表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星宮家の恋軌跡  作者: 菜乃音
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/75

71 朝焼けの天使と小悪魔

 まだ日が差し込まない時間の中、まどろむ意識に目を開いた。

 カーテンを閉めているが、隙間から差し込む色合いで朝焼けだと理解できる。


 光を掴むように、ぼんやりとしていた視界が輪郭を取り戻していった時、ある光景を焼き付けさせてきた。


 思わず目を見開かせるほどに。


 隣には腕を回してぎゅっと寄せていた……一緒に眠りについた希朝が、心地よさそうにしている。

 零距離ともいえるほどに、希朝と密着して眠ったのもあり、温かな体温が今でも血を通して体を駆け巡っているようだ。


 安らかな希朝の寝顔に微笑ましさを覚えていた、その時だった。


「仲良さそうやんねぇ」

「……え、希夜ちゃん……」


 おっとりとした声が聞こえた方を見ると、希夜が覗くように見てきていた。

 ランニングウェアなので、朝の走りに今から行く予定なのだろう。


 いつから居たの、と聞けば、シーッと人差し指を口元に添え、希朝を起こさないようにと暗示しているようだ。

 気遣う気持ちがあるのなら、朝から人の部屋に忍び込むものではないだろう。


 また忍び込む以前に、なぜ希夜が部屋にいるのかが疑問になる。


 連としては、希夜が勝手に部屋に入ってくる分には構わないのだが、こうも朝から忍び込むようにいると疑問になるというものだ。


「うちの日課、やんねぇ」


 と希夜は言って、心地よさそうに眠っている希朝に手を伸ばした。

 希朝を起こさせないように止めようとしても、止めるための手は動かないでいる。動かないというよりも、むやみに手を動かして希朝を起こす方が気まずいからだ。


 希朝の寝顔を覗き込みながら、小さな手はもっちりとした頬にたどり着いていた。

 そしてソフトタッチで起こさないように、ゆっくりとぷにぷにしている。

 緩やかに揺れる希朝の頬は、見ているこちらの方が熱くなりそうだ。

 昨日の夜の意識が未だに続いているのも原因だが、連想してしまうのは良くないものだろう。


 更には希夜が居るとはいえ、希朝と密着気味なのもあって意識を割くことがほぼ不可能なのだ。


 ある意味で板挟みの状況に、連は思わず息を呑み込んでいた。


 希夜の日課という名の悪戯に連はただ、頬を赤くするしかなかった。

 目の前でふにふにと頬を触られている、希朝の顔を見ながら。


 希夜は少し触って満足したのか、連の方を見てきている。


「連にぃ、黙っててくれてありがとうやんねぇ。じゃっ、うちは走ってくるやんねぇ」

「う、うん。ほの暗いし、気をつけてね」

「分かったやんねぇ」


 希夜はそう言って、足音を立てずに部屋を後にした。


 希夜が部屋を後にしてからというものの、抜けない熱は体中を駆け巡るようだった。


 もう一度眠ろうにも眠れずにいる。

 天井を見て暫くの時が過ぎれば、横から喉を鳴らす甘い声が聞こえてきた。


「うぅぅんん……」

「……希朝さん、起きた?」

「ふぇえへぇ、連しゃぁん……」


 希朝は寝起きなのもあってか、少し寝ぼけているようだ。

 寝ぼけていると思われるが、天使とも思えるほどのとろける笑みを浮かべ、潤いのある瞳で見てくるものだから、連は自然と息を呑み込むしかなかった。


 凛としている希朝も魅力的といえ、こうして無防備……寝起きが無邪気さの塊ともなれば、心が揺らがない理由はないだろう。

 そんな希朝の可愛さに、ついつい手を伸ばそうとした時だった。


「……れ、へっ!? 連さん!?」

「え、あ、うん。おはよう、希朝さん」

「お、おはよう、ございます……わ、私、連さんと一緒に眠ったのでしたね……」


 無断で触れるという名の罪が増える前に、希朝は少し驚いたように目を見開いた。

 朝焼けのほのかな明かりがカーテンの布越しに差し込んでいる中、ピンクの瞳は透き通るような潤いに満ちていた。


 薄暗い中でも、ただ一つの宝石は鮮明に輝いて。


 お互いに同じ掛布団の中で横になっていたのもあって、意識をすると戸惑いは込み上げてくる。

 込み上げてくるのに、気持ちの器は幸せで満たされているようだ。


 ふと気づけば、希朝が胸元に手を当ててきていた。

 温もりのある、自分よりもほっそりとした小さな手を。


「久しぶりに、よく眠れました」

「よかった。僕も、希朝さんと同じ気持ちかも」

「かも、って……。そ、そういえば、希夜ちゃんが訪ねてきたりしましたか?」

「来たけど、どうかしたの?」


 眠っていた希朝の頬に触れていたとは言いにくいので、来たとだけは明言しておく。

 希朝は心当たりがあるのか、妹の変な日課じゃなきゃ、とどうやら頬以外の事を心配しているようだ。


 むしろ眠っている希朝にどんな悪戯を希夜はしているのだろうか。


 心配している希朝には悪いが、少しだけ気を逸らす言葉を口にした。


「希朝さん、約束通り……もう少ししたら、一緒に朝ご飯を作ろうか。瑛人さんと柊凪さんの分もね」

「そうでしたね。でも、もう少しだけ、連さんを感じていたいです」

「……ぼ、僕は、希朝さんの熱を独り占めしたいかな」

「ふふ、私の熱が冷めることはないですから。たんまりどうぞ」


 ぎゅっと体を当ててくるのもあり、朝から心臓に悪いものだ。


 その後、着替える話をした際、女の子の着替えを見てみたかったりするのですか、と希朝に聞かれて顔が熱くなったのはまた別のお話。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ