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サンドボックスウォーズ「44サーバー編」  作者: 黒瀬雷牙
最終章 終わりへと向かう物語

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第四十一話 宿敵との対峙

【奈落 第三層 迷宮エリア】


 第二層を突破し、休息を終えた七人は、奈落のさらに奥、第三層へと足を踏み入れた。


 そこは、終わりの見えない石造りの迷宮だった。

 天井は低く、通路は狭く、壁の文様はゆっくりと脈動するように光を放つ。


「……魔力の流れが乱れすぎてる」


 ベリーは壁に手を置く。


「相当深い層なのに、魔力密度だけなら中層以上。気を抜いたら迷う」


「つまり、方角は?」


 冬吾が問う。


「任せて。魔力の逃げる方向が一本道になってる。あれを追えば最短で層ボスに行けるはず」


 ベリーは迷いなく進んだ。


 その背中は揺らぎがなかった。

 七人はその後ろを信じるようについていく。


 しばらく進んだ頃、レンが急に手を挙げた。


「止まれ。……罠の匂いがする」


「レン、匂い?」


 ミサトが首をかしげる。


「いや実際に匂うわけじゃねぇよ。こういうのは雰囲気っていうか……」


 レンは床を軽く蹴り、壁を指で叩き、天井を一瞥する。その顔が真剣に固まった。


「やべぇ。これ、冬吾が突っ込んだら死んでた。いや俺以外だったら全員死んでたな」


「そこまで言うのかよ」


 冬吾が眉を上げる。


「だってこれ、罠三重構造だぞ? 踏んだら矢、避けたら天井崩れて、その下に即死魔法陣って……悪意しかねぇ」


 レンは細い通路の奥、わずかに歪んだ床面をつま先で示した。


「任せろ。こういうのは得意分野だ」


 レンは呼吸を整え、軽やかに跳ね、壁を走り、空中で体勢をひねり、静かに着地した。


 直後。


 バシュッ! ガラガラッ! ボンッ!!


 矢の雨、落石、魔法陣爆発。

 それらすべてが一瞬で連鎖した。


 だが、誰も傷つかなかった。


「……マジでお前すげぇな」


 冬吾が素直に呟く。


「へっ、もっと褒めろよ」


 レンは照れ隠しのように鼻を鳴らす。


 そのまま危険地帯を進むと、やがて異様な気配が漂い始めた。


「ここだ。魔力の流れが……消えてる」


 ベリーが足を止める。


 薄闇の中から、黒い影が滲み出るように広がる。


 人型のようで、人ではない。

 迷宮そのものが具現化したような、理不尽の象徴。


 メイズシャドー。


 冬吾たちが構えるより早く、ネロが口を開いた。


「無視して突破するよ」


「え? 相手は層ボスだぞ!」


 ミサトが驚く。


「いや、本来のゲームだとボスは別にいます。でも、あれは勝てない仕様のモンスターです。ある意味ボスよりタチが悪い……戦闘したら全滅する」


 ネロの声には迷いがなかった。


「おいおい、無理ゲーかよ」


 レンが額を押さえる。


「だから、戦わずに抜けるのが攻略法。出口は……影の流れからして、あの一直線の通路だ」


 次の瞬間、メイズシャドーが爆発的速度で襲いかかる。


 空間がねじれ、影が槍へと変形し、天井から床から壁から、同時に刺突が迫る。


「ミサト!」

「わかってる!」


 ミサトが盾を構え、影槍の雨を受け止めた。

 笑えるほど理不尽な連撃。


「コルト!」

「バリア最大展開っ!」


 コルトの放つ蒼光が、ミサトの盾ごと七人を包む。


 ガガガガガガガガガッ!!!


 影の嵐がミサトとバリアに命中し続ける。

 ミサトの腕が震え、歯を食いしばり、しかし折れない。


「ぐ……ッ、まだ……いける!」


「その間に全部ぶっ壊すだけだろォッ!!」


 グレンデルが叫び、正面の道を塞ぐ雑魚モンスターの群れへ突っ込む。斧が唸り、石壁が砕け、道が切り開かれる。


「いま! 走れぇぇぇ!!」


 ネロが叫ぶ。


 七人は一斉に駆け抜けた。

 影の槍が背後で暴れ狂うが、もう届かない。


 光の出口に飛び込んだ瞬間、暗闇がふっと消え、足元に柔らかな砂と石畳が広がった。


【奈落 第四層 古城エリア 入口】


「はぁ、はぁ……! 死ぬかと思った……!」


 レンが地面に倒れ込む。


「勝負にならない相手は、戦わないのが正解だよ」


 ネロが小さく微笑む。


「だが、突破したな」


 冬吾は息を整えながら周囲を見渡す。


 巨大な古城の門。

 どこか血の匂いがする重い空気。

 そして、闇の奥へと続く階段。


「次は……もう、あいつらの匂いがする」


 冬吾の言葉に、全員が無言で頷く。


 奈落の最深へ。

 バロンとリサージュの待つ場所へ。


「……勝負にならない相手だとしても、アイツらだけは倒さなきゃいけねぇけどな」


 物語は、終わりへと加速していく。


 一方、レゾナンス一行が第四層へ到達したことを、バロンとリサージュは確かに察知していた。


 そしてその迎撃の舞台は、すでに整っていた。


 冷たい霧のような魔力が充満する、血の城。

 天井は高く、闇が落ちてくるように重い。


「……うっわ。やな雰囲気」


 レンが肩をすくめる。


「魔力濃度、第三層の三倍以上。気を抜いたら持っていかれる」


 ベリーは杖を強く握りしめた。


 階段を上りきった瞬間、四方の壁から死霊モンスターが一斉に飛び出した。


「来るぞッ!!」


 死霊騎士、吸血兵、悪魔化したコウモリ。

 数は百を超えている。


 だがその瞬間、冬吾の鉢金が微光を放つ。


「……あぁ? こいつ、砂漠だけじゃねぇのか」


 砂塵の鉢金は粉塵状の魔力への耐性を持つ。

 この古城の霧状の死霊瘴気は、まさにそれに近い。

 冬吾の視界だけがクリアになる。


「ミサト! 右、三体来るぞ!」


「了解!」


 冬吾の指示に合わせミサトが斬り払い、

 レンが背後に回り込んで確殺。


 グレンデルは押し寄せる死霊兵を、

 巨戦斧ドレッドハンマーでまとめて粉砕した。


「邪魔だァッ!!!」


 その一撃だけで十体は消し飛ぶ。


「ベリー、左! 湧き出し地点塞ぐ!」


「スターダスト・バン!」


 爆ぜる光の網が、壁を破って出てくる死霊の出現口を焼きふさぐ。

 戦場が一気に整理された。


「ネロ、こっちの動きにヘイスト重ねて!」


「もう全員に常時維持してる、問題ない!」


 ネロの加速魔法で各員の動きが鋭さを増す。


「コルト、後衛の結界は?」


「まだ耐えます! 冬吾さん、前へ!」


「言われなくても!」


 冬吾は一気に前へ跳び、影を踏んで位置を変え、死霊騎士の首を刈り取った。


 数分後。


 古城の大広間には、砕けた骨と煙だけが残った。


「……全滅、っと」


 冬吾が剣を払うと、仲間たちは一斉に息を整えた。


「数がえげつなかったな、今までで最大」


 ミサトが苦笑する。


「うう……魔力の霧が悪質すぎる。ベリーさん、よく耐えたね」


 ネロが肩を叩く。


「冬吾の鉢金が……なんか、あれすごかったね……」


「砂煙と霧って似てんだな。あんな形で役に立つとは思ってなかったが」


 冬吾は前方、巨大な扉を見据えた。

 その奥から、明らかに人ならざる気配が満ちている。


「……感じる。第四層ボス……じゃない。これは……もっと、深い……」


「ベリー?」


 ミサトが振り向く。

 ベリーは震える指で、扉の奥を指した。


「……リサージュの魔力だ。しかも、普通じゃない」


 その言葉に全員が息を呑む。


「つまり……バロンも、その奥にいるってことか」


 冬吾が低く呟いた瞬間。


 ギィ……と扉が()()()()ゆっくりと開いた。


 霧が流れ出し、奥から紅い瞳がふたつ浮かぶ。


「ようこそ、レゾナンス。待っていたわ」


 姿を現したのは、ドラキュラの力を喰い、凶悪なサキュバスへと変貌したリサージュ。

 その隣には黒い霧を纏い、かつての面影が崩れ落ちたバロン。


 冬吾は剣を構え、仲間たちは一斉に戦闘態勢に入る。


 第四層・古城の新たなる主が、ついにその姿を現した。


「さァ……殺し合おうぜ、お前ら!!」


 バロンの声が、血に濡れたように響いた。


 対峙する両者。

 奈落の空気が、いよいよ決戦の音を鳴らし始めていた。

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