表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殺人  作者: つくし
27/37

一番目vsアイ

 愛の殺人を目の前にして、俺はタカハシとの過去を思い返していた。

 愛の殺人、アイの見た目は完全にタカハシそのものだった。

 異なる点と言えば、俺の知っているタカハシのとは異なるサツイを、溢れんばかりに抱えているところだ。

 タカハシを眠らせた時よりも、遥かに増えている。

 眠っていたせいで解放できず、溜め込んでしまっていたのかもしれない。

 俺がなんとかしなきゃ。

 こいつな放っておくわけにはいかない。

 俺はアイに向かって走り出した。

 一方のアイは、突っ立ったままだった。

 俺は無防備なアイに殴りかかった。


「いきなり動きやがって」


 止まっていると思っていたアイが、俺の攻撃に対して、突然動き出し、簡単に止められてしまった。

 それをきっかけとし、俺とアイは、取っ組み合った。

 懐かしかった。

 あの頃を、まだ、警察になりたての頃を思い出していた。

 思い出しながら、ふと思った。

 サツイの量に対して、力が弱い…?

 ホボさんからアイについての話は聞いているが、一人で対抗できるような相手ではないと、何度も忠告を受けてきた。

 それなのに、アイは俺の攻めに対し、防ぐことしかしてこない。

 たまに、隙を見つけたかのように攻められそうになるが、なぜか直前で手を緩めてくる。


「…苦しい…のか?」


 伸びた前髪からたまに見える瞳が、俺には苦しそうに見えた。

 自分の意志とは異なった動きをさせられていることに対し、抵抗しているかのような。

 アイは、タカハシによって、力を抑え込まれているんだ。

 俺はアイへの攻撃を止め、両腕を掴んだ。


「なぁ、教えてくれ。今のお前はどっちなんだ?」


 返答はなかった。

 だけど、俺にはわかった。

 優しいお前が、俺の質問に答えないわけがない。

 今のお前は、もう、殺人に飲み込まれている。

 だから俺は、苦しそうに抵抗するタカハシを、優しく抱いた。


「もう、我慢しなくていい。俺が全部受け止めてやるから。そのために、生きてきた。そのために、ここにいる。タカハシ、眠っていいんだぞ」


 俺がそう言うと、アイは腕をぶらん、とさせ、俺の肩に顎を乗せてきた。

 やっと落ち着いたか。そう思ってしまった。

 殺人相手に、完全なる隙を生んでしまった。

 タカハシに対して、愛を持っていたために。

 俺の腹部は、一瞬にして消え去っていた。

 遅れてやってきた痛みに気づいて、俺は慌てて距離を取った。

 それから、砂糖で腹部を複製し、応急処置を行なった。


「…なるほど。これがサツイか。人間の中に殺意が眠っているのがザイアクであり、殺意の中に人間が眠っているのがサツイ。一体、誰がこんなことを…」


 俺は完全に目を覚まされないように、再びアイに向かって飛び出した。

 飛び出したと思っていたのだが、なぜか俺は倒れていた。


「自身を愛せないお前二、俺を抑えることなどできまイ」


 右脚が、根元から消え去っていた。

 急いで立ち上がって、今度は右脚を複製する。


「他人に気を配るあまリ、自身を見失イ、お前は罪を犯しタ」


 次に一歩を踏み出そうとするも、踏み出したと思った左脚を消されてしまう。

 再び、慌てて複製を始めた。


「何度立ち向かおうとしようと無駄ダ」


 アイの言葉が聞こえないフリをしながら、どうにかしてアイの元に近づこうとする。

 しかし、その場から少しも動くこともできず、何度試みても、その度に体の一部が消されてしまう。

 そして、その度に体を複製する。


「身動きすら取れん奴の相手は不要ダ。僕はそこを通過して行った奴らを追ウ。そこで事の結末を見届けるんだナ」


 俺は脚を踏み出すのをやめ、ただただ、アイが去っていくのを見ることしかできなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ