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星宮家の恋軌跡  作者: 菜乃音
第一章

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20 明かす秘密と、増える秘密

「えっと……だから、そういうことで僕は……星宮家でお世話になっていると言うか、居候させてもらっていると言うか……」


 スーパーの帰り際、偶然にも会ってしまった優矢の誤解を解くべく、連は家の和室で優矢に事情を話していた。

 優矢を野放しにしてもよかったのだが、希朝の考えも汲み取って、優矢を星宮家に誘うことになったのだ。


 希朝は変な誤解をされなければよいらしく、連としては安心している。

 優矢は事情を聞いてなのか、軽くしかめっ面をしている。

 腑に落ちない話、という訳ではない筈だが、優矢にとっては突っかかるものがあるのだろう。


「なあ、連。なんで今まで黙っていたんだ?」

「高橋、さん? それは、私が――」

「ごめん、希朝さん。でも、これは僕が黙っていたのも原因だし……何よりも、自分で落とし前をつけさせてほしいかな」


 希朝が庇うために言葉を口にしてくれようとしたが、連は自然と腕を横に出し、そっと首を振っていた。

 希朝に対して抱く気持ちというよりも、前を向いて歩けているのは希朝のおかげだ、と間接的にも伝えたい気持ちが先走ったからだろう。

 優矢との関係も踏まえれば、親友と向き合うのが連自身なのは最善の選択である。


 希朝は連の覚悟を聞いてか「私は静かに聞かせてもらいますね」と笑みを返してくれたのもあり、連は強くうなずいた。


「ひゅー、ナチュラルに名前呼びかよ」

「名前呼びの方が都合いいから」

「都合がいい、か……?」


 まだ何か隠しているんだろう、と言いたげな優矢だが、彼がそこまで踏み込まないのは知っている。


「そうか。――天夜連、親友のお前に聞くけどよ、両親はどうした?」

「りょう、しん……うっ……おえぇ……」


 両親。その刃は鋭利で、静かに体内から嫌悪感なるものを湧き上がらせてくる。

 連が口を手で覆えば、希朝は心配したように背を優しくさすってきた。

 希朝は最初の頃から、両親の話題を連が嫌っているのを知っているからこそ、避けさせるように受け止めてくれたのだろう。

 連という存在が壊れないように。


 落ち着いてくれば、優矢からは呆れた視線を飛ばされている。


「――両親の話題には反応か」


 優矢は知っていた上で鎌をかけてきたのだろう。

 先ほど話をした事情が事実なのか、その為の天秤を傾けるように。

 連がどうにか口から手を離した、その時だった。


「――これ以上、連さんを苦しめるのなら、近づかないでください。高橋さんの方が私よりも彼の事情には詳しいのかもしれませんが、人は痛みだけで成長できる程、強くないのですよ」


 空間が静かに震えている。それなのに、希朝の声は柔くいつものトーンなのに、彼女の出す雰囲気が重みを感じさせてくるようだ。

 希朝が表情一つ変えずに優矢を真剣に見ていると、優矢は頭を下げた。


「すまない。連を苦しめるつもりはなかった。けど、苦しめたのは事実だし、近づかない確約は絶対にできない」

「えっ、あっ……すいません、私もつい熱くなってしまって……どうして、私、連さんのために……」


 希朝はどうして自分が怒ったのか理解できていないようで、戸惑ったように頬に両手を当てている。

 首を振る希朝の髪は無造作に動いているのだが、その仕草にすらも可愛らしさが溢れ出ているようだ。


 戸惑っている希朝を横目に、連は優矢と顔を見合わせ、気づけば笑っていた。


「なるほどな。連の笑顔が増えたのも、彼女のおかげってことか」

「世間知らず、少しは言葉を慎む、って辞書に刻んで」

「おいおい、そんな照れんなよ? 俺まで恥ずかしくなるだろ……愛人との恋の巣にまでご招待されてんだからよ」

「前向きな優矢が羨ましいよ」

「……愛人、恋の、ス……」


 まるで、ボンッ、と沸騰して爆発しそうなくらいに頬を赤くしている希朝は、壊れた機械のように言葉を繰り返している。

 普段は気付かなかったが、希朝は恋や愛関係の言葉には弱いのだろう。


 恥ずかしそうに首を振る希朝を見ていると、ついつい微笑んでしまう。


「星宮希朝さん。今後とも、連を宜しくお願いします。こいつはたまにうじうじするんですが、根は強く良い奴なんです」

「なんで親目線?」

「こ、こちらこそ。連さんにはお世話になっていますし、彼は一歩一歩成長している、勇敢で誠実な方なのは存じております」

「の、希朝さんまで乗らなくていいから!」


 さりげなく板挟みになっていたのもあり、聞いている連の方が恥ずかしくなりそうだった。

 ふと気づけば、希朝は腑に落ちないところがあったのか、優矢を真剣に見ている。


「あの、高橋さん」

「おん?」

「その、私と連さんの関係もですが、この事を学校で言いふらさないでほしいのですが」


 優矢は連を見てから、納得したように希朝を見ている。

 連からすれば、なぜ一回こちらを見たのか、と疑問でしかないのだが。


「俺は人に言いふらすほど育ちが良い奴じゃないぜ。大丈夫だ、そこにいるお婿さんの連が保証してくれる」

「……なんで巻き込むの? でも、希朝さん、優矢は信じても大丈夫だよ。いざとなったら、僕が優矢を、ね?」

「そうしていただけると幸いです」

「なんで俺はついで感覚で杭を刺されるんだよ!?」


 凛としている希朝は、優矢の警戒を解いたとまではいかないが、悪い人ではないと判断してくれたのだろう。

 実際、優矢は世間知らずなチャレンジャーなところはあるが、根は友達想いの善人なのは事実だ。


 その後、優矢は長居したからを理由で帰宅するついでに、勉強を教えてもらいやすくなったと喜んでいた。

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