おまけ
藤枝にかなり強引に迫って、俺と付き合うことを承知させたのは先週だ。
もっとも土曜日に出かけようと誘ったら、用事があるからと断られてしまったが。
本当は、もっとシチュエーションを考えていたんだけどなあ・・・いつもの俺なら、あんな早急な口説き方はしない。まるで高校生の頃みたいだ。
でもまあ、あわてた藤枝が可愛かったからいいか。あとは彼女の気持ちが追いつくまで自分の理性が試されそうな気がする。
「宮本課長」
課長会議が終わり、3課に戻る途中声をかけられた。声をかけてきたのは、総務の秋山さん。
「秋山さん、何か用かな」
「何か用かな、ですって?・・・・あるから声をかけたに決まってるでしょうが。」
秋山さんの話の内容は想像がついていた。
「そこの休憩室でいいか?」
「社食にしましょう。ちょうど持ってく書類があるし、一番すいてるから」
確かに社食は昼食時間以外はがらがらで、ここでお茶を飲んでる人間はあまりいない。
「宮本くん、私は紅茶ね」
「自分で買えよ、自分で」
「あらそういう事言うの?藤枝にいろいろ言いつけてやろうかしら」
「・・・紅茶でいいんだな」
秋山・・・・よく彼女と結婚したよなあ。俺は彼女の夫(同期のなかでは仲がいい)に尊敬の念を抱いてしまう。
秋山さんと食堂のテーブルを挟んですわり向かい合わせになる。
「・・・なんで秋山さんが知ってるんだ。ということは中川さんも知ってる?」
「まあね。この間の土曜日、3人で会ったから。」
藤枝の用事って、2人と会うことだったのか。
「藤枝が自分から話したのか」
「まさか。私たちがメンズ小物を見るのに付き合ってくれたんだけど、そのとき藤枝も結構熱心に見てたからさ。おやあ?と思って白状させたの。ついこの間、噂になって頭抱えてたのに、展開が早いから驚いちゃった。」
「ふーん」
「へー、宮本くんも余裕のない表情するのねえ。普段イヤミなくらい余裕しゃくしゃくな態度なのに」となぜかニヤリとする秋山さん。
「悪かったな。藤枝に関しては余裕がないんだ」
「おやまあ。」
どうも、さっきから上から目線なのは俺の気のせいか?
秋山さんは紅茶の残りを飲み干すと、俺をまっすぐに見た。思わずこっちも背筋を伸ばす。
「宮本くん。藤枝を泣かせたらただじゃおかないから」
「・・・秋山さんを敵に回すなんて俺は命知らずじゃないよ」
「私はただの一般社員よ。やあね~」ところころと笑う秋山さん。
いいや、秋山さんは同期では最強だよ。俺はそう言いたかったがそこはさすがに飲み込んだのだった。
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これで「藤枝董子は途方にくれる」完結です。
次章も、なるべく早めにUPしたいです。
時期的にバレンタインネタもいいかも・・・。




