44サーバーの噂
話題沸騰中のソシャゲ、サンドボックスウォーズ。
通称・SBW。
全国で数百万人がプレイし、SNSでは毎日のようにスクショと攻略情報が飛び交っている。だが、その裏側、開発チームのオフィスでは、歓声とは真逆の悲鳴が渦巻く日々だ。
開発の柱のひとり、海堂も例外ではない。今日もモニターに向かいながら、冷めたコーヒーをすすっていた。
「……あれ?44サーバー、ログインできねぇな」
眉をひそめた海堂は、デスクの向こうに声をかける。
「おい、東下!松芝!いまちょっといいか?」
呼ばれた後輩2人が椅子を転がしてやってきた。
「先輩、どうしたんすか?」
「44サーバーが開けん。お前ら、調べてみてくれ」
「了解っす」
東下と松芝は社内でも指折りのプログラマーだ。だが数分後には、2人して同じ顔をしていた。
「……先輩。これ、存在してないんじゃないすか?」
「は? バグってことか?」
「バグっていうか……そもそも44サーバーの記述自体が見当たらないっすね」
「掲示板でも騒がれてますよ。44サーバー存在してなくね?って」
松芝がスマホの画面を海堂に突き出す。
「呪いのサーバーらしいぞ」
「ログインした奴、データ全部飛んだらしい」
「入ったら最後、戻ってこれない」
そんな怪談めいた書き込みがずらりと並んでいた。
「呪いのサーバーだと? すぐこういうこと言う奴、いるよなぁ……」
海堂は乾いた笑いを漏らす。
「すよね。そんな都市伝説、あるわけないっての」
「本当ですよ。僕たちが作ったゲームに、適当な難癖つけやがって」
「まぁ、ユーザーなんてそんなもんだ」
海堂は肩をすくめ、画面から視線をそらした。
――だが、このとき彼らは知る由もなかった。
44サーバーは確かに存在していた。
そして、その内部にはすでに、44名のプレイヤーが迷い込み、帰還不能となっているという事実を……




