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サンドボックスウォーズ「シアワセのサーバー」  作者: 黒瀬雷牙
最終章 終わりへと向かう物語
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第四十二話 最終決戦 ー前編ー

 冬吾が一歩前へ出る。


「……行くぞ。全員、気を抜くな」


 仲間たちは頷く。


 この戦いだけは、絶対に負けられない。


 最初に動いたのはバロンだった。


「まずは雑魚から消す」


 黒霧が爆ぜ、彼の姿が消えた。


「来る……! 真後ろッ!!」


 ベリーの叫びと同時に、冬吾は跳んだ。


 空間そのものを抉る衝撃波が冬吾のいた場所を粉砕する。だが冬吾の回避速度は、もはや人間の域ではなかった。


「……当たんねぇよ、そんなモン」


 砂塵の鉢金がわずかに光り、冬吾の視界はすべての霧を貫通している。背後へ影のように回り込み、鬼神の指輪の強化が乗った約束の剣を叩き込む。


 ガッ!!


 バロンの防御結界が軋む。


「おいおい……痛ぇじゃねぇか」


 バロンが舌打ちする。


「痛い、で済んでる時点で大したもんだろ」


 冬吾が挑発するように笑う。


「じゃあ……こっちはどうだァァァッ!!」


 グレンデルがドレッドハンマーを振り上げた瞬間。


「遅ぇんだよ、デカブツ」


 バロンが至近距離に現れ、黒剣の一閃。


「遅くねぇよ。俺も鍛えてんだよッ!!」


 グレンデルが受け止めた。

 その腕は震えているが、折れない。


「ほう……?」


 バロンが初めて興味を示した。


「ここは通さないッ!!」


 ミサトが神鋼刀・白雲の斬撃の軌跡でリサージュの闇波動を受け止める。


「……そんなもので受け止めるなんて、あなた凄いね」


 リサージュが艶やかに笑う。


「守れるなら十分だ!」


 ミサトは一歩も下がらない。その背後ではコルトが蒼い結界を最大展開していた。


「ミサトさん! 白雲に魔力補強かけます! がんばって!」


「任せろ!」


 神鋼刀・白雲が光を放ち、闇の波動を押し返した。


「おいバロン、こっち向けよ!」


 レンがナイフを投げつける。

 弾かれるがその直後、足元でトラップ魔法陣が爆発。


「っ……お前、奈落の罠を設置しやがったな」


「迷宮エリアで少し貰ってきたんだよ」


 レンが悪童のように笑う。


「ネロ! バロンの動きが速すぎる、ヘイスト追加!」


「了解、全員に第二重ヘイスト! 持つかどうかは……知らない!」


 魔力が爆発するように仲間に流れ込む。


「ベリーさん、そのまま僕の詠唱速度に合わせて!」


「わかってる!」


 二人の杖が重なり、魔力の軌跡が交差する。


「ディレイスフィア!三秒停滞!!」

「スターダスト・ランス!」


 三秒の停止時間に合わせ、光の砲撃がバロンに命中した。黒霧が裂け、バロンが初めて膝をつく。


「……おい。なんだこれ」


 バロンが口元を押さえ、ゆっくり立ち上がる。


「てめぇら……強くなりすぎだろ」


 怒気と混じった、しかし明らかな焦りの声。


 一方リサージュはサキュバス形態で圧倒するはずが

ミサトとコルトに押しとどめられていた。


 しかも冬吾の攻撃が途中途中で入る。


「……おかしいわね。あなたたち、以前のデータと違う」


 リサージュの眉がわずかに動く。


「宝物庫の装備……ガチャの強化……これらの揺らぎがあなたたちの力を予測不能にしてる」


 そして吐き捨てる。


「嫌いなのよ、こういうイレギュラー」


 その声は確かに苛立っていた。


 リサージュがふっと指を鳴らした。


「バロン。遊びはおしまい。あれを出すわ」


「……チッ。もう使うのかよ」


 バロンが黒霧を一気に解き放つ。


 黒霧の奔流が渦を巻き、大広間は闇の胎動そのものに染まっていく。


 バロンの奥底の魔力、それは深層モンスターの禍々しさとも違う、人の形をした絶望そのものだった。


「待て……これ、こんな魔力、計測不能……!」


 ネロが杖を握りしめ、顔を青ざめさせる。


 リサージュは静かに、しかしどこか嬉しそうに笑った。


「これはね……バロンの心の底よ。あなたたちが追い詰めたせいで、もう抑えが効かなくなった」


 バロンが息を荒くしながら、口元を拭った。


「……テメェらが強すぎんだよ。ここまで来るとは思わなかったぜ、ほんとによ……!」


 だが、その言葉とは裏腹に、黒霧はさらに濃くなる。

 まるで闇の海が溢れ出す直前だった。


「止めるぞッ!!」


 冬吾が叫び、グレンデルが同時に踏み込んだ。


「させるかァァッ!!」


 二人が一気に距離を詰めるその瞬間。

 リサージュが微笑み、指先をそっと水平に薙いだ。


「近寄らせないわよ。――アズガルド・ヴィルカン」


 空気が色を失い、世界がひとつの光だけになる。


 次の瞬間──

 白炎の超高圧熱波が一直線に奔った。


 轟音ではない。

 これは焼却。

 空間そのものが悲鳴を上げる消滅の光。


「ッ!? 下がれ冬吾!!」

「くそっ……っ、これが……あの時の……ッ!!」


 グレンデルの巨体ですら、吹き飛ばされる。

 冬吾は必死に足を踏ん張りながらも、砂塵の鉢金が高熱に軋み、視界すら揺れる。


「アズガルド・ヴィルカン……!俺たちの拠点を……マキシムを……焼いた……あれかよ……!」


 冬吾の額から汗がしたたり落ちる。


 光線は地面を焼き貫き、石床を熔岩のように溶かしながら、巨大な爪痕を刻む。

 近づこうとしたら一瞬で蒸発する。そんな威力。


「近寄れねぇ……! どうやって防げってんだよ、これ……!」


 冬吾が歯噛みする。


 リサージュは悠然と浮かびながら、唇をつり上げた。


「あなたたちがまた邪魔をするなら、何度だって焼き払うわ。あの時と同じようにね?」


 ミサトが白雲を構えながら叫ぶ。


「……クソッ、あの熱量……剣ごと溶ける……! バリアで受け止められるレベルじゃない!」


「どうする……どうすれば……」


 ベリーの声が震える。


 アズガルド・ヴィルカンの光がひび割れた床をさらに抉り、接近すら許さない壁となって燃え盛る。


 その奥で、バロンの闇が胎動する。


 黒霧が蠢き、爆ぜ、雄叫びを上げようとしていた。


「来る……! あれが完成されたら、全員で消し飛ぶ……!」


 ネロの声が震え、仲間たちは武器を構え直した。


 逃げ場はない。

 突破するしかない。


 だが、黒炎最上位魔法のアズガルド・ヴィルカンが立ちふさがる限り近づけない。


 リサージュが優雅に指を鳴らした。


「さぁ……第二幕を始めましょう?」

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