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第16話 新しい街へ

 翌日の朝。

 俺たちの見送りには、ギルドマスターと全員無事だった《星導の守護者》たちが来てくれていた。


「もう……こんな朝に行かなくても……みんな見送りも行きたいって言ってくれるだろうに」


「湿っぽいのは苦手なんで」


「あらぁ。別れ際くらいは許されてもいいんじゃない?」


「ゴーレムは水がダメなんですよ」


「ふふ……そうねぇ。ならしょうがないかしら」


 ギルドマスターはそう言ってくれて笑う。


「じゃあ……これが今回の依頼の報酬よぉ」


 彼女はそう言ってすごい重たそうな袋を差し出して……あ、落とした。


 ガシャァン!


「ちょっと……私じゃ重たかったみたいねぇ。マックス」


「はい」


 マックスが代わりにそれを拾って、俺に差し出してくる。


 俺はそれを受け取ると、中身をチラリ。

 袋の中には黄金色に光るコインがたくさん入っていた。


「これ……いくらあるんだ?」


「1000万ゴルよぉ。玉の輿ね?」


「そ、そんなにいいのか?」


 日本との物価は違うけれど、大体の指標として1円=1ゴルくらいでいい。

 だからこれは1000万円。

 ちょっとこれがあったらfireして……とか考え始めそうになってしまう。

 ゴルの魔力はやばい。


「あなたはそれだけのことをしたのよぉ。Sランクの魔獣って普通にやばいんだからねぇ」


「運が良かっただけだよ」


「そういう謙虚な姿も素敵よぉ。それと、これも持って行って頂戴」


 ギルドマスターは今度は懐から手紙を差し出す。


 俺はそれを受け取った。


「これは?」


「オードリアに行くんでしょう? 私からの推薦状が入っているわぁ。ギルドで見せれば力になってくれるし、貴族も多少なら話を聞いてくれるかもしれないわ」


「いいのか?」


「本当はここでランクをもっと上げたかったんだけどねぇ。あなたのようなすごい人。でも、私が勝手にあげすぎるのもギルドとしては問題なのよねぇ」



 確かCランクまで上げてくれたんだったか。


「なるほど、困った時はギルドに持っていく」


「ええ、そうして」


 ギルマスとの話が終わり、今度はマックスが手を差し出してくる。


 俺はそれを握り返し、固い握手を結ぶ。


「何かあったらギルド経由で連絡をくれ。すぐに向かう」


「ああ、頼りにしている」


 俺たちの会話はこれだけで終わる。

 男同士の会話はこれでいいのだ。


 ということで、俺たちはオードリアを目指して出発する。



 出発してから半日くらい経った頃。


「ゲギャギャギャギャギャギャ!!!」


 俺たちはゴブリンに囲まれていた。


「森に魔獣たちが戻ってきたようだな」


「そんなのんきに言わないでください!」


「大丈夫だ、解体の方が時間かかるくらいだぞ」


 俺はそう言って剣を抜き放つ。


 しかし、シーナにそれは止められた。


「エクスさん。待ってください」


「どうした?」


「あの……今回の戦闘、わたしに任せてもらえませんか?」


「別にいいぞ」


 ゴブリン相手ならシーナであろうが問題ないだろう。

 やりたいと言うなら任せる。


「では……行きます!」


 それからシーナは魔法を駆使してゴブリンを殲滅していく。

 風魔法、火魔法を使えるのは知っていたが、水魔法、土魔法等も使っていて多彩すぎる。


 彼女は状況にあった魔法を使って敵を翻弄(ほんろう)していた。


 風魔法では敵の目を狙って動けなくするし、火魔法では持っている武器を熱したり、持ち手を狙ったり狙う場所を考えている。

 水魔法で口の中に入れたり、土魔法で足元をすくって敵の動きを止める。

 魔力消費に気を付けながら、効率的にゴブリンたちを殲滅していくのだ。


「はぁはぁ」


 ただ、流石のシーナも敵が多かったからか、最後の方は少し息が上がっていた。

 全ての敵を倒すのに5分くらい。

 といっても、50匹以上いたゴブリンを単騎であれだけ楽に処理できていたのは普通にすごいと思う。


「お疲れ。解体は俺がやっておくよ」


「いえ……わたしも……わたしもやります」


「そうか? 無理はするなよ」


「……はい」


 俺たちはそれから一緒に解体をして、ゴブリンの魔石を全て集めた。


 それから、オードリアに向かう途中、シーナが話しかけてくる。


「エクスさん……さっきの戦闘……何点でしょうか?」


「ん? 100点でいいんじゃないのか? 魔法もちゃんと相手の弱点を狙っていたし、効率的に倒せていたと思う」


「じゃあ……エクスさんはあの数だったら何分で終わらせられますか?」


「1分かからないだろう。近づいて首を刎ねて終わりだからな」


 彼女に嘘はつきたくないので、正直に言う。


「エクスさん……わたし、ブルームバイソンの時に何もできませんでした」


「そんなことはない」


「でも、わたしは……最後の一撃の時も、力になりたかった」


「……」


「だからエクスさん。わたしに戦い方を教えてくれませんか? わたしも強くなりたいんです!」


 彼女の実力は十分……というか、一人で旅をしてきたことを考えると十分以上あると思う。

 それでも、彼女がそれを望むというのなら。


「俺にできることでいいなら」


「はい! よろしくお願いします!」


 そういうことで、俺は彼女に戦い方を教えることになった。


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