リセット(転帰)
初投稿なります。ボッチーです。思いつくまま、成り行き任せの投稿です。優しく見守ってください。宜しくお願いします。
ひょんなことから、ハドリアス公爵夫人の治療することになったユキヤ。
ただ怪我と違って、病気にも、魔法の効果があるのかわからないまま、試す事になってしまい、失敗したら、どんな扱いになるか不安で一杯だった。
魔法はイメージすれば使える。
コレは今までの経験で理解はしている。
ただ、病気となると、自分は元サラリーマンで、医療の知識など無い。
つまりは、その治療方法がわからないのだ。
怪我ならば、なんとなくわかって治せたが、病気は、全く未知の領域だ。
チートな能力を持ってしても、治せそうに無かった。
だが、大金を積まれ、頼まれてしまった以上、やらない訳にはいかない。
そんな事を考えている間に、目的地に着いてしまった。
「ここが妻の部屋だ」
そう公爵はいい、部屋のノックをする。
「は〜い、どなた?」
中からら返事が返ってくる。
「ワシだ!あと、エミナとその恩人も一緒だ。」
「まぁ、エミナの恩人さん?どうぞ、お入りになって」
許可が降りてしまった。
公爵がドアを開けて中に入って行くのについて行くと、
エミナに似た、いや逆か、エミナの母親らしく同じピンクの髪色をした妙齢の女性が、ベットに横になっていた。
自分達が来た為だろう、ベットから身体を起こして、出迎えてくれた。
ただ、一目見た瞬間、普通でないことが分かった。
両目を閉じたままなのだ。
あぁ、コレは眼の病気で間違いないなと検討がつく。
その証拠に、公爵が夫人が目の病で、物や人が視えなくなっている事を告げた。
「ごめんなさいね〜。エミナの恩人さんにちゃんと挨拶出来なくて。このたびは、エミナを救ってくれてありがとうございます。」
そう彼女は言った。
他人事なのに、さっきまで、治せないだろうと思っていた心が、ズキリと痛む。
「・・・そんな事ありません。僕はそんな大層な人間じゃありません。お気になさらないでください。」
そんな風に力なく言葉を返すと、夫人は、
「フフッ、可笑しな人。私のことは気にしなくていいのですよ。」
と、返してくる。
その姿が、痛々しくて、長年忘れていた両親を思い出させる。
「・・、僕は神聖魔法が使えます。治せるか分からないけど、治療をさせてくれませんか?」
と、自ら、この人を治してあげたいと思って、想いを告げた。
まさか、ユキヤ自ら、治療を希望するとは、誰も思ってなかったのだろう。暫くの間、沈黙があって、夫人から声が掛かる。
「確か、ユキヤ君だったかしら?エミナの声がここまで響いていたわ。宜しくお願いしますね。」
そう応えてくれた。
(眼の病気、白内障、網膜剥離、どれだ? 兎に角元に元に戻せれば良いんだよな。再生・再構築・・・。)
「リバイブっ!!」
頭の中浮かんだイメージを固めて、呪文を唱えた。
手から淡い黄色い光が、夫人の瞼に降り注ぐ。
その間わずか数秒程度だったはずだが、自分には凄く長く感じた。
光が収まった時、公爵が、
「ッ、どうだっ!?」
と問いかけてきた。
ユキヤはそのまま、夫人に対して、
「ゆっくり眼を開けてください。」
と問いかけた。
皆の息の飲む音が聞こえる中、夫人は、その瞼を、ゆっくりと開いていった。
そうして、暫くの沈黙の後、嗚咽がこだました。
「ッ、み、視える。視えます、愛しい貴方が。愛しいエミナが!!」
夫人の瞳にヒカリが戻った瞬間だった。
同時に大粒の涙が溢れていた。
「カトリーヌっ!!」
「お母様ッ!!」
親子三人。抱きしめあい喜び、泣きあっている。
側にいた執事の老紳士も、メイドさんも、泣きあっている。
そんな光景を見て、ユキヤ自身も自分が泣いていることに気づいた。
(あぁ、良かった。自分が生前出来なかった親孝行が、今叶った・・。)
勿論、夫人は、ユキヤの親ではない。けれども、生前、反発ばかりして親孝行などしたことがなかった為、夫人と親を重ねてみてしまう。
こんな身寄りのない自分でも、人の役に立てるんだと実感してしまう。
そうこの瞬間だけは、何者にも変えられない充実感に浸ることが出来たのだ。
挑戦して良かったと、心から思う。
30年余り荒んだ心のまま、人生を終えて、今、〈やり直し〉が出来た事に感謝している自分が、そこにはいた。
構想、数年の作品です。初投稿故の、誤字等あると思いますが、楽しんで頂けたけたら幸いです。なるべく間隔を開けずに投稿しますので、続編も宜しくお願いします。
ブックマーク、いいね、☆評価も頂けると、励みになります。
宜しくお願いします。