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第31話 ゴレムジガンテ

 時は少し(さかのぼ)る。



 俺は黒髪美人受付嬢さんを連れて、フレイムラビットを狩った場所に来ていた。


「あの、エクスさん。ここで何を……」


「受付嬢さんは俺の護衛をお願いします。敵が来ないようならメタルドラゴンの動きを教えてください」


「え? 護衛? そんなの必要な……いえ、わかりました!」


 彼女はマジックバッグから剣を取り出してそう言ってくれる。

 ごちゃごちゃ説明を求めない有能な人なんだろう。


 俺はそれを確認して、マジックバッグからブルームバイソンの魔石を取り出す。


「『設計図(ブループリント)』」


 そして、これにできる限りの回路を刻んでいく。

 これだけの大きさであれば様々な効果を刻むことができる。

 ただ、それでも、俺が作ろうとしている物には足りない。


 ならばどうするか。

 繋げればいい。

 ブルームバイソンの魔石はあくまで司令塔としての役割だけを作る。

 人の身体で言うと、心臓から全身に血管を張り巡らせるようにしていくのだ。


 ブルームバイソンの魔石の場所としては、胴体の中でも最も重要な心臓部分にした。

 ブルームバイソン魔石には守るための機能を一切つけないためだ。

 そして、それ以外の各パーツにもこれまでゲットしてきた魔石をふんだんに使っていく。


 頭はアカシアトレントの魔石を使う。

 頭からの視覚情報や、音声情報を受け取りそれを心臓の位置にいる俺まで伝える。

 手足の核は普通のトレント。

 できればアカシアトレントにしたかったが、残念ながらアカシアトレントの魔石は1つしかない。

 核に刻むのはブルームバイソンまでの神経をつなげること、そしてその操作と後は頑丈さだ。

 手だけは開閉すると言った機能も付けるので多少頑丈さは落ちる。

 精密性は上がるが。

 そして大事な心臓を守っている胴体だけも造る。

 手足より動かさない分固い物ができるからだ。


「でも……それだけじゃダメだよな」


 そして、使える魔石を探すとたくさんのフレイムラビットの魔石。


「やっぱりブースターは必須か」


 背中にはハニーキラービーとフレイムラビットの魔石を使ったブースターを作る。

 当然、それの操作もブルームバイソンの核でできるようにしてある。


「これで完成……いや、武器が必要だったな」


 敵はメタルドラゴン。

 ドラゴンへの対策と言えば剣だと相場が決まっているけれど……。


「鉱物を食って固くなっているんなら、ハンマーしかないよな!」


 俺はハンマー用の魔石にいいのはないかと探す。

 しかし、トレントの他はゴブリンとかコボルト程度のものしかない。


「ある物で造るしかないか」


 このままだとトレントで造ることになるが、せめてなにか……。


「これは! サンダーホーンラビットのか!」


 ブルームバイソンを倒した時にちょっと拾っていたのだ。

 これなら属性付与ということでは使えるかもしれない。

 トレントの木に雷ってどうなんだと思うが、ぜいたくは言えない。


 そして、トレントの魔石を連結させ、そこにサンダーホーンラビットの魔石を一つまみ。

 これでハンマーの完成だ。


 タイミングよく、受付嬢さんが叫ぶ。


「エクスさん! そろそろメタルドラゴンがオードリアに近づいています!」


「わかった。離れてくれ」


「え?」


「早く! できるだけ遠くに!」


「わ、わかりました!」


 俺が叫んだら彼女はすぐに離れていく。


「上手くいってくれよ……『土人形製造(クリエイトゴーレム)』!!!」


 『設計図(ブループリント)』に魔力を走らせ、ゴーレムを造りあげていく。

 この一帯はフレイムラビットによってゴーレムの素材としてかなりいい場所だ。

 トレントの魔石でもなんとか造りあげることができた。


 そうしてここら一帯の全ての土を使って30mクラスのゴーレムを造り上げた。

 ただし、今回のゴーレムは俺が乗れるようにしてある。

 外からだとそれだけで回路を使うからだ。

 後は単純に乗りたかったから。


 俺はコックピットの中で、できることを確認する。

 操縦桿を操作すると手や腕は動く。

 足元のペダルでゴーレムも動き出す。

 その他の操作は横についているボタン等で使うこともできる。

 不調なところが発生した際に確認するメーターも正常な数値を示していた。


 俺は軽く歩いたり、走ったり、跳んだりして動けるのか。

 不具合がないかを試していく。


「完璧ではないが、今できる最善は尽くした」


 動きはどこまでできるのかなど試してみたい気持ちはあるが、そんなことを言っていてはオードリアが破壊されつくしてしまう。

 《トレメス》を守るためにも、シーナを助けるためにも今は最低限の試験だけで向かう!


 俺はゴーレム……いや、違う。


「ただのゴーレムとは違う。人が乗って操作する。ゴーレムと人の融合……ゴレムジガンテだ!」


 俺はそう命名したゴレムジガンテを操作し、メタルドラゴンの元へ向かう。


 奴は今地面に転がっていた。

 ただ、明らかに何かためている。

 ドラゴンが貯めるものと言えばブレスだろう。


 奴が吐き出そうとしている方を見ると、そこにはシーナがいた。


「させるか!」


 俺はメタルドラゴンの顔に向かって思い切りドロップキックをかました。


『ゴアアアアアァァァァァァァ!!!???』


 奴の顔から鉱石が飛び散り、顔に残った鉱石もボロボロ落ちていく。


「シーナ! 助けに来たぞ!」


『え、エクスさん!? なんですかそれ!?』


「ゴレムジガンテ! 俺が造った新しいゴーレムでありゴーレムでない物だ!」


『な、なんなんですか……』


 シーナは目を丸くして驚いている。


 ちなみに、視界の端では地面にいるギルドマスターや立派な鎧を着た男が両手を突き上げて叫んでいる。


『いいぞゴレムジガンテ! かっこいいぞ!』


『もっと! もっとその雄姿を見せてくれ!』


 やはり男にはわかる何かがあるらしい。

 それはこっちの世界でも同じだ。


 そうやっている間に、メタルドラゴンはのそりと身体を起こす。


「シーナ! 離れていろ! どうなるかわからん!」


『ありがとうございます! エクスさんも無事に帰ってきてくださいね! 美味しいご飯を準備しますから!』


「……ああ。わかった」


 死亡フラグだな……と思ったけど言わないでおいた。


 それから、俺は奴と格闘戦を始める。

 奴の動きは遅い。

 その強さの保証はその巨体故、なら、それと同じになればただの鈍いトカゲに過ぎない。


 俺は拳で奴の顔を殴り、蹴りつけ、攻撃を重ねていく。

 しかし、奴は何度も何度も立ち上がってくる。


 そして、その立ち上がり様にブレスを放ってきた。


「ぐ!」


 その範囲はかなり広範囲で、俺は両腕を前に交差させて耐える。


 その時間は1分ほど続いたが、なんとか耐えきった。


 しかし……。


「かなりボロボロだな」


 ゴレムジガンテの動作に少し不良が出始めていた。

 各種メーターが危険値を示しているのだ。

 胴体は頑丈なので問題ないが、攻撃に使う手は崩れている個所もある。

 この手で攻撃していては、こちらが先にダメになってしまうかもしれない。


「このままでは……仕方ない。これを使うか」


 試験をする時間はなかった。

 だが、このまま格闘戦では奴の耐久力を打ち破れるかわからない。


 ゆえに、俺は背中に背負ったハンマーを手に取った。


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