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星宮家の恋軌跡  作者: 菜乃音
第二章

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61 お昼ご飯は事後処理を添えて

 お昼休憩。いつも通り、連は教室で優矢とお昼ご飯を食べる予定……だった。


 しかし今日のお昼は、希朝と希夜……そして結を合わせた四人で囲っている。


 誰もいない屋上なのは助かっているが、結の前で希夜がいるのは困惑しかないだろう。

 希夜に至っては当たり前のように笑みを浮かべては、目の前のお弁当箱に食べたい欲ある眼を向けているのだから。


 隣でワクワクしている希夜を横目に、連は結の方を見つつ、隣に腰を掛けた希朝に小声で話しかけた。


「希朝さん、希夜ちゃんがいるんだけど……?」

「結は知っていますので、心配しなくても大丈夫ですよ」


 と言って苦笑する希朝に、連は少し安堵した。


 連としては、希夜が、いる理由が判明しただけにすぎないのだ。

 実際のところ、なぜ一緒に食べているのかが謎のままなのだから。


 連は軽く息を吸ってから、目の前にいる結を見た。


「どうして僕は一緒にお昼ご飯を食べることになったの?」

「それは、ですね」


 希朝は少し考えた様子を見せてから、結の方を見ている。

 結の手元にお弁当箱はあるが、一緒に食べるだけ、という様子でないのは確かだ。

 先ほどから結はこちらに、どこか圧のあるような視線を向けているのだから。

 教室の時とは違い、柔らかくなっているだけ良心的になったのかもしれないが。


 希朝が言葉に詰まっているのから察するに、結との話……希朝と結の間では一緒に食べる際に話すと決まっていたのだろう。


 隣では希夜がお弁当箱の蓋をワクワクしながら開けているので、希夜は完全に話を知らないと仮定出来るのだから。


 ふと気づけば、希朝の持つピンクの瞳は光を灯していた。灯る瞳の奥に、連の姿をくっきりと反射させながら。


「連さん、結との一件がありましたよね」

「……あったね」

「結は目を逸らさないでください」


 結が行動に移すと思っていなかったのか、希朝は少々呆れ気味である。


 結との一件に関して言えば、完全にクラスの注目を集める形となってしまった。


 集めるだけの一筋縄ではいかないあたり、星の子、が深く関係しているのかもしれない。

 希朝と希夜が星の子であることに触れる気はなかったが、目を逸らし続けるのにも限度がありそうだ。


 結に対して言っている言葉なのにも関わらず、自然と連の心すらも差している。


 希朝は「説明しますね」と一言置いて、水筒に口をつけて喉を潤していた。


「結に言っておきますね。連さんは名字こそ違いますが、家族です」

「かぞ、く?」

「そうです、家族です。そして、同じ家に住んでいて、私のお婿さんでもあります」

「希朝の、お婿さん!? 同じ屋根の下!?」


 結はこちらを見て、希朝をもう一度見て、沸騰するように顔を赤くしていた。


「じゃあ、希朝のその胸は既に……天夜さんの手で……っ!!」

「何を言っているのですか! 連さんとはそういう関係じゃないですから!」


 結は妄想信者なのか、自分の手を開いては閉じたりをしている。

 どのような妄想をしているのかは不明だが、聞くだけ無駄だろう。


 その胸、と言った時点で話題があっち方面になりそうなので、触らぬ神に祟りなしというものだ。


 希朝が焦ったように否定しているのもあり、思わぬ答えに辿りつかないことを祈るばかりだが。


 その時、希夜は会話に興味がないのか、連のお弁当の中身と、自分のお弁当のおかずを入れ替えていた。

 箸でテキパキと希夜が勝手に入れ替えているのもあり、結の目には止まってしまったようだ。


「おかずを入れ替えてる……本当にどういう関係なの?」

「希夜ちゃん、今は紛らわしくしないで」

「うち、みんなでお昼食べる、って聞いたから来ただけやんねぇ」

「あはは。希夜ちゃん、好きなように変えていいからね」

「連さん?」


 栄養のバランスを考えて作っているので、栄養が偏る心配はそこまで要らない。

 それは今の希朝の状況からすれば、事情を知らない結が見ている前で、という前提条件が無ければ通った話だろう。


 連は希夜の方にお弁当箱を寄せて好きなようにさせつつ、改めて希朝と結の方を見た。


「結、改めて言いますが……紛れもなく連さんは結婚相手で、私が気を許した相手でもあります」


 希朝が結に簡潔に述べているが、驚きを隠せないのは連の方だ。


 連自身、優矢を除いて希朝は一番気が許せる相手であり、落ちつく相手でもある。

 だからこそ希朝の言葉の芯を聞いたことがなかったのもあり、ぼやけていたピースが埋まるように形を露わにしていくもどかしさを感じたのだ。


 結は少し不満なのか、連をじっと見ている。


「星の子の希朝。……天夜さんにはどう見られているの?」


 不意に連は、希朝に視線を向けていた。

 どう見られているのか、と結が聞いた時に、一瞬ではあるが雲が太陽を隠した気がした。


「希朝ねぇ……」


 希夜が心配そうに尋ねたが、希朝から返事はない。


(……紡木さんは希朝さんに聞いているけど……僕は希朝さんを……)


 希朝は希朝だ、と思って連は接してきたし、家族の形を教えてくれた恩人でもある。


 幼い頃に希朝と出会っていなければ、こうして関わることもなく、戒められたまま生きてきた可能性だってあるのだから。


 星の子、なんて噂をこの学校に来てから聞いたが、連にとっては希朝を形づけるものにすらならないのだ。

 それは何よりも、過ごしてきた時間が知る形を教えてくれたから。


「連さんは、そういう人ではありません。私が、誰よりも、知っています」

「希朝。希朝がそういうなら、わたしが警戒する必要はないみたい」

「結には迷惑を掛けましたね」

「迷惑なんかじゃないよ。むしろ、天夜さんがあの変人な高橋さんとしか会話してないのも、わかった気がする」


 希朝の話だったはずだが、飛び火を食らう優矢は相当ヘイトを買っているのではないだろうか。


 ふと気づけば、結がこちらを見てきていた。


「天夜さん、これからはよろしく。でも、わたしは希朝ファーストだから」

「結は明るい性格ですが、空回りするのは玉に傷ですね」

「希朝ひどい!」

「紡木さん、よろしく」


 この後、結に星宮家のことを話しながら、四人で囲ってお昼ご飯を食べた。


 楽しい会話だったのに――希朝の曇った表情が頭から離れなかったのだ。

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