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File.1 残す者、残される者(1)


<G.C.117 12/31>

カメラが軍列パレードをうつす。明日の朝刊用に写真を撮りながらロベリオはため息をつく。


普段から自分の肩章には負い目がある。だがこうも四つ星(クワトロ)以上が多くいるとやはり自分の魔力量が少ないといやでも実感するのだ。


「へぇ、一つ星(シングル)!それがこんなところに居ていいのかな?」


突然馬鹿にするような言葉と共に肩に手がおかれる。いかにもという高級な服に身を包んだ四つ星の男が後ろに立っていた。そのままの調子で彼は言う。


「こんな一等席に君のようなのは似合わない。どきたまえ」


なんなんだコイツ。ロベリオはそう思わざるを得ない。魔力量を傘に居丈高になるのは無理もないが、俺がカメラを持っているのが分からないのか?


「、、、嫌です。僕は記者としてここにいる。それを四つ星とはいえ()()()のためにわざわざ退く筋合いはありません」


やってしまった、、、もめ事を起こさず、素直に退けば良いものを。それはプライドが許せなかった。案の定、顔を真っ赤にした男が掴みかかってくる。


「一般人?俺はマナク社だ。てめえみたいな魔力も実力もないヤツとは違うんだよ!」

「なら尚更、こんな非礼は、、、」


続きを言う前に腹に激痛が走る。立ち見席から蹴りだされたのだと気づくのにそう時間はかからなかった。


警備員が集まってくる。混乱する周り、非難の目、それらを打ち破ったのはパレードからの声だった。


「何をしている!」


声の主は一兵士だった。容貌や声から、女のようである。


整った顔立ちにかかる艶めいた黒髪、そして紅と深紺のオッドアイ。一見するとアンバランスなそれらが不思議な調和をたたえていた。


その女兵士が向かってくる。肩章を見てマナク社の男が逃げ出そうとした。


「逃げるなぁっ!」


同時に空気が重くなる。放出された膨大な魔力の圧で足がすくみそうになった。こんなに濃い魔力を張ったら辺りの中継は全滅だろう、と地面に転がったままロベリオは考える。


女の冷めた声が響いた。


「マナク社の御曹司さん。大企業のご子息ともあろうお方が、何をしておいでで?」

「こっ、こんなところに一つ星の奴がいては国の威信に関わる。そうだろう」


コイツ、、、御曹司だったのかよ。ロベリオは思わず呆れてしまう。大体そういうことなら、、、


「それではあなたの行動はどう説明なさるので?それこそ威信に関わるのでは?」

「しっ、しかしここは魔力社会だ。強き者は弱き者の過ちをただし、導くのは当たり前ではないか。」

「パレードの品格を崩しながら何を言う。いや、お前のような奴はこっちの方が効くか」


そういうと、彼女から薄く青い魔力の霧が湧き出て、男を包み込む。喉を押さえてもだえる男を、ロベリオは白い目で見る。

色が出るほどの濃さの魔力で包まれたのだ。空気すら通らなくてさぞ苦しかろう。


星五超え(ビヨンド)の私、アンリ·ファルマン航空上等兵が命じる。貴様やっていることは風紀を乱す。ここから立ち去れ」


マナク社の男はそこまでされてなお、抗う素振りをみせていたがさらに恥を晒すことはないと気づいたのか、絡み付く魔力を引き剥がすようにして群衆の中に消えていった。


アンリが差しのべた手を取る。起き上がったロベリオのスーツをはたくと、彼女はささやいた。


「秘密基地で待ってて」

<用語集>

魔力=人の意思や感情によって増幅するエネルギー。この性質から、発見後に多くの保持者が誕生した。人の周りに纏うように存在しており、濃度が高いと通信機器の障害を引き起こす。


肩章=両肩に装着するタイプの魔力制御装置。魔力量に応じて描かれている星が点灯する。魔力量を測るためだけでなく、上記の性質を持つ魔力と共に生きる以上必須の装置。


<追記>

近日中に(2)投稿予定。少々お待ちください。

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