3.
同期会と課長。の巻
「えーっと、今日はこんなに集まると思ってなかったんで、ちょっと驚きました。どんだけヒマなんだか・・・ま、いいや。かんぱーい」
山崎くんが飲み物の入ったグラスを手に持ち、乾杯の音頭をとって同期会と言う名の飲み会が始まった。
それにしても、秘書課にいるもう一人の同期、山下さんがいるのには驚いた。彼女は、山崎くんの隣に陣取って離れない。
「それにしても、山下さんが来るなんて珍しいね」私は隣の真生にこそこそと話しかけた。
山下さんは私や真生をなぜか敵視していて、私たちがメンバーになっている飲み会には顔を出さないからだ。
「そりゃ来るでしょう。だって彼女、山崎くん狙いだもの」
「ええっ。うそっ」
確か、彼女・・・・宮本課長狙いじゃなかった??私が3課に異動になることが決まったあと、「どうして私がダメで藤枝さんが異動するのか分からないわ」ってわざわざ総務に言いにきたんだから。
「彼女はさー、将来有望そうな男子には粉かけまくってるからね。秘書課でも先輩たちから“山下は婚活に来てるんだか、仕事に来てるんだかわからない”って影でこっそり言われてるのよね~」
あまり人をけなさない真生が珍しく苦い薬を飲むような表情で言う。なんか嫌な目にあったんだろうか。
「まあ、山下さんって美人だしさ。山崎くんも悪い気しないんじゃない?」
「だとしたら、私は山崎くんを過大評価してたのかもね。私も人を見る目が曇ったってことかしら」
真生がにっこりと笑いながら、さらりときついことを言う。
「・・・真生、なんか山下さんにされたわけ?」
「ん?たいしたことじゃないわ。彼女の仕事のミスを私がフォローするはめになったとか、先輩たちが彼女の仕事を私にふってきて残業が続いてるとか。それくらいね」
“それくらいね”と言う真生の顔が非常に怖いんですけど。山下さん、就業時間中は仕事しようよ・・・。
「いろいろあったんだね。」
「ま、仕事のスキルもあがるし、信頼度もアップするから悪いことばかりじゃないし。董子も課長とラブラブだし」
私は思わず飲んでるウーロン茶を吹き出しそうになる。
「とってつけたように何言うのよ」
「課長のネクタイ、よく似合ってたわね。秘書課でも“宮本課長に彼女がいるなんて”って先輩たちががっかりしてたわよ。」
「そ、そう?真生、ほら美味しそうだよ。たべよ?」
私は無理やり話を終わらせて、食べることに専念した。真生もふふっと笑って「そうね、美味しそうだわ。」と食事を始めたのだった。
「2人とも、そんな隅っこでこそこそ何話してるんだか」
山崎くんが、私たちのいるテーブルにやってきた。
「あら山崎くん。山下さんと楽しそうに話してたのに。」
真生がにっこり笑うと、山崎くんはちょっとうんざりしたような顔になった。
私が山崎くんのいたテーブルに目を向けると、山下さんがすごい目つきでこっちを見ている。それでも動けないのは、周囲を他の同期に囲まれているからだ。
ははははー・・・来週、更衣室でからまれちゃったりして。
「山下が勝手に張り付いてくるんだ。それでも話が楽しければいいけど、彼女は自分の話しかしないから正直つまらないよ。それに俺、あの甘ったるいにおいが嫌いなんだよね」
うーん、どうやら山下さんは戦略を誤ったんじゃないだろうか。本人には言わないけど。その後は山崎くんは最後までもといた場所に戻ることなく、私や真生を交えた同期と話していた。
居酒屋を出ると、二次会に行く人とそのまま帰る人に別れる。私はそのまま帰る予定で、主役の山崎くんは問答無用で二次会に引っ張られるらしい。もちろん山下さんは山崎くんと一緒に行動するみたいだ。
「あのさ、藤枝・・・」と山崎くんが私に話しかけたところで、誰かが「あれっ、宮本課長。どうしてここに」と驚きの声をあげた。
皆が「えっ?」同じ方向に視線を移す。そこには、宮本課長が立っていた。
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ベタです・・・・ごめんなさいっ!!
だってベタ好きなんだもん。