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インフィヌート ~ダンジョンで倒れた冒険者を救う者の物語~  作者: コヨコヨ


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報告

 レオンとヴィミは一七層に落ちている救助カードを拾い集めた。

『聖者の騎士』は意識が戻らない怪我人や死者を一八層の安全地帯に運ぶ。


 あらかた仕事を終えた後、一七層の入口でレオンとヴィミ、『聖者の騎士』たちは話し合う。


「今回の事件についてウルフィリアギルドとバルディアギルドに連絡しないといけないから、僕とヴィミは先に地上に戻るよ」

「俺たちは他の冒険者パーティーと一緒に地上に向かう。レオン、帰りも気を抜くなよ」

「ノーリスも、皆をお願いね」


 レオンとノーリスは右腕を組み交わし、別れた。

 その後、レオンとヴィミは一七層から地上まで駆け戻る。疲労は肉体に蓄積していたが、休憩している暇はなかった。

 寝不足気味の状態で地上に出る。すると夜が明ける手前だった。東の空がほんの少し明るくなっており、王都を照らす。


 ――日の光が眩しい。今、僕は確かに生きているんだ。


 レオンはバルディアギルド、ヴィミはウルフィリアギルドに向かう。

 両者はギルドマスターに一七層で起こった事件について事細かに説明した。


 ドリミアの所持品から行方不明になっていた冒険者たちの名前が書かれた手記が見つかり、物的証拠として処理される。

 ドリミアが中層で手に掛けた冒険者の数は行方不明になっていた被害者の数とほぼ同じだった。

 ドリミアに加担していた犯罪者も多く捕まる。

 ダンジョンが料理屋からゴキブリを一掃したくらい綺麗になった。


 レオンはドリミアとパックスが入った救助カードをシグマに直接手渡す。


「治療を施した後に確実に刑務所に送り届ける」


 シグマはアンダルタに近い化け物の雰囲気を放っていた。


 ――たとえ、ドリミアさんが目を覚まし、逃亡を図ろうとしてもシグマさんが目の前にいたら観念するしかない。


「レオン、よくやった。ほんと、よくやった」


 シグマはレオンの肩を叩きまくる。肩が外れる前にやめた。


「シグマさん、一つお願いがあるんですけど聞いてもらえますか?」

「もちろんだ。俺に出来ることなら、何でも言ってくれ」

「もう一度、冒険者登録をお願いします」

「……お安い御用だっ」


 重大な仕事を終えたレオンはあくびを噛み締めながらウルフィリアギルドに戻る。


「レオン、ヴィミから話を聞いた。どうやら、中層に行ったようだな」


 清潔感が溢れる受付の前に立っていたキアズが眼鏡を掛け直し、レオンに視線を向けた。


「はい。しかるべき処罰は、受けるつもりです」


 レオンは背筋を伸ばしながら、キアズの話を真剣な表情で聞く。


 ――なにを言われても文句は言えない。


「そうか。なら今回の件で回収した救助カードの配給はなしだ。慈善活動お疲れ様だったな」


 キアズはレオンの肩に手を置き、里帰りしてきた息子を見るような優しい瞳を浮かべた。


 レオンは軽い処罰で拍子抜けする。


「私はレオンに救助隊として中層に行くのを禁止した。だが、レオンは自分の意思で中層に行ったのだろう。なら、私の命令を無視したわけではない。褒められることではないが、多くの者を救ったのは確かだ。ほんと救助隊ギルドから出してしまうのが惜しいくらいの逸材なんだがな」


 キアズは瞳に涙をため、鼻をすする。レオンに口出ししなかった。


「僕は救助隊を辞めるつもりはありません」

「なに……、そうなのか?」

「救助隊は辞めませんけど、やりたいこともあきらめません。僕は救助隊として働きながら冒険者活動をこなします。どちらに絞らなければならないという法律はありませんよね?」

「確かにな。まあ、レオンのやりたいようにすればいい。救助隊ギルドは副業可能だからな」


 キアズは腕を組み、首を上下に振りながら笑う。


 半日、レオンはウルフィリアギルドの自室で泥のように眠った。夕方に目を覚まし『落とし豚』の前に向かう。

 無事に帰還した『聖者の騎士』と合流する。

 東大通りに位置するヴィミ行きつけの焼き肉屋に案内した。


 レオンは焼き肉屋を貸し切り、仲間同士で宴会を開き、互いの無事を祝いあう席を設けた。

 ヴィミは頬が痩せこけ、お婆ちゃんのように背中が丸まりながらテーブルに倒れ込む。


「レオン、本当に『聖者の騎士』に戻ってくるつもりはないのか?」


 酒が強いノーリスはいつ一発芸を披露するかうずうずしながらレオンに話しかけた。


「そうだそうだー、レオンは『聖者の騎士』で働くべきだー」

「カリーさん、飲み過ぎは体に悪いですよ。でもシーフがいなくなってしまっては冒険者パーティーとしての機能が上手く回りませんし、レオンさんに帰って来てほしい気は私もあります」


 酒が弱く髪色と真反対に顔を真っ赤にしているカリーと、彼を介抱するダルシーも同意する。


「うわぁ~ん、なんでよぉ~。私と同じくらい貧乳なのに、そっちの泥棒猫がいいっていうの。レオン、戻ってきてよぉ~」


 泣き上戸のリンがエールジョッキを片手に持ち、べろんべろんに酔いながら叫ぶ。


「皆、ごめん。僕は冒険者に全力を注ぐわけじゃない。本業は救助隊。冒険者は趣味みたいなものかな。だから、皆と一緒に冒険は出来ない。でも、どうしても力が必要な時はいくらでも協力するから」


 レオンは酒が入り、活舌よく喋る。酒と満腹によって眠気に襲われながらも、肩に身を寄せてくるヴィミを軽く支えていた。


「だぁ~、仕方がない。俺はレオンを応援する。じゃあ、ここで飲み直して行こうじゃないかっ」


 ノーリスはエールジョッキを掲げ、残っていたエールを一気飲み込んだ。その後に繰り出した一発芸の「トマト」も、酒が入った皆のツボに丁度よく嵌り、笑いをかっさらう。

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