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サンドボックスウォーズ「44サーバー編」  作者: 黒瀬雷牙
第三章 レゾナンスの物語

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第十五話 戦えるパーティ

 ブライトとロイドが加入し、レゾナンスは六人になった。

 洞窟の奥へ進むほど湿気は濃くなり、青光の鉱石は紫がかった色に変わっていく。


「……空気が違うな。モンスターも強くなるぞ」


 ブライトが槍の石突を軽く床に当てながらつぶやく。冬吾がナイフを構え、前列に並んだ。


「いままで前衛は俺一人だったが……今日は心強いな」


「任せろよ。槍は集団戦でこそ輝くんだ」


 ブライトが口角を上げる。

 その後方には、弓を構えたロイドが静かに立っている。その眼差しは常に冷静で、すでに次の敵を見据えているようだった。


 クラウドが全体を見渡しながら言う。


「前衛は冬吾さんとブライトさん。後衛は僕とベリーさん、ロイドさん。そしてコルトさんは補助魔法。……理想的な構成になりました」


 ベリーは頷き、手のひらに火花を灯す。


(これなら……本当に戦えるパーティだ)


 その時だった。


 ──ズズズッ……!!


 地面が揺れ、洞窟の奥の暗闇から、巨大な影が三つ、這い出してきた。


「洞窟リザード三体! 気をつけて!」


 冬吾が前へ飛び出し、二体の注意を引く。

 残る一体はブライトへ一直線。


「来いよ!」


 ブライトは低く構え、突撃してきたリザードの喉元へ、刃のように槍を突き上げた。


 ──ズバッ!


 すさまじい貫通音。

 リザードが悲鳴を上げる前に動きが止まった。


「早っ……!」


 ベリーが思わず声を漏らす。


「これが槍の迎撃ってやつさ。ついでだ──」


 ブライトは槍を引き抜き、柄の端で地面を強く突く。石突の衝撃で、周囲の砂利が爆ぜてリザードの足を止めた。


 その瞬間──


「ロイドさん!」


「言われるまでもない」


 低い声が重なった。


 ロイドの弓がしなる。

 三本の矢を指に挟み、一度に放つ。


 ──シュバババッ!


 三本の矢がそれぞれ別のリザードの急所へ吸い込まれた。

 一体は目、もう一体は喉、そして最後の一体は腹部を正確に貫通。


「……全部急所に?」


「年季だけはあるんでね」


 ロイドが矢をつがえたまま軽く笑う。


 ブライトの槍からこぼれた血が地面に落ちる頃には、すでに三体のリザードは動かなくなっていた。


「二人とも……すごい……!」


 コルトが目を丸くする。

 ベリーも同じ気持ちだった。


(この二人が入っただけで、前衛と後衛が戦術の形になってる)


「クラウドさん、後衛も準備万端よ」


「はい! 土壁、防御展開します!」


「フレイム・ショット!」


 ベリーの火弾が障害物をすり抜け、逃げかけた残党リザードを焼き切った。

 クラウドの土壁が味方の後衛を守り、ロイドの射線を固定する。


 冬吾とブライトは壁のように敵を封じ、

 コルトは彼らに補助魔法をかけていく。


「スピードアップ……! 冬吾さん、ブライトさん!」


「助かる!」


「いい補助だ!」


 洞窟の奥へ進むほど、連携は滑らかになっていった。六人が六人とも戦い方を理解し、噛み合い始めていた。


(これなら……私たちは生き残れるかもしれない!)


 ベリーは心の奥でそう感じた。


 さらに奥へ進むと、大きな広間に出た。

 中央には、黒い石でできた祭壇、その上に宝箱がひとつ。


「……罠の気配はない。開けてみるか?」


 ブライトが槍で周囲を軽く叩き、ロイドが矢で天井を確認する。


 クラウドが慎重に手を伸ばした。


 ──カチリ。


 蓋が自動的に開く。

 中には金色の光をまとった一本の杖が横たわっていた。


「これは……!」


 ベリーが息を呑む。


「賢者の杖……! 上位レア装備よ!」


 クラウドがうなずく。


「魔力の増幅、詠唱速度の短縮、補助魔法の効果延長……コルトさんに最適です!」


「えっ、わ、わたしに……!?」


 コルトが、杖を抱えるようにそっと持ち上げる。

 手にした瞬間、杖が彼女の魔力量を読み取ったのか、淡い光が彼女の全身を包んだ。


「コルトさん……すごく似合ってますよ」


「……ありがと……!」


 その笑顔は、これまででいちばん自信に満ちていた。


「よし、帰還しよう。今日の収穫は大きい」


 冬吾が剣を背負い直す。

 ブライトもロイドも満足げに頷いた。


 六人の影が青い光の中を進む。


 新しい仲間。

 強くなった仲間。

 新しい装備。


 絶望の数字「生存者26人」が重くのしかかる世界で


 レゾナンスは、確実に力をつけ始めていた。


 洞窟ダンジョンを脱出した六人は、沈みかけの夕日を背に拠点へ戻ってきた。

 荷物は重い。だが、その重さが妙に心地よかった。


「……今日、めっちゃ集まったな」


 冬吾が背負い袋を下ろしながら呟く。袋の口からは鉄鉱石、魔石、凝縮岩などがぎっしりと光っている。


「ふふ。こんなに石を持ち歩いたの、さすがに初めてです……」


 コルトは賢者の杖を抱えたまま、どこか夢の中のような表情をしていた。


 その杖は、宝箱の中に眠っていた古代装飾のロッド。魔力の伝導率が桁違いで、コルトが握った瞬間、周囲の空気が震えたほどだ。


「コルトさん、さっきのバフ……すごかったですよね」


 ロイドが感心したように言う。


「はい……自分でもびっくりしました……。魔力が流れ込んでくる感覚が全然ちがって……」


「賢者の杖ってのは、補助特化には最高峰の装備だ。お前さんとは相性抜群だな」

 ブライトが槍を肩に担ぎながら笑う。


 クラウドも満足げに頷いた。


「みんな、本当にお疲れさま。素材も十分すぎるほど集まったし、今日から一気に拠点を強化します」


 ベリーは荷物を下ろしながら、ふと周囲を見回した。

 かつて寂しかったロビーも、今は六人の声でざわめいている。


(……なんだか、ギルドって感じがしてきた)


 そんなベリーの胸の高鳴りに応えるように、クラウドが手を叩いた。


「では作戦開始。みんな、ボックスの素材を全部ここに出して!」


 テーブルいっぱいに積み上がった鉱石と石材。

 光沢を帯びた鉄鉱石の塊は武具にも使えるし、魔力の宿る魔石は防壁の結界強化にも利用できる。


「クラウド、壁ってどのくらい強化できそうだ?」


 冬吾が聞くと、クラウドはにやりと笑った。


「城レベルでいけます」


「し……城ですか!?」


 コルトが思わず声を上げる。


「素材が足りなくて無理だった箇所も、今日の分で全部作れる。土魔法で基礎を固めて、石材で二重の壁を作る。さらに魔石で結界の核を作れば、並の魔獣やプレイヤーじゃ突破できません」


 ロイドが感心したように首を傾げる。


「クラウドって、守りの専門家って感じだな……」


「え、えへへ……。守るほうなら得意なんですよ」


「いや、今日の探索でわかったんだけどさ」


 ベリーが声を上げる。


「守りだけじゃなくて、攻めもできるパーティになってきたのよ。冬吾とブライトの前衛、私とクラウドの中距離、ロイドの遠距離、コルトの補助、こんなにバランス良くなったの、初めて」


 冬吾も同意するように腕を組んだ。


「これで……バロンが来たとしても、ただ逃げ回るだけにはならねぇはずだ」


「……うん。守りつつ、鍛えつつ、ちゃんと戦えるギルドになる」


 ベリーは静かに言った。


 そこからの作業は、まさに職人集団だった。


 クラウドが大地を隆起させ、基礎を固め、

 ブライトと冬吾が巨大な岩塊を設置し、

 ロイドは高所から周囲の警戒を行い、

 ベリーは炎魔法で金属を溶接するかのように接合し、

 コルトは支援魔法で全員のスタミナを底上げした。


 数時間後――


「……できた……!」


 拠点の周囲には、巨大な石造りの防壁が立ち上がっていた。その中央にそびえるのは、石と土で固めた砦の塔。


「……おお……」


 冬吾が息を呑む。


「すごい……これ、ほんとに一日で……?」


 コルトが目を丸くする。


 まるで、荒野に突然城が生えたようだった。


「これでも、まだ序章です」


 クラウドが胸を張った。


「ここから内装を整えて、監視塔、射撃台、訓練場を作って……。必ず、全ての生存者の要塞に仕上げます」


 その言葉が、全員の胸を熱くした。


(……守るだけじゃない。戦うための城だ)


 ベリーはそっと拳を握った。


 こうしてレゾナンスは、この日、44サーバー最大の砦を作り上げたのだった。

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