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サンドボックスウォーズ「44サーバー編」  作者: 黒瀬雷牙
第二章 獅子王軍の物語

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第十二話 袋のねずみ

 その日の夕刻。

 獅子王軍の拠点は、妙に静まり返っていた。


 バロンは玉座の上へ腰を下ろし、嫌な胸騒ぎに押されるようにメニューを開く。


「……ランキングを確認するか」


 44サーバーの勢力ランキング。

 バロンは画面をゆっくりスクロールさせ、途中で指を止めた。


「……は?」


 サーバー総合力ランキング


 32位、そこに並ぶ13名の総合力0。

 その中に、ガッデムとレウスの名前。さらにその下、護衛担当の部下二名の名前。


 まったく同じ時間帯に、一斉に死んでいる。


「……何があった?」


 バロンの首筋を冷たい汗が伝う。

 四天王級が二人まとめて死ぬなどあり得ない。

 その周囲の部下もセットで消えている。


「ボスモンスター……か?」


 この区画に、四天王クラスをまとめて葬るボスなどいない。だが、タイミングが揃いすぎている。


 バロンは歯ぎしりし、腕を組んだ。


「なら、ラウドとエースはどうした? まだ戻らんのか?」


 本来なら、とっくに食料・素材集めから帰還しているはずの二人。

 しかし、戻らない。連絡もない。


 胸騒ぎが、ついに形を持ちはじめた。


「……裏切り、か?」


 ラウドとエース。

 従順に見えて、他の四天王のような私利私欲で動くタイプではなかった。


 もし――誰かと結託していたのだとしたら?


「ふざけんな……俺の軍を相手に、裏切りだと?」


 その時、拠点外から複数の叫び声が上がった。


「ギャァァァ!!」

「モ、モンスターだ!! いや、人間!? た、助けて――!」


 バロンは勢いよく立ち上がる。


「何事だ!!」


 外はいつもと違う空気。

 張り詰め、重く、濁っている。


 四天王の半数が死亡。

 残る二名は行方不明。

 部下も灰色。

 そして今、拠点を取り囲むように攻撃が始まっている。


 バロンは舌打ちし、怒声をあげた。


「全員警戒態勢だ! 敵は近いぞ!!」


 咆哮が響く……が。


 実際、拠点内に残っていたのは中年の女性プレイヤー奴隷が一人だけ。

 他のメンバーは死亡するか、バロンを見捨て逃げ去り、もう誰もいなかった。


 夜。

 焚き火のパチパチと弾ける音が静かに森へ広がる。

 この世界から抜け出しませんか?ギルドの臨時キャンプ。コンドルは通信端末を開き、レゾナンスのギルドマスター・クラウドへ連絡を入れた。


『……コンドルさん、どうかしましたか?』


「近況だ。予定より早いが……今日で獅子王軍は終わる」


 クラウドの後ろで、冬吾、ベリー、コルトの三人が息をのむ。


「エースがガッデムを討った。ラウドがレウスを処理した。中層区画にはバロンひとり。もう終わりだ」


『エースさん……前に話してくださった潜入者の方ですね』


「あぁ。最初からバロンの王制を壊すために潜り込んでいた。そして四天王のラウドがこちらについた。ここまで来れば決着は早い。明日から世界は平和になる」


 冬吾は胸の奥から深い息を吐いた。


「……よかった……」


 ベリーは胸に手を当て、微笑む。


「もう……誰も苦しまずに済むんですね」


 コルトの横で、冬吾が静かに頷く。


「そうだな…」


 久しぶりに、穏やかな空気がレゾナンスへ戻ってきた。クラウドが通信越しに言う。


『明日になれば、44サーバーは大きく変わるでしょう。……コンドルさん、あなたとなら平和な世界で協力し合える。そう思っています』


「もちろんだ。戦うためじゃなく、生きるために手を取り合いたい」


 二人のギルマスが、静かに頷き合う。

 通信が切れ、焚き火だけが音を立てた。


 獅子王軍の本拠地・中央金大区画。

 そこは、異様な静けさに包まれていた。


 外縁部から、ずるり……ずるり……と何かを引きずる音がする。

 森から徘徊する魔物たち、迷い込んだ獣、沼の主までもが拠点へ流れ込んでいた。


「……チッ、なんなんだこれは……!」


 明らかに、誰かが誘導している。


 中央金大区画のビル屋上。

 そこにはエース、ラウド、離反組の部下たち。

 そして この世界から抜け出しませんか?ギルドの精鋭部隊が勢揃いしていた。


「配置につけ。モンスター群がバロンを締め出したら、突入する」


 ラウドの号令に、仲間たちが一斉に動く。


 エースは静かにバロンの本陣を見下ろした。

 瞳には氷のような決意。


「……ここまで来た。後は、俺がケリを付ける」


 一方その頃、バロンは吠え続けていた。


「モンスターだと!? 誰か誘導してるのか!?エース……ラウド……どこへ行きやがった!!」


 怒りの声はむなしく反響するだけ。

 兵はおらず、四天王の半数は死亡。

指揮系統は崩壊。


 完全な袋のねずみ。


 バロンだけがまだ気付いていない。

 これは偶然の不運ではない。


 独裁者バロンに向けた、総攻撃の始まりなのだということに。

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