第3話
「っらっしゃい!」
今、ここ、ラミアの街の中央広場でラーメンを売っている。
売れる、売れる。ウハウハだ!
この屋台はマジ便利だ。レンジでチンする要領で完成する。
ちょっと看板がデカい。それに「ユヅキ亭」ってなんだ?
「まいどぉ」
しかし、屋台を開くまで結構大変だった。
まず、商業ギルドに行って出店許可をもらいに行ったのだが。
なんと!ギルドマスター直々に対応してもらった。
私の身分証を受付のお姉さんに見せたら、慌てて呼びに行ったのだ。
私、外国の侯爵令嬢という設定らしい。
何てことするんだ!あの駄女神。
貴族の相手をするなんて絶対嫌だぞ!
街に入る時、門番が急いで入れてくれた理由が分かった。
そして、商業ギルドカードを作ってもらった。
ランクはC。駆け出し、ではあるが1人前ということだ。
普通はEランクかららしい。国外ではあるが、侯爵家の後ろ盾があるからだろう。
その後、冒険者ギルドに向かった。
屋台の「情報」によると、次元の裂け目には魔物が集まるらしい。
それなら冒険者として登録している方が情報が入りやすい。
からん♪
冒険者ギルドに必ず付いているドアベルを鳴らしながら入ると...
───ジロッ
なぜか皆の視線が私に。
そして受付に向かって歩いていて行くと。
「おい!ここはお嬢ちゃんの来るところじゃねーぞ」
やっぱり。がっくし。
テンプレ来なくていいのに。
無視だ!無視!
「おい!聞いてんのか?」
ウザい。
無視していると後ろから肩をガッと掴まれた。
私はその手首を掴んで、そのまま投げ飛ばした。片手背負い投げという感じかな?
ばしゃ〜ん!
パーティー仲間と思われるテーブルに突っ込んだ。
「テメー何しやがる!」
「おい!やめろ!!」
仲間の男が剣を抜いて斬りかかってきた。
近くの仲間が止めるが既に遅い。
ヒュッ ガンッ!
私もショートソードを抜いて相手の剣を躱し、ショートソードの柄で相手の剣を叩き落とした。
そして、首を...
ビッ!
首筋で寸止め。少し食い込んで血が流れた。
「おい!コイツが先に剣を抜いたよな」
周りの冒険者達がコクコクと首を縦に振った。
「じゃあ首、落とされても文句ねーな」
「や、やめろ」
「テメーが先に斬り掛かってきたんだろーが!」
そうしてしばらく動かずにしていると。
「何をやっている!」
やっと来た。遅いよぉ。ギルドマスターの登場である。
「「「「すみませんでした!」」」」
話はギルドマスターの部屋で、という事でギルドマスターと対面している。
「ここのギルドは登録前の一般人に、いつもこんな事をしているのか?」
ギルドマスターは先程の出来事を、他の高ランク冒険者から事情を聞いていた。
登録するつもりとはいえ、登録していない以上一般人だ。剣を抜くのはもちろん、絡むのもNGである。
冒険者同士ならギルドの判断で処分を決める事が出来るが、一般人相手だと犯罪者として、憲兵へと引き渡し、処分を委ねる事になる。
「いや、申し訳ない。アイツらは新人虐めの常習犯だ」
冒険者ギルドのギルドマスターが青い顔をしながら答えた。
国外の侯爵令嬢の肩書きは、ここでも有効らしい。
その事を知った相手の冒険者パーティーは土下座しながら、ひたすら平謝りだった。
それはそうだ。知らなかったとはいえ、冒険者でもない貴族令嬢を斬ろうとしたのだ。
依頼者かもしれないのに、だ。
普通ならその場で処刑される案件だ。
ギルドマスターから、絡んだ冒険者達はこの街での活動を禁止にするから、この事はこれで済ませてほしいと頼まれた。
私も早く屋台を出したかったので、了承した。
しかし、この街での活動禁止、というのは意外と厳しい処分である。
冒険者ギルドは国内に限らず大陸中に有り、それらが繋がっている巨大組織なのだ。
こういった不始末は全ギルドに通達される。
彼らは冒険者としてやっていくのは難しいだろう。
冒険者ギルドでも登録してギルドカードを作った。
冒険者でもスキップしてCランクだった。
私に絡んだ相手もCランクで、素行は悪いが中堅以上の強さがある。私がその2人を一瞬で戦闘不能にした事を、Bランク冒険者が証言したらしい。冒険者はFランクからだが、それではもったいないとの判断からだった。
冒険者もCランクから1人前との事。
◆
「ったく、面倒な奴らだ」
そして、屋台でラーメンを売り始めた。というわけです。ホント面倒だった。
「そろそろかな」
ラーメンをほぼ完売したので、おでん屋にする事にした
本当に凄い屋台だ。ボタン押すだけで自動でおでん屋に変わった。
「まいどぉ」
売れるが、ラーメンよりは回転は遅い。
ゆっくり食べたいのだろう。
しばらくして、冒険者ギルドの方が騒がしくなった。
「何だろう?」
警備兵達も気づいたようで、中央広場にいる人達に家に帰るよう勧告している。
私も屋台を閉めて、冒険者ギルドへ向かった。