1,強制睡眠
男なら1度は想像したことがあるのではなかろうか。
授業中に殺人鬼が入り込んできてクラスメイトを殺していくのを自分自身が止めるという構図を。
授業に集中することができない時、そんなことを考えているが、誰もそんなのないと思っている。
教室の外からそのクラスだけを殺すなんてできない。
そんなのは男子たちのくだらない妄想にすぎない。
でも、実際にクラス全員が殺されたら?
本当に自分が想像のように犯人を止めることができるだろうか。
危険はいつどこから現れるか分からない。
柴田蓮はそんな妄想に浸るのが好きだった。
元から妄想を膨らませることが好きで色んなことを考えている。
だが、柴田が思いつく妄想は過激なものばかりだ。
ムカついたやつがクラスにいたのなら、妄想の中で都合よく超能力を手に入れてソイツを殺す想像をする。
授業中もそんなことを考えたりするのが日課になっていたのだ。
柴田は東京内の動物の専門学校に通う2年生。
見た目は至ってごく普通。
髪は耳がギリギリ見えるぐらい。
格好もダボッとしたズボンにパーカーで特に目立つ様子もない。
20歳を迎えていたが少し童顔気味な顔をしている。
もう少しで授業が始まろうしている。
ほとんどの生徒は席に着いて友達同士で喋っていた。
今は4限目。
この授業が終われば帰ることができる。
始まるまであと5分だ。
スマホを眺めていると後ろから声をかけられた。
「よっ、相変わらず席に着くのが早いこと。」
話しかけてきたのは高橋蒼太。
柴田のクラスメイトでよく話をする仲だ。
そんなにコミュニケーションが得意ではない柴田に対して高橋のやつは色んな人にグイグイ行くタイプで、時々ウザがられていることを自認していない。
「だって、あと5分で授業が始まるし。」
「そんなん、先生が来てから座ればギリセーフよ。」
「先生が教室に入った時に座ってなかったやつは遅刻判定にでもなればいいのに。」
「おいおい、身も蓋もないこと言うなよ。
そんなん導入したら、周りのヤツらみんな遅刻だぜ?」
「普段の意識の低さが伺えるな。」
「まぁ、そんな硬いこと言わずに、な?」
少し口角を上げて高橋に向ける。
そのタイミングで先生が教室に入ってきた。
「席に着け〜」と優しい口調で言われ、全員が着席する。
先生が何も言わないのも意識の低さに繋がっていると思う、がしょうがないことだと飲み込む。
授業が始まる。
柴田が授業をちゃんと聞くか?
それはちゃんと聞いてはいる。聞いては、だけど。
しっかり頭に入っているかと言われれば怪しい。
それは自分の気になった部分しか頭に入ってこないという悪い癖だ。
今回の授業でいえば「ベニクラゲ」のことしか頭に入らなかった。
ベニクラゲは成体が死期を悟ると、自分から新たな自分を生成して生まれ変わる。
実質不死身の生き物と捉えられるのだ。
人間からしたらどうなのだろうと柴田は考えた。
生まれ変わった時、全く同じ性格で産まれてくることは可能なのか?
そんなふうに人間に例えて考えるのが少し楽しかったのだ。
それ故に頭の中に入ったというだけなのだから、真面目に聞いているかと言われれば難しい。
そうして4限目は無事に終了することができた。
あとは帰るだけ。
誰よりも柴田はスマホを見た。
そこには謎のマークが映し出されている。
これは…さっきやったベニクラゲ?
それが画面の中を泳いでいる。
「なぁ、高橋…俺のスマホなんか変なんだけど。」
「え?待って確認する。
は?俺のスマホにもいるんだけど?!」
確認をするとクラス全員のスマホにベニクラゲが出現していたのだ。
クラスは15人。
焦り出すクラスメイトたち。
面白がる奴らもいれば、本気で考えて怖がっている奴らもいる。
そして、その画面に人が現れる。
仮面を被っていて顔は見ることはできない。
仮面は白と赤を使ったどこか不気味なデザインをしていた。
人の頭蓋骨に見えるかと言われれば見えなくもない形だ。
その男が何かを取り出した。
白と黒の渦巻きが書かれた丸いものだ。
それを勢いよく回してこちらに見せる。
クラス全員がその画面に釘付けになった。
そしてすぐに全員が凄まじい眠気に襲われ1人1人眠りについてしまった。
最初に眠りについたのは柴田だ。
この時、誰も思いもよらない事態になっていくことを知らない。




