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06 新たな学校生活の始まりと親友

「これから皆さんと過ごさせていただくことになりました……天夜連です。よろしくお願いします」


 新しい学校生活を送る場所となる中高一貫校。

 朝のホームルームの時に、連は自己紹介をした。

 ここが中高一貫校なのもあって、転校生は珍しいのか様々な視線がクラスメイトから飛んでくるのもあり、教卓の前で自己紹介をした連は胃が痛くなりそうだ。


 とはいえ、高校一年生で十月に転校生ともなれば、一つの輪に入るのは不可能に近いだろう。ましてや中高一貫校なのもあり、中学時代から全ては決まっているようなものだ。


 自己紹介を終えた連は、その時はそう思っていた。


 ホームルームを終えると、賑やかにも連の机の周りは男女問わずのクラスメイトに囲まれている。


「天夜さんはどこから来たの?」

「えっと……」

「なあ、天夜は部活に入る予定はあるのか?」

「それは……」


 思った以上の質問の多さに、連はたじろぐしかなかった。


 連が入ったクラスは運が良かったのか、クラスメイトの関係が良い人の集まり会らしく、転校生を迎え入れる事への戸惑いもないようだ。


 質問を答えられずにいると、聞き覚えのある声が聞こえた。


「みんな、すまない。転校生……いや、連のやつが状況を把握できてなくて困ってんだ、少し時間をあげてやってくれないか?」

「……あっ」

優矢(ゆうや)さん、転校生の子を名前呼びとか流石歩くイェス・ユア・筋肉ね」

「そうだな。転校生、一限が終わったら話そうぜ」

「え、あ、うん」

「えー、ずるーい」


 やはりというか、このクラスは男女間の仲がいいらしい。


 クラスメイトが散会する中、一人だけ残った、連を名前呼びした人物に視線を向ける。

 彼は茶髪ショートで、特徴的な藍色の瞳を持つ、程よい筋肉が映える美男だ。

 彼を、座ったまま見上げる連は知っていた。

 知っていたと言うよりも、友達付き合いがほとんどなかった連にとっては知らない理由が無いに等しい存在だろう。


「よっ、久しぶりだな」

「……優矢」

「久しぶりの再会なのに釣れない奴だな?  天夜連の幼馴染こと大親友とはまさに俺、高橋(たかはし)優矢(ゆうや)だ」

「知ってる」


 高橋優矢は、才能や容姿を併せ持っている他人の想いのチャラ男……小学生の時まで一緒だった連の親友だ。

 中学以降は優矢が別の学校に転校したのを機に、連絡すら取り合えない関係だったので、連は優矢が覚えていてくれたことに内心驚いている。


 このこの、と優矢が肘で小突いてくるのもあり、連はそっと手のひらで押さえておく。


「連が転校か……お前、家系は、両親はどうした?」

「……」


 優矢は連の事情をよく知っているからこそ、聞いてきたのだと理解している。

 だけど連としては、希朝の前でも見せてしまったのだが、自身の両親に対する話題は拒否反応の塊だ。


 優矢が世間知らずのチャレンジャーなのを連はよく理解しているので、顔を曇らせるしかなかった。


 顔を曇らせたのを理解してか、優矢は頭を掻いている。


「すまない。迂闊だったな」

「あ、うん。僕もごめん。でも、触れないでもらえると今はありがたいかな」

「お前も大変だよなー」


 何故か優矢に温かな眼差しを向けられているのもあり、連はため息しか出なかった。

 無論、クラスメイトは相変わらず気になるのかチラチラと見ているので、大げさな態度に出さないようにして。


 優矢が連を拒んでいないと思い、話題を自分から振ってみようとした、その時だった。


「あ、星宮さん!」

「えっ、星宮希朝さんがうちらのクラスを覗いてる!」

「星の子が覗きに来るなんて、珍しい!」


 廊下の方から星宮と聞こえたかと思えば、クラスメイトは反応するかのように、ドアの近くから覗いていた希朝の方に視線を向けている。

 希朝の様子から察するに、同じ学校の同級生を理由に連の様子を見に来たのだろう。


 この騒ぎは何事かと思っていると、優矢が肩を小突いてきた。


「連、彼女は星宮希朝さん。この学校じゃ星の子と呼ばれる有名人の一人だ」

「なんで優矢がかっこつけてんの? ……呼ばれる一人?」

「おっ、噂をすればなんとやらってやつだ」


 一人という事に疑問を思った時だった。

 もう片方のドアから「希夜ちゃん、いたいた」と、もう一つの声が上がった。


「あの星の子と呼ばれる二人が同じ時、同じクラスを覗きにだと!?」

「えぇ、やっぱり星の子も転校生が気になるとか?」

「えー、うそうそー、たまたま通りかかったついでとかじゃないの?」


 どうやら希夜に関しても、この学校では二つ名の異名を持っているらしい。


「あの幼い白髪の子は、中学二年生の星宮希夜さんだ。まあ、分かりやすく言えば、星宮さんたちは美少女で高嶺の華で、二人は苗字とピンクの瞳が共通点だから星の子と呼ばれる有名人さんってわけだ」

「……苗字とピンクの瞳が共通点?」


 優矢が言っている情報は、星宮家で暮らし始めた連からすれば不思議でしょうがなかった。

 中高一貫校とはいえ、優矢が下の学生を知らないのは理解できたとしても、有名人である希朝の家族関係が出回っていないのだろうか。


 連自身、朝の時間で希朝と希夜が一緒に登校しているのを見ていないので、学校だけの知らない事情も考慮できる。


 連は自身の今を伏せつつ、話題になっている星の子について触れてみた。


「えっと、優矢は興味あるの? 星の……子?」


 優矢は質問されるとは思っていなかったようで、悩んだように顎に指の関節を当てている。


「そこまでないけど、学生の間には話せる程度にはしたいよな」

「……相変わらず」

「まあ、星宮って苗字なのに姉妹じゃなさそうだし、学校で星の子の二人が話しているのを見たって人は指折り数えるくらいしかいないからな。現実的なところで、希朝さんと話せるようになれば御の字だろうな」


 呆れたように優矢が言うので、星の子と呼ばれる希朝と希夜の学校での関係は、家で見た距離感で無いのは確実だろう。

 ふと顔を上げると、優矢が清々しさを感じさせるほどの顔をして見てきていた。


「お前は何を考えてるのか分かんないけどよ、これからもまたよろしくな」


 またよろしくな、とそんな魔法のような言葉を親友に言ってもらえるだけ、連は頭が上がらなくなりそうだった。

 静かに頷くと、優矢はただただ笑っていた。


「あれだ、過去は気にするなよ? 同じ学校になったんだ、なにか困ったことがあれば俺に頼ってくれよな」

「優矢は変わらないんだね」

「逆にお前は変わった方がいいぞ?」

「……余計なお世話」


 優矢から顔をそむけた時、戻ろうとしていた希朝と目が不意にあってしまって連は気まずくなるのだった。

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