求婚と絵のモデル
初投稿なります。ボッチーです。思いつくまま、成り行き任せの投稿です。優しく見守ってください。宜しくお願いします。
帝国と属国との、国境付近の調査が終わったユキヤたちは、帝都を訪れていた。
ユキヤは、ここで、ドミニクと出会ったんだなぁと、感情に浸りながら、王城を目指していた。
本当は、すぐにでも、〈カリーヌの粉〉を、入手したかったが、ルメールの監視の目がある為、珍しく自重した。
王城に着くと、ホルスター王国の特使である事を告げる二人。
すると、案内されたのは、謁見の間ではなく、執務室だった。
それは、先のガブリエルの襲撃により、謁見の間は、現在、修繕中だったからだ。
案内をしてくれた兵士が、扉をノックし、
「ホルスター王国より参られた、特使殿をお連れしました。」
と、報告すると、
執務室から、
「いいよ〜、入ってもらって。」
と、気怠そうな返事が、返ってくる。
入室の許可が降りた、ユキヤたちは、執務室に入った。
すると、顔も見えないぐらいに、積み重なった書類の奥に、ジキルはいた。
ジキルは、作業の手を止めて、ユキヤたちを見据えると、突然、立ち上がり、その小太りの体型に、似つかわしくない、素早い動きで、ユキヤに近づき、ユキヤの手を取り、
「ぼ、ぼくと、けっ、結婚して下さいっ!!」
と、言った。
ユキヤは、ああ、また、性別を勘違いされていると思い、
ジキルに、
「申し訳ありませんが、僕は、男性です。」
と、応えた。
すると、ジキルは、
「えぇー!?その容姿で、男性なんですかっ!?」
と、驚いた。
すると、ルメールが、
「皇帝陛下、ユキヤは、間違いなく、男性です。」
と、念を押した。
すると、ジキルは、
「っ、取り乱して、すいません!?
トンプソン帝国の皇帝をしている、ジキル・トンプソンです。」
と、腰の低い態度で、自己紹介をしてきた。
それに対し、ルメールが、
「ホルスター王国、第一王女のルメール・カサンドラです。
そして、彼が、我が国の〈名誉騎士〉である、ユキヤ・カナモリ卿です。
この度は、ホルスター王国の特使として、参りました。」
と、応えた。
すると、ジキルは、
「ユキヤさんと、おっしゃるのですね。
ユキヤさんっ!!
ぼくの、絵のモデルになってくれませんか?」
と、突然の告白を受けるユキヤ。
ユキヤは、
「絵のモデルですか?」
と、尋ねると、
ジキルは、
「はいっ!!ぼくは、絵が描くのが趣味でして、是非、ユキヤさんのような、美しい方を、描きたいんですっ!!」
と、いつもの気怠さが、嘘のように、生き生きと語った。
あまりの、気迫におされたユキヤは、
「僕で良かったら、構いませんよ。」
と、返事をしてしまう。
すると、ジキルは、満面の笑顔で、
「それでは、ぼくのアトリエに、参りましょうっ!!」
と、ユキヤを誘った。
しかし、宰相が、それを制する。
「いけません、陛下っ!!
お仕事も途中ですし、なにより、ホルスター王国の特使殿と、お話する方が、優先ですっ!」
と、当たり前な事を言う、宰相。
しかし、ジキルは、譲らなかった。
「お話なら、絵を描きながらでも、出来ますっ!!
しかし、絵は、ユキヤさんがいないと、出来ませんっ!!
仕事は、後で必ずやり遂げますので、見逃してくださいっ!!」
と、必死にアピールする。
それを聞いた、宰相は、
「・・・終わったら、必ず、お仕事をしてくださいね。」
と、説得を諦めた。
すると、ジキルは、
「では、ユキヤさん。改めまして、ぼくのアトリエに。」
と、ユキヤたちを連れ出した。
ジキルのアトリエは、数々の絵が、飾られていた。
風景画や、人物画などが、綺麗に描かれており、腕前は、かなり高いと思われる。
ジキルは、ユキヤに、椅子に座るよう勧めて、ポーズの指示を出し、早速、絵の作成に入る。
ユキヤは、その間に、国家間の友好関係を取れるよう、ジキルに話かけた。
「皇帝陛下、私共は、貴国からの助力の要請に、お応えしたいと思います。」
と、言うと、
ジキルは、
「ありがとうございます。ぼくは、皇帝になりましたが、右も左も、よくわからない状態でしたので、ホルスター王国さんに、助けて頂けると、非常に、助かります。」
と、謙虚な姿勢で、応えた。
それならばと、ユキヤは、ジキルに、
「実は、皇帝陛下に、僕個人のお願いがあります。
どうか、奴隷の方達を、解放して頂けませんか?」
と、無理は承知で、お願いした。
すると、ジキルは、
「奴隷ですか?別に構いませんよ。」
と、呆気なく了承した。
それを聞いた、ユキヤは、こんなに簡単に決めて良いのか、逆に、不安になり、
「本当に、宜しいんですか?」
と、質問した。
すると、ジキルは、
「ぼくは、先代と違って、争いを好みません。
よって、奴隷の必要性も感じません。
何より、ユキヤさんのお願いです。断る理由が、ありません。」
と、ユキヤに、妙な信頼感を持って、答えた。
すると、ユキヤは、
「しかし、全ての奴隷を解放となると、奴隷商にも、影響が出るのでは・・・。」
と、指摘すると、
ジキルは、
「奴隷商には、国庫から、補助金を支払います。問題ありません。」
と、政治にやる気がなかった様には、思えない程、思い切った方針を、語った。
それから、幾つかの要望や取り決めなどを話し合い、国家間の友誼を結んだ。
そして、ユキヤのデッサンが終わると、ジキルは、ユキヤたちに、その絵を見せてくれた。
まだ、色付けはされていないが、写真のように綺麗に描かれたユキヤの姿があった。
ユキヤは、美化しすぎだと言ったが、
ジキルとルメールは、
「「そんな事はない(です)っ!!」」
と、譲らない。
こんな物が、世に残るのは嫌だと、駄々をこねるユキヤを放置して、ジキルとルメールは、意気投合していた。
ユキヤたちと、別れたジキルは、それまでのやる気なさからは、考えられない姿勢で、仕事に取り組んだ。
宰相は、あまりの変貌ぶりに、何があったのかと、ジキルに聞くと、
ジキルは、
「ぼくの生涯で、最高の絵が、完成しそうなんですっ!!」
と、生き生きと、答えた。
宰相は、何がそこまで、皇帝をやる気にさせたのか、理解出来なかったが、ホルスターに、助力を求めて良かったと、ホッと、息を吐いた。
構想、数年の作品です。初投稿故の、誤字等あると思いますが、楽しんで頂けたけたら幸いです。なるべく間隔を開けずに投稿しますので、続編も宜しくお願いします。
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また、2作目、[暗殺一家の落ちこぼれ。魔法を極めて、世界を救うっ!!]も、連載開始しました。
宜しくお願い致します。