やりなおしになるまでの過程
部屋に戻ると、床に置きっぱなしだった荷物が目に入った。一応部屋のすみに寄せて、収納するのは明日にする事にした。今すぐベッドにダイブしたいが、汗でべとべとしている体で寝転ぶのは気が引ける。僕が床に座り込んだその時、何者かがベッドにダイブした。
「誰だよ」
「あーつっかれたぁ」
「いや返事してよ」
「このまま眠れそう」
まるで会話が成り立っていない。疲れに浸るこの男はきっと同じ部屋に割り当てられた奴であろう。もちろん汗だくである。こうして二段ベッドの下の段は汗の犠牲になった。
「あ、誰?名前教えてぇ」
僕の言葉には全く耳をかさなかったくせに、僕に返事は求めるのか。でも僕は違うと信じて返事をした。
「僕はアオト、おま、、君は誰?」
すると、男は驚いたような顔をした。
「ええ、俺のこと覚えてないのぉ?悲しいなぁ」
「覚えてるも何も、君と話したのは初めてのはずだよ」
「話したじゃあん、訓練の前にさぁ、敷地内の広さ知らないのって僕が君に聞いたんだヨォ」
「あっ、あー確かに見たような気がする」
あの時少し話しただけなのにこいつは僕を覚えていたのか。にしてもテンションが違いすぎる気がするのは気のせいか。
「とにかくお風呂入ろうぜぇ、ベッタベタのベットベトだしぃ。」
「そうだな、それには僕も賛成するよ。」
言われてみればこいつも僕も汗だくだった事に改めて気付かされた。そして、疲労感を引きずって風呂に向かった。
「あ、そういえばぁ、俺はルウっていう名前だよぉ。」
「そうか、よろしくな」
やっと名前を教えてもらえたので、これからはルウと呼ばせてもらう事にした。なんだかルウは名前で呼び合うという事に感激しているようだった。そうこうしているうちに風呂場についた。服を脱いで、シャワーで汗を洗い流す。1日の疲労感がやっと抜けた気がした。
「うわあ、石鹸忘れたぁ、アオトくぅん貸してぇ」
ルウが石鹸を要求してきたので渡す。でも、、、
「ぶりっこポーズはしなくていい」
「ふざけただけだってぇ」
ケラケラ笑うルウに僕は力が抜けた。
さて、風呂も入り終わり、部屋に戻ると案の定、汗の乾ききっていないベッドがお出迎えしてくれた。汗の話が多い気がするが、もう終わりにするべく、二段目に寝た。ルウはなんの抵抗もなく下段で寝ていた。