○レーテルのかまど」からです。あの番組、大好きなんです。


副題の「美味しくいただく」

董子と課長の意味するところは、大いに違いますね、きっと。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ