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インフィヌート ~ダンジョンで倒れた冒険者を救う者の物語~  作者: コヨコヨ


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二人でボス戦

「ボス部屋まで、さっさと来なさいよっ」


 ヴィミは一人で走り出した。彼女の姿が瞬く間に消える。


「一二層まで行った覚えがあるといっても、冒険者パーティーでの話なんだけれど」


 レオンはシーフの仕事以外、仲間におんぶにだっこ状態だった。

 五層のフロックバックすら倒せない。今、ヴィミに置いて行かれれば、死ぬ確率が跳ねあがる。

 表情が青ざめていき、後ろを一度振り返る。


「ここで引いたら救助隊になった意味がない。全力で追わなきゃ……」


 レオンは頬を強くたたく。目を見開き、走りだした。

 他の冒険者たちを突き飛ばさないよう注意しながら、洞窟の中を馬車馬のように駆け続ける。

 通常の罠は踏まず触らず、躱した。拘束罠の可能性がある場合は解除し、安全に突破。

 魔物が通路を歩いていても戦わず無視。

 とにかく、一二層のボス部屋に一直線に向かう。


 上層はずっと同じ景色が続くが、階層を降りれば降りるほど地形が広くなり、現れる魔物の強さが変わる。

 普通の冒険者なら、もっと慎重に安全を最優先して進む。

 冒険者の中で、ダンジョンの中を走っている者は一人もいない。

 地上に戻る時ならまだしも、進むときに走るなど自殺行為に等しい。ただ……、


「いま、なんか、鼠でも通ったか?」

「誰か走っていったような気がしたけど、よく見てなかったから」


 レオンは他の新人冒険者が認識できない速度で走っていた。

 魔物が通路を塞いでいる場合は壁を走る。

 道が狭い場合は、走っている勢いのまま魔物の頭を飛び越える。

 解除するのが難しく、時間がかかる槍が降る罠を踏み抜く。

 天井、壁から槍が飛び出してきても、大声を出しながら半泣きで全力疾走。

 六層に出現する初心者殺しと呼ばれるシャドウウルフすら、全力で駆け抜けるレオンに追いつけない。


 それでも、ヴィミの後ろ姿は一向に見えない。


 Lv.1の冒険者が集まった冒険者パーティーは一二層のボス部屋まで到達できない。

 Lv.2の冒険者が集まれば半日から一日。


 レオンは近場ではない険しい道のりを一時間で駆け抜け、息が絶え絶えになりながら到着。

 ヴィミは一二層のボス部屋の前で腕を組み、靴裏を床にリズミカルに叩きつけながら立っていた。


「一時間。まあ、及第点ってところね。じゃあ、ボス戦といくわよ」

「ちょ、ちょっと、休ませて……」


 ヴィミは待たず、一三層に続くボス部屋の扉をこじ開ける。


 内部に体長一〇メートルを超える翼のないドラゴンと名高いフレアリザードの姿があった。


「レオンがあいつを引き付けて。その間に、私が倒すから」

「う、嘘でしょ……」


 レオンは囮役を押し付けられ、全身から血の気が引く。

 百メートル四方にも及ぶ、戦うためだけに存在するような巨大なボス部屋の広さをもってしても、フレアリザードは圧倒的な存在感を放つ。

 そんな相手に、囮役を務めるのは本来シーフの仕事ではない。普通は耐久が高い役職が担う。

 重厚な扉が軋み、誰の意思もなく風に押されたように閉まる。

 すると戦いの合図と言わんばかりにフレアリザードが咆哮を放った。

 ヴィミはレオンを突き飛ばす。すると、レオンがいた位置に魔力の塊が衝突。岩盤が抉れ、大きく爆ぜた。


「うだうだしない。死にたくないなら、逃げる鼠みたいにさっさと走りなさいっ」

 扉が閉ざされた今、他の冒険者が中に入れるのは、レオンたちが全滅するか、フレアリザードが討たれるかのどちらかだ。

 ボス部屋の閉じた扉はLv.7のシグマでも開けることはできず、力技ではどうすることもできない。

 つまり、レオンたちに逃げ道がない。


「わ、わかったよ……、走ればいいんでしょ、走ればっ」


 レオンは半ば逆切れのように声を荒げた。

 フレアリザードの前に立つと、天井や壁に生えた光コケから放たれる光が真っ赤な鱗、ドラゴンのような鋭い眼光、巨大な牙、鋭い爪を照らしていた。

 高さが四メートル近くあり、見上げる。ただ、目の前に立つだけで膝は笑い、瞳に涙が浮かぶ。


 フレアリザードは四本の脚を動かし、素早いトカゲのように走り出した。大口を開け、人間を丸のみしよう突っ込んでくる。


 レオンは攻撃を躱すだけなら得意だった。

 フレアリザードの突進と咆哮、切り裂き、噛みつき、尻尾の薙ぎ払い攻撃は『聖者の騎士』と共に戦った時と変わらない。

 体が大きい影響で、予備動作も大きく見極めるのは難しくない。

 それでも、躱す拍子がズレれば耐久の低い者は大怪我を負う攻撃だ。

 罠を解くときと同じ真剣な表情で、フレアリザードを翻弄する。


 フレアリザードは躱して逃げることだけに集中するレオンを、いっこうに仕留められない。


「へぇ……、中々やるじゃない。【獣拳】」


 ヴィミはフレアリザードの上空に拳を握りしめながら現れる。

 拳が淡く光り、フレアリザードの頭部に素早く叩きつけた。

 頭部と地面が陥没。衝撃波が砂塵を巻き上げた。


 レオンは顔の前で腕を交差させ、吹き付ける砂塵を防ぐ。その後、うっすらと目を開けた。

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