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星宮家の恋軌跡  作者: 菜乃音
第二章

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82 煌めきを見せ始める星の子

「なあ、連」


 優矢はどこか切羽詰まった様子で言葉を口にしていた。

 希朝の誕生日が明けた翌日、連は普段通りに学校に来ている。

 来ているのだが、優矢からすれば別問題なのだろう。


 連の頭をわしゃっと掴んでぎゅっと寄せる優矢は、世間知らずの横暴さが表に出ているようだ。


「なんで星の子……希朝さんとあいつが会話に混ざってんだ!?」

「……あはは、どうしてだろうねー」


 連は乾いた笑いを返すしかなかった。


 教室でいつも通り朝の準備を終えて優矢と駄弁っていたのだが、今日は人数が多い。

 多いというよりも、二人増えている。


 現在、希朝と結が連の机の近くに来ているのだ。

 近くに来ているではなく、会話に混ざってきたが正しいのだが。


 唐突な行動だったのもあり、連としても困惑しかないのも事実だ。


 希朝が結を連れて話に混ざってきているので、クラスメイトが珍しいものを見るような目で見てくる。


「連さん、高橋さん、どうかしましたか?」

「どうしたもこうしたも、靴下も――」

「世間知らず? まさか、希朝を除け者にしようと? そこまで世間知らず何て、ことはないでしょうね?」


 結が優矢を世間知らず呼びするのは、もはや日常なのだろう。

 優矢に対して牽制をしてきたのもあり、結は優矢の扱い方を完全に知っていると言える。


 実際、優矢と結を傍から見ている同級生の間では、疑似でこぼこカップル、とまで呼ばれる程に仲がいいように見えているらしいのだから。


 優矢が助け舟を求めるように視線を向けてきたが、連は静かに首を横に振った。


「……騒がしいのが増えたかな」

「あら、連さんもお仲間になってもいいのでは?」

「わざと?」

「あら、なんのことでしょうか?」


 二人を見て微笑む希朝は、一体何を考えているのだろうか。

 とはいえ以前、ゴールデンウィーク後の計画を企てているのは聞いていたので、この一歩が始まりなのかもしれない。


 始まりだけ、で済めば楽な話なのだが。


 変わりつつある学校の日常に、希朝の微笑みが見えた時、視界に差し込んだ光が命の煌めきを伝えた。



「希朝さん、聞いてもいいかな?」


 自宅のリビングで二人きりになったのを良いことに、連は話を切り出した。

 希朝は希夜が走りから帰ってきた時に補給できる飲み物を用意していたようで、冷蔵庫を閉めてから首をかしげていた。


「どうしたのですか?」


 隣の座布団に座ってくる希朝は、じりじりと顔の距離を詰めてくる。

 普段と違う距離感なのもあり、気を抜いたら瞳の奥に吸い込まれてしまいそうだ。


「どうして会話に混ざってくるような真似を急にしたのかなって」

「……嫌、でしたか……」


 陰りを見せる希朝に、連は全力で首を横に振った。

 優矢との日常会話に混ざってくるのが嫌というのは、まずありえない話だ。


 優矢がどう思うかは不明だ。だが、彼自身も距離を全力で詰めさせよう計画を模索しているらしいので、撒き餌としては十分に舞台が整ってしまった方だろう。


 連自身、どちらかといえば別の問題を危惧している。


「そういうわけじゃなくて。その、星の子で遠いような感じだったのに、いきなり変化して不自然じゃないのかなって」


 前にも同じような会話をしたが、今回は意味が違ってくる。

 前回はただの世間話で合わせるような感じだったが、今回に関してはグループに加わるような形だったのだから。


 希朝が周りの目に慣れているとはいえ、連は同じ土俵に立てていないのだ。

 何かあれば守ればいい、という思考こそしているが、下手に芝居を打つような真似はしたくないだろう。


 ふと気づけば、希朝は連の疑問がおかしかったのか、口元を軽く隠して苦笑していた。


「やはり、連さんは近くにいるからこそ、変化には気づいていなかったみたいですね」


 顔の距離感をいつもと同じに戻した希朝は、今までアピールしていたのだろう。


 近くにいるから気づけない、なぞなぞを展開する希朝に連は悩むしかなかった。


「実際、連さんと高橋さん以外は違和感に気付いていたみたいですよ?」

「……優矢すら気づいていないって、よっぽどなんじゃ? あのさ、今までの変化ってなんだったの?」

「連さん、窓の一件ありましたよね?」


 窓の、と言われれば、教室に飛び込んできたボールが希朝に直撃しそうになった話だろう。

 頷くと、これでも気づきませんか、と言いたげに希朝はほのかに肩を落としていた。


「連さんが私を守ってくれたのはよかったのですが……その後、私ときぃちゃんが一緒に保健室に行ったのもありますが、その時点で噂の矢は立っていたのですよ」

「……心当たりしかない」


 優矢も触れてこそこなかったが、連が希朝と暮らしている、というのを知らなければ不自然に思ったはずだ。


 連のことを婿入りだ、という話を希朝が広めていないので、周りからしてみれば不自然極まりなかっただろう。


「そんなこともあって、噂を噂で隠していたのをやめたのですよ」

「そうだったんだ。僕も迂闊だったよ……でも、希朝さんでよかった」

「そ、そういうのをさり気なく言えるのは連さんの良いところですが、悪いところでもあります」


 なぜか恥ずかしそうに目を逸らす希朝。

 連が首をかしげたところで、希朝は答えを教えてくれるわけもないのだが。


 ふと気づけば、呼吸を整えた希朝が静かに微笑んでいた。


「変化はまだまだあります。……連さんは、全て気づけますか?」

「希朝さんの、変化……」

「ただいまやんねぇ」

「ふふ、成長しているのは連さんだけじゃないのですよ。きぃちゃんが帰ってきましたし、話はまた今度ですね」


 変わらない変化は、希朝が希夜を優先していることくらいだろう。

 それ以外は確かに変わっているのかもしれない。ただ、お互いに変わって、お互いに近づいて気づけないだけで。

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