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サンドボックスウォーズ「44サーバー編」  作者: 黒瀬雷牙
第一章 冬吾の物語

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第五話 ギルド拠点

 ギルド・レゾナンスを創設した四人は、さっそく拠点での生活を始めることになった。


「……あーあ。せっかく昨日、俺が丸一日かけて新築建てたばっかなのに。もうお別れかよ」


 冬吾が肩を落としてため息をつく。


 しかしその横で、クラウドとベリーが、無言で資材を積み上げていく。そして――。


「できました」


「ほいっと」


 あっという間に、三階建ての豪邸が建っていた。

 白い壁、広いテラス、無駄に豪華な門柱まである。


「…………撤回。昨日のやつただの掘っ立て小屋だわ」


 冬吾は、さっきより肩を落とした。


 落ち着いたところで、コルトがそっと手を挙げた。


「あの……クラウドさん。私が話したギルドの件なんですけど……」


「そうですね。では一度、一覧を見ておきましょう」


 クラウドが視界メニューを操作すると、ギルド一覧が表示された。


 ・獅子王軍 8名

 ・この世界から抜け出しませんか? 12名

 ・レゾナンス 4名


「三つだけ……? ずいぶん少ないんだな」


 冬吾が首を傾げる。


「まぁ、44人しかいないんだから、こんなもんでしょ」


 ベリーが相変わらず辛辣にツッコむ。


「この世界から抜け出しませんか? ですか……後で接触してみましょうか」


「獅子王軍……コイツらはダメです、コイツらは問題です!」


 彼女の声は震えていた。

 その時、冬吾の腹が盛大に鳴った。


「……すまん」


「では、食事にしましょう」


 クラウドは苦笑しながら、森で集めた木の実やモンスター肉を取り出した。


「料理は……任せてください」


 コルトが胸を押さえて前へ出る。


 彼女は拠点の片隅に簡易コンロを設置し、迷いなく包丁を走らせ始めた。


「へぇ、できるんだ……てか適応力高くね!?」


 冬吾が目を丸くする。


「はぁ、アンタが適応力低いのよ……ところで、クラウドさん」


 ベリーが横から首を伸ばす。


「この世界って腹減りゲージみたいなのあるの? この前も特に気になんなかったけど」


「いえ、ないんです」


 クラウドは眉を寄せた。


「ですが、僕たちは本当に空腹を感じている。……やっぱり、このサーバーは異常ですね。現実とリンクしすぎています」


 冬吾は無言で自分の腹を押さえる。

 確かにゲームの空腹なんて軽い演出じゃない。

 完全に現実の胃袋だった。


 そんな会話を交わすうちに――。


「お待たせしました!」


 コルトが笑顔で大皿を運んできた。

 香ばしい肉とスープ、炒めた木の実が並ぶ。

 匂いだけで胃が鳴りそうだ。


「うまそ……!」


 冬吾の目が輝いた。

 次の瞬間、全員が一斉に手作りの箸を伸ばしていく。


 拠点の広間に並べられた大皿を前に、四人は黙々と食事をとり始めた。


 肉の香ばしい匂いと、炒めた木の実の香りが混ざり、静かながらも温かい雰囲気が漂う。


「……ところで、みんな、どんな人なの?」


 冬吾が箸を置き、ふと口を開いた。


「僕は高校三年生です。ゲームが大好きで、友達は少ないんです」


「へぇ……クラウド、性格もいいし社交性もあるのに、周りは見る目がないな」


 クラウドを見て、冬吾は軽く感心したように言った。クラウドは少し俯き、声を潜める。


「実は……本当の僕は、けっこう内向的で。冬吾さんや皆さんとは、何故か普通に喋れるんです」


 冬吾はその言葉に頷いた。


「なるほどな。意外と気遣い屋なのか」


 次に、ベリーが静かに口を開く。


「私は高校一年生、ゲーマーよ。友達は必要ないから作らない。クラウドさんと同じですね」


 冬吾は心の中でつっこむ。


(いや、お前は性格に難ありだろ……)


 一方、コルトは少し屈託なく笑った。


「私は20代です。デパートのフードコートで厨房に立ってます」


「えっ、料理上手なのはそのせいか」


「趣味は猫カフェ。ゲームは……ポイントサイトの報酬のためにちょっとダウンロードしただけです」


 冬吾は自分の身の上を告げた。


「俺は……しがない日雇いのおっさんだ」


 ベリーは鼻で笑った。


「……ふん、なるほどね」


 冬吾は思わず、目で抗議する。


(いや、鼻で笑うなよ……)


 そんな和やかで、どこか微妙にズレた会話が、拠点に柔らかい空気を運んでいた。


 食事を終え、四人はしばし拠点の余韻に浸っていた。火のぬくもりと満腹感が、自然と会話を柔らかくしていた。


「さて……そろそろ、あのギルド《この世界から抜け出しませんか?》に連絡を取ろうか」


 クラウドはメニュー画面を開き、ギルド一覧を確認した。だが、画面に表示された人数に目を見張る。


 先程まで12名だったはずの《この世界から抜け出しませんか?》は、10名に減っていた。

 一方、獅子王軍は8名から9名へ増えている。


 冬吾は眉をひそめ、静かに呟く。


「……何があったんだ?」


 ベリーはメニューを覗き込みながら、言葉少なに首を振った。


「わからない……でも、何か動きがあったのは確かね」


 コルトも顔を曇らせた。


「一体、誰が抜けて、誰が増えたのか……」


 クラウドは操作を続けながら、視線を上げる。


「まあ……とにかく注意して行動するしかないですね」


 冬吾たちは遠くを見つめ、胸の奥で小さな違和感を覚えた。この世界は、少しずつ、だが確実に何か変わり始めている。


 その思いが、彼ら四人の間に静かな緊張を生んだ。

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