第26話 フレイムラビット狩り
「なかなかいい土だ。ゴーレムの素材としては最適に近い」
俺たちは2人で高ランクの美味しい魔獣討伐に来ていた。
場所は段々畑のようになっている山で、結構街に近い所。
そこの土は硬くて質がいい。
「でもこれ、全部魔獣の仕業なんですよね?」
「そうだ。ゴーレムの素材としてはいいが、周囲の環境は全て奴らにとって最適な物に変えられてしまうらしい。山奥にいる分にはいいが、街の近くであるこの辺りでは全滅させて欲しいそうだ」
「っていっても……これ、どうやって全滅させるんですか?」
俺たちの周りには、真っ赤な目をぎらつかせた茶色と赤い模様が混じったウサギの集団がいた。
数は優に50匹を超える。
さらに巣であろう横穴もかなりの数が存在していて、その中に身を隠している奴もいた。
普通の方法では殲滅が厳しい気がする。
「ゴーレムを造ってこの辺りを全部押しつぶそう」
「それは環境的にダメじゃないですか!?」
「SDGsにはまだ早いだろ。モーマンタイモーマンタイ」
「何を言っているんですか……」
俺たちがこれからたべ……倒す魔獣はフレイムラビット。
単体だとDランクでそこまで強くないが、こうやって地形を自分たち用に変え、数が集まるとBランクまで上がるらしい。
巣穴からは炎が立ち上がり、奴らの身体からも炎が立ち上って警戒をしている。
というか、すぐにでも飛びかかってきそうだ。
だが、シーナの言っている意味もわかる。
なので、なんとか……倒せるような物は……。
俺はマジックバッグを漁り、ゴーレムの核に使えそうな魔石を探す。
オードリアに来る道中にもそこそこ魔獣を狩っていた。
なので魔石も色々あるが……どうしたらいいか。
そんなことを考えている間もフレイムラビットたちは俺たちに襲い掛かってくる。
「エクスさん! どうしますか!?」
「とりあえず倒しながら考えよう」
「わかりました! 『水の飛沫』」
シーナは魔法を使って突っ込んでくる敵を倒していく。
この前の訓練の成果が出ているな。
地上に出ている敵だけならシーナ1人でも問題なさそうだ。
なら、俺がやるべきことは……。
「地中にいる敵の殲滅か」
地面の中を攻撃するのであれば、木属性が以外といいかもしれない。
ブルームバイソンも地中で活動をしていたからな。
奴を倒した時に狩っていたトレントの魔石もちょうどある。
「よし、『設計図』」
俺は魔法を起動し、こいつらを殲滅できるゴーレムの開発をする。
ただ、今まで作っていたような物ではなく、新しい革新的な……いや、日本的なゴーレムを作ってもいいのではないだろうか。
俺は昔見たロボットアニメを思い出し、これは使えるのではないかと思って造ってみる。
ただ、自分が乗れるような巨大な物は作らない。
いずれ作りたいけれども。
だが、今はこのウサギたちを倒すことが先決だ。
地面の中なのだから、根っこが伸びて全ての敵を倒していけるように。
前回の村で造ったゴーレムのように、お互いを魔石同士で連結させ、無限に伸びていくような攻撃をする。
その起点は当然俺の右腕、そして、そこから伸びていく無限に伸びる拳。
やることは決まった。
「『土人形製造』」
俺の右手に装着するようにゴーレムを造り、近くの穴に向かって攻撃を繰り出す。
「食らえ! 無限パ〇チ!!!!!」
「エクスさんそれダメらしいです!」
シーナが何か叫んでいるが関係ない。
俺はゴーレムを穴の中に送り込み、全てのフレイムラビットを串刺しにしながら地中の巣の中を進んでいく。
手には振動が伝わってきて次々にやつらを屠っているのが分かる。
ちなみに、どうやって地中を進んでいるかと言うと、先端の方に細長い触覚を常に展開していて、土以外の方向に進み続けるという設定にしてあるのだ。
これで、何もない穴の奥か奴らに向かってのみ進む。
そして、2本に道が分かれている時は、腕が2本に分かれて進むという絶対に殲滅させる仕様だ。
それから5分もやっていると、全ての腕が止まるのが分かった。
「よし、後はこれを引き上げて……」
片道切符でしか作れなかったので、引き上げる用のゴーレムを造って全てのフレイムラビットを巣穴から出す。
「結構グロイような……」
「戦いとはそういうものだ」
「まぁ、そうですけども。解体していきますね」
「俺も手伝おう」
「いいんですか? ありがとうございます」
ということで、俺とシーナはそれからもくもくと串刺しになったフレイムラビットの解体を続けた。
ただ、数が数だったので、全ての解体を終えるのに夜までかかった。
100を超える魔石が手に入ったのでいいのだけれども。
「ふぅ……それでは戻りま……今から作りますね」
「助かる!」
俺の視線の意味を理解してくれたのか、シーナがそう言ってくれた。
「ここをこうして……っと」
シーナが作る料理を待っている間に、俺は土魔法でテーブルや椅子を造って待つ。
ただ、つまみぐいをしてしまいそうだったので、近くの土を色々と調べた。
ゴーレムの作製にはやはり原料である土がとても大事。
どのような物に使えるか調べておいて損はない。
「できました!」
「よし! すぐに食べよう!」
俺は土をすぐに投げ出して、シーナの元に向かう。
今回作られた料理はパイだった。
「お、お父さん……」
「え? こちらの方は知り合いだったのですか?」
「悪い。勘違いさせたか、関係ない」
世界一有名なウサギのあれだ。
こちらの世界では伝わらないが。
「ではどうぞ! 火耐性が高くて焼き加減に苦労しましたが、その分味が凝縮されていると思います!」
俺の目の前にはケーキのようにカットされたパイが置かれている。
ナイフとフォークを手に取り、一口大に切り分けて口に入れた。
「!」
一口噛んだだけでわかる。
凝縮という言葉が正しい言葉だったと。
上品な味の鳥という感じで、そこに込められている味の深さはけた違いだ。
さっぱりとしつつも、噛むたびに火が舌の上で踊るような優雅な辛さも備えている。
ただ、その辛さも美味い。
さっぱりとした中にちょうどいい辛さとでも言うのだろうか。
上品な味だけで終わるのではなく、そこからピリッと素晴らしい刺激が舌を刺す。
ただ、その加減が素晴らしく、もっと多くを食べたいと感じる素晴らしい味だ。
大満足な味だった。
「シーナの料理はいつ食べても美味いな」
「ありがとうございます。では、もう一つどうぞ」
シーナはそう言って新しい物を切り分けてくれた。
「シーナも一緒に食べよう。料理は一緒に食べてこそだ」
「……はい!」
俺たちは満腹になるまでフレイムラビットを食べ、大満足の1日を過ごした。
「最近肉を食べ過ぎているな……」
「ですねぇ……」
「次は……甘い物とかどうだ?」
「いいですね! 果物くらいしか食べる機会なかったのでとっても気になります!」
俺たちはそうやって、次は何が食べたいかを話して夜は更けていった。




