表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殺人  作者: つくし
23/37

初勝利…?

「ここからがミンの本気。彼女が睡眠を始めてから、本心を現す。コソコソとしていたさっきまでと違って、読めない動きで詰めてくる。そして、かまいたちのように切り裂いてくる」


 イトウはミンをじっと見つめたまま、説明してくれた。


「イトウは、もう大丈夫なのか?」

「うん、今はね。でも、いつ出てくるかはわからない」

「その時は、自分がついてますから」


 コバヤシがイトウの隣に並んで言った。


「頼りにしてるよ、コバヤシ」

「僕も忘れてもらっちゃ困るね」


 僕もイトウの隣に並ぶ。

 ワンはまだ温存しておこう。

 いざとなった時の最終手段として。

 僕の選択は、まず、己の力で戦うことを決めた。

 新たな一歩を踏み出したのなら、二歩目を踏み出さなくちゃ。


「さぁ、私の復讐、もとい、新人組の初陣と行きましょうか!」


 イトウは腕を回しながら、そう言って、ミンに向かって走り出した。

 僕とコバヤシもそれに続く。続いたのだが…


「あれ、いない?」


 確かにそこにはミンがいて、僕ら三人とも見ていて、追い始めたはずなのに、砂埃を残して姿を消していた。

 舞う砂埃を見つめていると、遅れていた音とともに、家が崩れ始める。


「な、なんだ!?」

「ミンが外へ逃げたのよ!」

「お、追いましょう!」


 僕たちは外へ出たであろうミンを追った。

 道路の真ん中に、目をつむりながら立っているミンを視界が捉えた。


「私がミンを縛れるよう、二人には注意を引いてほしい」

「わかった。とりあえず、いい感じに動いてみるよ」

「では、自分はユイさんをサポートするよう、攻撃を仕掛けます。」

「おう。来る時は掛け声よろしくな」


 目をつむり、深呼吸をして、


「よしっ」


 僕はミンに向かって走り出した。

 今の頭の中には、ミンを追うことしかないため、とても動きやすい。

 ただ、ミンも一筋縄ではいかないはずだ。

 動く気配すら感じさせないミンの近くへ駆け寄るが、僕は攻撃を仕掛けず、イトウたちの方へ走り出した。

 それと同時に、ミンは力を溜めているコバヤシの前に移動した。


「思った通りだ!」


 スピードを上げ、移動したミンの頭を狙って、人間パンチを繰り出す。

 コバヤシに向いていたミンの気が、一瞬、僕の方へ向いた。


「今だ!」


 合図を送ると、コバヤシは右手に溜めていた力をミンの腹へ解き放った。

 数にして五回。各指に力を溜めていたのだ。

 ちゃんとダメージは入っているはずなのだが、ミンには効いていないように見えた。

 ミンは何もなかったかのように、すぐさま攻撃に転じ、体を回転させ、僕とコバヤシを肘で突いてきた。


「いってぇ…」


 僕とコバヤシはぶっ飛ばされてしまう。

 僕は突かれる直前、危険を瞬時に察知して、脳内でワンを叩き起こした。


(使い方の荒いやつダ)

「使わないつもりだったけど、喰らっちゃいけないって、体が反応したんだ」

(…ミンとの戦闘カ?)

「わかるのか?」

(殺意の量で言えバ、サツイと変わらないからナ。一ド、眠ってからのやつはボスをも超えると聞いたことがあル)

「ボス…」

(それかラ、ユイに何の変化があったか知らないガ、俺を使える時間がかなり増えていル)

「どれくらいだ?」

(三十分は持ちそうダ)

十分(じゅうぶん)だな」


 肘を突いた状態のままでいるミンへ、僕は飛び出した。

 三十分、力を貸してくれるとは言え、早くに対処した方がいいに決まっている。

 さっきまでとは違う!僕の脳と体は一段階、進化している!


「イトウ!」

「わかってる!」


 イトウはミンを束縛し始めた。

 腕には腕を、足には足を、巻き付くように縛り上げる。


「一思いにやっちゃって!」


 休暇をもらった一週間、何もせず、ダラダラと過ごしていたわけないだろ。

 僕は、日常を取り戻すために、警察になったんだ!

 まずは右の拳をミンの顔に当てる。


「か、硬い…」


 続いて、左の拳でミンの顎を下から掬い上げるように当てる。


「なんだ、こいつは…」


 最後に、背中の拳で、脳天をかち割るように、叩き落としてやった。

 確かに傷はついていたし、それなりのダメージを負わせたはずなのだが、ミンは立ったままだった。


「なんで、立ってられんの?」


 イトウが目を丸くして言った。


「こいつ、もしかして…」


 僕はミンの頬を往復でビンタする。


「ユイ、何してんの?」

「まぁ、見てて」


 イトウは、少ししてから僕の行動を理解したようだった。

 十回ほど往復させると、閉じていたのか、ミンの瞳が開いた。


「エ、エ、なんデ?いやダ、いやダーーーー」


 ミンは突然、すごい速さで逃げ出した。


「あ、ま、待てよ!」


 僕とイトウはミンを追おうとしたが、二、三歩、足を出してから、その先にいる人物に気づき、止まった。


「あーあ、トドメとられちゃったよ」

「やっぱ私、コバヤシが好きだ」

「え?」


 どさくさに紛れて聞こえてきた言葉に驚きつつも、コバヤシの魂の込もった五指拳(ごしけん)を見守っていた。

 コバヤシの拳はミンの胸あたりをとらえると、ミンはその場に倒れ込んだ。


「手加減するのは、苦手です」


 ミンを気絶させないように、コバヤシは力を加減していたようだ。

 よく見ると、ミンの瞳は少しだけ開いていた。

 イトウはミンに縛りついて、僕たちは輸送班へ連絡した。


「輸送班来たら帰るよね?」


 僕はその問いに対し、首を横に振った。


「背中のこれ、見られちゃまずそうだし、戻るまでここで待ってるよ」

「それ、急に生えてきたからびっくりした。何なの?」

「じゃあ、イトウのことについて話し合う時に、僕のこれについても話すよ」


 イトウは頑張って光を集めたような、笑顔をしていた。


「うん、じゃあ、また今度か!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ