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サンドボックスウォーズ「44サーバー編」  作者: 黒瀬雷牙
最終章 終わりへと向かう物語

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第三十七話 待ち受けていた者

 狩りから戻ったレゾナンス一行は、久々に大成功と呼べる成果を抱えて拠点へ帰還した。木材の束、イノシシ型モンスターの解体肉、薬草、火打ち石。

 久しぶりに、拠点のロビーには生活の匂いが戻った。


「今日は……ほんと、上手くいったな」


 レンが背伸びをしながら言うと、ベリーが小さく笑った。


「うん。もう、こうやって普通に帰ってこられる日が来ないかと思ってた」


 しかし、楽観できるほど状況は甘くはない。応急処置的に壊れた壁を立て直し、窓を塞ぎ、ささやかな火を囲んで食事をとった一行は、自然と円を作って座り込む。


 最初に口を開いたのは、ベリーだった。


「……今日みたいな日が続けばいいって、思うわ。でも……バロン達が、またスカルドラゴンみたいなのを連れてきたら……それこそ終わりだよ」


 その言葉の重さに、誰も否定できなかった。

 ミサトは腕を組み、静かに頷く。


「確かに……あんなの、もう一度来られたら流石にきついね」


「となれば、結論はひとつだろ」


 グレンデルが地面に突き立てた斧の柄を握りしめる。


「……早く叩くしかない。アイツが準備を整える前に」


 コルトは不安げに指先をいじりながら、震えた声で言う。


「あ、あの……大神殿って、本当に、行けるんですか……?」


「行くしかないんだよ」


 冬吾が短く、だが覚悟のこもった声で言った。


「もう逃げ場はねぇ。なら先に潰す。それだけだ」


 沈黙が落ちた。しかし、その沈黙は恐怖ではなく、決意を固める時間だった。


 その夜、一行は見張りを交代しながら、久しぶりにまともな睡眠をとった。いつまた、バロンの気まぐれが襲いかかってくるかわからない。眠りは浅く、夢見は悪い。それでも明日を生きるために眠った。


 そして翌朝。


 夜明けの薄光が大地を照らすと同時に、レゾナンス七名は立ち上がった。


「行こう」


 ベリーが先頭に立つ。


「中央金大区画、大神殿へ」


 ミサトが剣を背負い直す。


「バロンを……倒すために」


 ネロが短く頷いた。


 七つの影が、崩れた大地を踏みしめながら、中央の巨大区画へ向かう。そこには、バロンと、彼の中に潜むリサージュがいる。


 すべてを終わらせるための旅が、いま始まった。


 道中は、不穏なほど静かだった。やがて特に問題もなく、一行は中央金大区画へとたどり着いた。


 中央金大区画その最奥にそびえる大神殿は、まるで金属と骨で組まれた巨大な墓標のようだった。扉は開きっぱなしで、内部は濃い瘴気が渦巻いている。


「……行くわよ、みんな」


 ベリーの声に、一行は頷き、覚悟を決めて武器を握る。そして七人は慎重に足を踏み入れた。


 次の瞬間、祭壇の前に立つ影が、ゆっくりと振り返る。


 枯れた皮膚。紫紺のローブ。無数の死霊石をぶら下げた杖。


 上位モンスター・ネクロマンサー。


「……リサージュ様の、敵だな?」


 しわがれた声が響いた瞬間、黒い霧が沸き上がり、床から無数の死霊兵が這い出してくる。


「来るぞっ!」


 レンが身構えるより早く、死霊達が群れをなして突撃した。ミサトが剣を振り抜き、グレンデルが大斧を振り下ろす。ネロとベリーは背後から援護し、白い光が連続して死霊の頭蓋を弾く。


 混戦の中、冬吾はふと気づく。


「……あれ? 俺、狙われてねぇ?」


 死霊達は冬吾のすぐそばを通り抜け、他のメンバーへ向かっていく。

 足元を見る。その脚には、この世界に来た時に引いた、新規ボーナス UR装備10連ガチャから出た、死霊使いの脚絆。


(死霊に気づかれない……死霊属性からの敵対値が低いってわけか)


 冬吾は静かに息を潜め、気配を殺しながらネクロマンサーへと忍び寄った。


 あと少し、あと一歩、コイツを落とせば全てが止まる。


 だが、気づかれた。


「そこかァッ!」


 ネクロマンサーの杖から、白青の雷撃が閃いた。

 逃げられない距離。


「……行くしか、ねぇだろっ!」


 冬吾は歯を食いしばり、雷撃をまともに胸で受けながら突っ込んだ。

 皮膚が焼け、視界が白く染まる。

 しかし足は止まらない。


 悪魔殺しのナイフが、冬吾の背中の反動と共に、ネクロマンサーの腹へ深々と突き立てられた。


「ぐ、ぶ……が……ッ……!」


 悪魔属性の本体が裂かれ、ネクロマンサーは崩れ落ちる。呼び出されていた死霊達は主を失い、一斉に黒い砂となって消えた。


「冬吾さんッ!!」


 コルトが駆け寄り、急いで治癒魔法をかける。光が冬吾の焦げた皮膚をじわりと繕っていく。


「おまえ……!」


 ミサトが駆けつけるや否や、怒り混じりの声で叫んだ。


「その雷龍の手甲がなければ、確実に死んでいたぞ!」


 冬吾は焼け焦げた手袋を見下ろし、薄く笑った。


「……ああ。……俺の装備が、たまたま刺さっただけだな」


 生き延びた実感が遅れて胸に湧く。

 しかしまだ、大神殿の奥にはバロンがいる。

 これしきで立ち止まっていられなかった。

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