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殺人  作者: つくし
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真実を求めて

「ってくだ、さ、い…?」


 僕はさっきまで囲まれていたはずなのに、どうして牢屋に…?

 ヒビノさんの仕業か、スズキさんの仕業か。

 何にせよ、ここから出ないと。

 イトウとコバヤシを助けるのもそうだし、何か誤解されてるとしか思えない。


「こんな檻、ワンの力を借りれば…」


 と、思っていたが、ミンとの戦闘で借りたことをもう忘れていた。

 それすら忘れるほど、いっぱいいっぱいになっていたみたいだ。

 焦っても仕方ないのに。


「まぁ、落ち着け」


 鉄格子を掴んでいると、背後から声が聞こえてきた。

 気配を全く感じず、いや、気づかなかっただけかもしれないが、角にポツリとホボが座っていた。


「どうしてここに?」

「殺人を逃亡させた罪で」

「ホボさんが!?」

「違うわい。ここの管理者として、責任者として、疑いをかけられているだけじゃ。実際にはやっとらん。やるはずないんじゃ。お前さんもそういうたちじゃろ?」


 僕は頷いた。


「ホボさんは、逃亡していくところを見たんですか?」


 ホボは静かに頷いた。


「じゃあ、どういう状況だったか、教えてもらえませんか?」


 訊いたところで、どうこうできるわけではないが、知らないわけにはいかない。


「信用するしないは自由じゃが…」


 ホボは変な間を空けてから続けた。


「新人の二人が、ガラスケースを叩き割って、引き連れて行ったよ」

「新人の二人っていうのは…」


 僕は、もしかしたら知らない新人なのでは、と思い訊こうとしたが、途中でそれが無駄だと気づいて口を閉じた。


「それが…真実なんですよね?」

「わしが見た光景じゃ。さっきも言ったが、信用するしないは、お前さんの自由じゃ」

「僕は、信じます。ホボさんも、二人も」


 聞いた真実を拒んでも、二人が戻ってくるわけじゃない。

 変に疑わず、信用する方が事を円滑に進められる。

 それに、きっと何か理由があっての行動に違いない。

 何か…理由があっての行動であってくれ…僕に信じさせてくれ…


「このことを知っておるのは、わしら以外に四人」


 ホボはダブルピースで四を示した。


「エノモト、ヒビノ、アオキ、カトウ。ちなみに、エノモトは今、新人の元へ向かっている」

「スズキさんやサトウさん、それに、他の方は?」


 ホボは首を横に振った。


「タカハシも連れさられ、当時、一課にいた人間は今、皆気が動転しておる。まるで、リードを外されたかのようにな。だから、作戦に参加させるのは愚策だ」

「一課…カトウさんは?」

「元々、五課の人間だからな」


 初耳だった。


「もうそろそろ来るかのう」


 ホボは、言いながら立ち上がった。そして、手のひらを上にしてみせた。

 僕は自分に向けて差し出してきたのだと思い、そっと手を乗せた。

 しかし、ホボは無言で位置をずらす。僕はそれに応じて、再び手を置いた。


「何をしとる。邪魔じゃ」


 僕はそっと、手を下ろした。

 すると、ホボの手の上に、鍵の束が現れた。


「これは…?」

「よし、出るぞ」

「い、いいんですか?」

「ここから出ん限りは何もできまい」


 その通り、その通りなのだが。


「もう一度言う。今、完全に信用できるのは、エノモト、ヒビノ、アオキ、カトウの四人だ。それ以外は敵だと思え。変な言い掛かりをつけて、わしらを狙ってくるぞ」


 変な言い掛かり、スズキの言葉は言い掛かりだったのか。

 なぜかはわからないが、百パーセント否定することができなかった。


「ほれ。これを羽織れ」

「なんですか、これ?」


 ホボから、片面だけが黒い布を渡された。


「遮光マントじゃ。黒を内にして羽織れば、外から視認されなくなる」


 この人は一体、何をしている人なんだ?

 殺人の研究をしているんじゃないのか?

 こんなの、もはや発明家だろ。


「裏にアオキが車を停めたと、連絡が入った」


 僕らは遮光マントを羽織り、裏口へ向かう。


「どうやってですか?」

「なんだ、知らんのか?」


 ホボは頭を指差して言った。


「彼女はテレパシーで自分の思考を飛ばしたり、相手の思考を読んだりできる」

「そんな様子、一度も見せてきてないと、思います」


 僕は思い出しながら言った。


「過去に色々あってな。それ以降、必要最低限の時にしか、使わんくなった」


 もしや、もしや、あのクリスマスの日、思考を読まれていたとしたら…

 良くないのだろうけど、色々あった過去のおかげで僕の気持ちは悟られずに済んだみたいだ。


(見られていない、今の内に!)


 脳内にアオキの声が響いた。


「行くぞ、少年!」


 ホボが小さく声をかけてきて、僕たちは周囲を気にしつつ、車に乗り込んだ。

 それと同時に、アオキは全力でアクセルを踏んだ。

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