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インフィヌート ~ダンジョンで倒れた冒険者を救う者の物語~  作者: コヨコヨ


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ビギナーズラック

「今回は救助カードを拾ってきてもらうだけだったが、遭難した冒険者の行方を捜す仕事や、死体の回収の仕事もある。冒険者のような華やかな仕事ではないと知っておいてほしい」


 キアズは眼鏡を掛け直し、腕を組む。

 ダンジョンなのだから、人が死ぬのは当たり前。

 仲間が死んでも逃げるのに必死で死体を回収できない場合がある。


 冒険者ギルド側から依頼を受け、仕事をこなすのが救助隊ギルド。

 救助隊ギルドの需要は高く、仕事がひっきりなしに舞い込んでくる。


「最近、また冒険者の数が増えただろ。英雄への憧れや、一攫千金を狙って田舎から出てきた奴らで『インフィヌート』がどんどん肥えてやがる」

「そ、そうですね。僕も田舎から出て来たので、新人冒険者の気持ちはよくわかります」


 過剰な人間の出入り、魔物の討伐、冒険者の生死、それはルークス王国にとってお金の流れであり、同じようにダンジョンにとっても栄養の巡りである。


 キアズと話し終えたレオンはウルフィリアギルドで寝泊まりする。

 ルークス大銀貨を三枚払えば三〇日泊まれると聞き、即決した。

 一泊、ルークス中銀貨一枚。

 王都の宿なら破格の値段設定だ。

 救助隊ギルドは人気がない分、救助隊ギルドに所属している者に対して多くの恩恵がある。

 それでも、ほとんどの者が冒険者ギルドに流れてしまう状況だ。


 新人が救助隊ギルドに入ってもダンジョンで死んでしまっては元も子もないため、冒険者歴が最低一年以上という条件があるのも人手が少ない原因の一つ。


「僕の冒険者活動は、無駄ではなかったんだな……」


 寝泊まりする場所はウルフィリアギルドの二階にある角部屋。

 キアズから受け取った鍵を使い、扉を開けて中に入る。


 木製の質素なベッド、作業用の机、衣装棚が一台ずつ。清潔なトイレも完備されていた。

 東側に日差しがよく入るガラス窓が取り付けられており、高級感が漂っている。

 一人で暮らすには申し分ない広さ。

 この部屋がルークス中銀貨一枚で泊まれるのは破格だが、その分、食事はついておらず、風呂もない。

 ただ、風呂はもともと高級品。食事も一階に食堂があるため問題はない。


 ――中級のポーションを売って、魔法の袋を見に行こうかな。お腹も減ったし、市場で昼食も取ろう。


 レオンは部屋から出て、ウルフィリアギルド前の東大通り沿いを歩く。

 毎日のように露店が立ち並び、服や雑貨、武器、防具、食べ物など、何でも売っている。


 東西南北に延びる大通りは人通りが多い。

 村人や商人が王都に卸売りに来るのだ。

 そのため、大通りはいつもソーセージのように肉詰め状態。


 新人冒険者だったころ『商品の質を重視するなら、露店より王都に腰を据えた店を選ぶ方がいい』とドリミアに教えてもらったことを守り、レオンは薬屋に入る。


 禍々しい雰囲気の店内にポーションや材料、器具が陳列されている。


 魔物と頻繁に戦う冒険者と違い、救助隊活動の中で魔物と戦う頻度は少ない。レオンが持っていても意味がなかった。


「すみません、この品、使わないので買い取ってもらえませんか?」


 レオンは店を切り盛りしている老人に話しかけた。

 老人は香草を炊いて煙のにおいを楽しむキセルを吸っていたが、中級ポーションを手に取ると真面目に調べ始める。


 十本の中級ポーションはルークス銀板五枚で売れた。

 新品未使用のため、元値に近い値段だ。


 今日だけでルークス銀板七枚の儲け。


 ――冒険者の時に一日でこれだけ稼いだ覚えは一度もない。絶対に安全と言えないけど、魔物と戦わない分、僕の能力と仕事の特徴があっているかもしれない。


 魔道具が売られている店に移り『魔法の袋』といわれる魔道具を探す。

 魔物の素材や宝箱、武器の予備などを入れて重さを感じず持ち運びができる便利な品だ。

 性能はピンからキリまであり、お金に寄って収納できる量は決まってくる。


「一メートル四方で、ルークス金貨一枚。た、たっか……」


 魔法の袋は新人冒険者が手を出せる金額ではなく、中級から上級者が持つ品。

 二メートル四方でルークス金貨四枚。

 三メートル四方でルークス金貨一六枚。

 ここまで来ると王都で一軒家が買えそうな値段だった。

 手持ちのお金で買えないため、潔く諦める。

 多くの冒険者が稼いだ分を一日で使ってしまう者たちばかりの中、レオンは金を管理できる人間だ。

 神経質な仕事が多いシーフのため、危機管理が得意。お金についても慎重に考えられる。


「こっちは《スキル》が付いた剣が売ってる。ルークス金貨八〇枚? は、ははっ」


 レオンは特殊な力が付いた剣を見つめ、乾いた笑い声が出る。


「魔法の袋はいつかほしいと思っていたけれど、救助隊の仕事だけこなすならあまり必要ないか。今日はたまたま運がよかっただけって、ヴィミが言っていた。また、ビギナーズラックにあってしまったな……」


 彼は苦笑いし、腰に手を当て肩をすくめる。

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