表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天使の前髪  作者: 春隣 豆吉
油断は不覚のもとい
16/73

1.

董子とモナカ。の巻

「藤枝」

 3課に顔を見せたのは、昨年から東北支社に配属となった同期の山崎くんだった。

「山崎くん。いつこっちに来たの?」

「今日からこっちで研修なんだ。ほら土産」

 そう言って私にくれたのは、某松モナカ。

「わー、ありがとう。私、これだいすきなの。」

「だろうな。俺が東北支社に転勤が決まったときの壮行会で“山崎くん、モナカがおなかいっぱい食べられていいな~”と酔っ払って言ってたくせに。覚えてないのか」

「は??わたし、そんなこと言ってたの??・・・うわー、ごめんっ」

 山崎くんは笑って「どうせお土産買うし、何買ったらいいか迷わなくて助かるからラク。あ、それとさ藤枝。今週同期会やるだろ?」と言いかけたそのとき。

「藤枝。ちょっといいか?」と課長が書類を持ってやってきた。しかも少し不機嫌そう。

 課長は山崎くんに目を留めると「山崎、申し訳ないけど藤枝さんに急ぎの仕事を頼みたいんだ。」と声をかけた。

「あ、すみません。じゃあ藤枝、またな」

「うん。モナカありがとう。」

 山崎くんは課長に一礼すると3課から出て行った。

「課長、急ぎの仕事って・・・」

「これなんだが。ところで藤枝は、これ一人で食べるのか。」

 課長の視線は山崎くんがくれた某松モナカに注がれていた。

「へっ?いやいやまさか!!これ中型18個入りですよ。3課で分けましょうよ。」

  すると課長は「そうだな。あとで適当に分けておいてもらえるかな」と嬉しそうに言い、席に戻って行った。

 さっきまで不機嫌そうだったのに・・・もしかして課長も某松モナカ好きなのか。思わぬ共通点に嬉しくなる。


「董子は山崎と仲がいいんだな」

「そうですか?山崎くんは同期のまとめ役みたいなもので、皆にあんな感じなので私と特別仲良しと言うわけではないです。」

「董子、敬語」

「あ。」

 課長が急ぎの書類のあとに頼んできた資料は思いのほか内容が入り組んでいて、キリの良いところまでやっておかないと後が大変そうなので残業していくことにした。

 さっき、高橋くんが「お先に失礼します」と帰り、今は私と課長だけ。

 課長は会社内でも、こんなときには私のことを「董子」と呼ぶ。私はいまだに「宮本さん」から脱却できてない。

 それにしても、私が宮本課長と社内恋愛中だなんて未だに信じられない。だけど、私のことを「董子」って優しく呼んでくれる課長は現実で。

 この間のデート中敬語を使うなって言われてたのに、結局だめで課長は私にペナルティーを言い渡してきた。

 それは宮本課長のことを、今度のデートまでに名前で呼べるようにしておけというもの。

 課長の名前は和哉さん。実は私、課長の名前を忘れていて心の中で“課長の下の名前ってなんだっけ・・・”と必死に思い出していた。

 私の様子から、自分の名前を私が思い出せないのが分かった課長は「うそだろ?」と言い、さらに「俺がいかに藤枝から意識されてなかったかよく分かった。」とぼやいていたっけ・・・。


「董子。なにぼんやりしてるんだ」

 課長に言われて私はあわてて意識を仕事に戻す。

「すみませんっ!課長!」

「2人きりのときはどう呼ぶんだっけ?」

 課長がにやりと笑って私を見る。何を期待してるのか、私にはよーく分かる。でも、まだ呼べない。

「・・・・宮本さん?」

 私の返答に課長は傍目にも肩を落として、ため息をついた。

「董子。今度のデートまでに呼べないと、ペナルティ追加ね」

「え!そんなあ」

「ま、俺は追加のほうが嬉しいけどね」

 課長の考える追加のペナルティって何?・・・「和哉さん」って呼べばよかった。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


ようやく課長の名前が判明しました。

のちほど、登場人物一覧も更新します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ