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星宮家の恋軌跡  作者: 菜乃音
第二章

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83 星の間に線を引いて、描いて、繋げて

 この日のお昼ご飯休憩。

 連は優矢と共に、困惑して開いた口が塞がらなかった。


 お昼ご飯を久しぶりに開けた場所……学校の中庭で食べることになったのだが、目の前には希朝と結、そして希夜が居るからだ。


 希朝と結が居るのは理解できるとしても、希夜まで混ざるのは話が別だろう。


「なあ、連?」

「多分、僕も同じ考えかな」


 結は希夜を見るなり可愛がっており、明らかに前から交流があったのだと一目見て理解できてしまうほどだ。


 中庭なのもあって、周りには学年や中高を問わずに人がいるのだが、視線があからさまに五人で囲っているこのレジャーシートに向いている。


 優矢は間を置いてから、すっと希朝と希夜の方を指さした。


「一緒に食べるとは言ったけどさ、どうして星の子が二人も揃ってるんだよ!? あれか、俺は幻でも見てるのか、それとも過労で夢でも見てるのか??」

「それは言いすぎじゃないかな?」


 幻影という思考から抜けていないのは、優矢がそれほどまでに困惑している証拠だろう。

 優矢ほどではないが、連も希朝からは一緒に食べる話しか聞いていないので、希夜が居ることは意外なのだが。


 指さしている優矢を見て「指をさすのは世間知らず」と結が言いながら希夜を可愛がっているので、希夜はにんまりとした笑みを浮かべている。


 希朝は流石に収集が付かないと判断したようで、軽く息を吐いてから注目を集めてきた。


「改めて紹介させていただきますね」


 改めてと前置きをするあたり、希朝は明らかに狙っているだろう。

 周りには聞き耳を立てている生徒。

 そして希朝の目の前には、以前から関係のある連と希夜、結と優矢がいるのだ。


 改めての言葉が意味するのは勘がいい人ならば、真意に辿り着くのは容易だろう。


「私と同じく星の子と呼ばれているこの子は、私の妹、星宮希夜です」


 知っていたので優矢と同じく反応はあまりしなかった。だが、周りからは驚きの声が各所で上がっていた。


 明らかに盗み聞きをしている証明だ。

 盗み聞きをされているとはいえ、希朝はそれすらも織り込み済みで、希夜が妹であることを明かしたのだろう。


 星の子が姉妹説の噂は以前から聞いていたが、ここまで本人たちが明確にするのは大きな進捗と言えるはずだ。


 結が希夜を可愛がっているのを見て人によっては、いつから交流があったのか、とドアをノックする人も短期間限定で増えるだろう。

 困惑を誤魔化すためか、優矢が手を広げながら前髪を掻き揚げていた。


「連はともかくさ。星の子が姉妹では無い、みたいな感じに隠してたのに、人が聞く前で話してよかったのか?」


 優矢がそう言いながら周囲に視線を向けると、あからさまに視線を外しているのが目に見えた。とはいえ、優矢の事を見ていた人からは歓喜の声が上がっているのだが。


 ふと気づけば、希朝は紙コップに水筒から麦茶を注いでいた。


「別に秘密にしていたわけでも、隠していた訳でもありません。たまたま星の子の異名をきぃちゃんと同じく持っていただけですから」


 言い切ってはいるが、まるで牽制をするように星の子の笑みを周りに振りまく希朝は、平穏からかけ離れてきたから慣れているのだろう。


 連としては、何気に希朝と居る自分にも視線が集まっているので胃が痛くなりそうなのだが。


 登下校を一緒にしているとはいえ、ここまで距離が縮まると話は別なのだから。


「星の子……うぅうん。希朝ときよよ、近づいてきたみたい」

「まるで、水槽のガラスから魚を見ていたのに、って感じだよな」

「あら、世間知らずもたまには良いこと言えるのね」

「一言余計だ」

「ふふ、二人は仲がいいですね」

「まったくだよ。そうだ、はい、希朝さん。それと希夜ちゃんも」


 今日は希朝と希夜の分のお弁当も連が持っていたので、持ってきたバッグから取り出してお弁当箱を二人に手渡した。


 手渡した瞬間、どよめきの声が上がったのは聞かなかったことにした方がいいだろう。

 反応ばかりしていれば、お昼ご飯を食べる時間は無くなってしまうのだから。


「連さん、ありがとうございます」

「連にぃ、ありがとうやんねぇ」

「こりゃあ、ヒーローインタビューは待ったなしだな」

「久しぶりに聞いたよ、それ」


 やれやれ、と言いたげな様子で袋いっぱいに入ったメロンパンを取り出す優矢は、語るも無駄なほどの偏食家だ。


 苦笑しながらメロンパンにかじりつこうとしている優矢に、連はバッグから取り出したもう一つのタッパを向けた。


「連?」

「巻き込んだから、そのお礼も兼ねて」

「お前、俺は心から良い親友を持ったもんだぜ」


 優矢はタッパの蓋を開けるなり、好きなおかずが入っていたようで喜びの声を上げていた。

 拳を引き寄せてガッツポーズされるのは、見ているこちらも恥ずかしいものだ。

 優矢が好きなものは粗方理解しているので、少しサービスをしたおかずにした程度なのだから。


 その時、結が希朝と希夜を見てから、優矢のおかずを見て羨ましそうな視線を向けてきていた。


「えー、希朝がベタ褒めするほどのおかず……私も機会があったら食べてみたい」

「そうだ。少ないかもだけど、紡木さんの分もあるんだ」


 もし結が羨ましがった時ように作っておいた、おかずの入ったタッパを取り出した。


 結の好みまでは流石に不明だったのもあり、希朝に了承を得たうえで、結が自身のお弁当と合わせても苦にならない程度のおかずを同じもので用意しておいたのだ。


 連がタッパを結に渡すと、結は少し困惑こそ見せたが、感謝を口にして受け取った。


「天夜さん、ありがとう」

「用意しておいてよかった。温めなおしても大丈夫だから、好きな時に食べてくれれば嬉しいかな」

「おいおい、なんでそこまで用意周到なんだよ!? おかずを貰うかも分からないのに準備をするとか!」

「連にぃは優しいから、仕方ないやんねぇ」

「なるほど優しいから……いやいや、優しさだけで地球は回らんぞ!?」

「人の間にあるものは回るやんねぇ」


 希夜は悟りでも開いたかのように、両手を胸元に寄せて水面すら揺らさぬ微笑みを浮かべている。


「こら、きぃちゃん」


 希朝が静止をかけたのを見るに、希夜と優矢のやり取りが長引くと知ったのだろう。

 優矢と希夜は性格こそ違うが、偏食家という面ではお互いに話が通じるものがあるらしく、その場のノリで話を合わせることが出来るらしい。


 連が苦笑しつつ自分のお弁当箱を出すと、希朝が隣に紙コップを置いてきた。


「希朝さん、ありがとう」

「わ、私も助かって……いますので……」


 笑みを返したのだが、希朝は頬を赤くして目を逸らしていた。


「天夜さん、天然型の希朝キラー」

「これは連が大変になりそうだな」

「そうね」

「……希朝さん、大丈夫?」

「な、なんでもありませんから。早くお昼ご飯を食べましょう」


 連は希夜からおかずを変更と称した略奪されている中、動揺した様子の希朝に首をかしげるしかなかった。

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