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やりなおしになるまでの過程

真新しいお墓がたくさん並んだところを、1人の女性が歩いてくる。そしてその人は僕の前に立った。

「久しぶりだなぁ、私もお前も、あの戦いが終わってから会えていなかったからなぁ」

そう言って隊長は寂しそうな表情をした。僕の前に立った女性が隊長だ。いや、きっと隊長だったという方が正しいだろう。もう僕たちがいた隊は無くなっているだろうから。

だとしても、せっかく会うことができたのだから、そんなに寂しそうな、泣きそうな顔をしないでほしい。こうして会えるだけでも幸運というものだ。強気だった隊長が恋しくなる。何も言わなくなった隊長を前に、僕はあのときの戦いを思い出した。

事の発端は、王国から何キロか離れているらしい鉱山が発見された事だった。周りの国が急速に機械の技術を発展させている中、僕が住んでいた王国は金属が不足しているせいで機械を発展させることが難しかったのだ。そこで運良く発見された鉱山に王国は国民に金属をとりに行かせた。ここまでは良かったのだと思う。しかし、その鉱山に行った100人の内、たったの2人しか帰ってくることができなかったそうだ。なんでも、鉱山には、光る目で睨みをきかせ、いったい何メートルあるのかという巨大な体と攻撃器官を持つ恐ろしい猛獣がいたという。そこで、その猛獣を倒して安全に鉱物を得る為、軍隊が作られた。最初は誰しもが強い武器を持って大人数でかかれば倒せると考えていた。しかし、攻撃は通じず、隊は全て全滅したそうだ。戦力が減少した上に、武器も通じない。これでは勝ち目はない。そんな現状を変える為、王国は、周りの国から優秀な武器職人をやとい、金属を大量輸入した。それでも、恐ろしい猛獣など相手にしたくないという意見が多数あった。戦闘の自主参加は望めない。そこで王は強制参加を選んだ。国中におふれが出された。そして、僕は軍隊に入る人に選ばれてしまった。数日後、涙を流す親に見送られ僕は、隊の集合場所に向かった。暑い雲に覆われた空のしたに敷かれている豪華な通りを渡ると、もうすでに他の人は集合していた。

「おっそいなぁ」

声を張り上げたのは三つ編みをした女性だった。名札を見ると、「ミユ」と書いてあった。

「おい、遅刻なんだから早く並べって、えーと、そのー」

「アオトです。」

ミユ、さんは僕の名前を覚えていないようだ。でも僕は覚えた。いきなり声を張り上げられて驚いてしまったのがなんだか悔しい。

「あー、じゃあアオト、お前そこ、違う、もう一つ右、そうそこに並んでろ。」

並ばされた。大体自分は1番前で突っ立っているのになぜ人に指図するんだろう。

「あの、」

「今からこの軍の隊長の私がお前らを鍛えてやる。だが、先に泊まる部屋を案内してやる。ついてこい。」

僕の言葉は遮られて、その後も説明が続いた。隊長だったのはこのとき初めて知ったのだ。偉そうな気もするが入隊するには従わなければならない。僕たちは走って、歩いているように見える隊長を追いかけた。しばらくすると、突然隊長が止まった。

「名前にアがつくやつから部屋入れー、荷物置いたらすぐこい。」

大人しく命令に従い、木製の床に荷物を置いて帰ってくると、息つくまもなく次の指示がとんできた。とうとう訓練に入るらしい。

「まずここの敷地を3周ほど走ってもらう、日がたつごとに走る量を増やすからな。」

拍子抜けした。てっきりもっときつい訓練が待っていると思ったのだが、敷地内を走るだけだとは。これは思っていたより楽かもしれない。しかし、周りを見ているとみんな真っ青になっている。僕は聞いてみた。

「なぜそんなに焦っているんだ?敷地を走るだけだろう。」

「何を言ってるんだよ!ここの敷地の広さ知らないのかよ!」

敷地の広さを知らない、とは。改めて敷地内を見渡す。

これは、やっぱり、辛いかもしれない。


「おーい、まだ一周目だぞー」

隊長に聞きたい。隊長は走ったことがあるのか、と。どれだけ走っても一向に終わりが見えてこない。みんなが真っ青になっているわけがわかった。ここを走り切るなんてとんでもない話である。おまけに暑い。曇りだから湿度も高くて、とにかく気持ちが悪い。もう僕たちは走っているという速さではないはずだ。あとこれが二周。考え事をしていると転びそうだったので、走る事に集中した。したつもりだ。

しばらくして、日はとっぷり沈み、あたりは真っ暗になっていた。その時にはやっと3周を走り切っていた。僕たちはふらふらとそれぞれの部屋に戻って行った。


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