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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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お前、俺の心を読んでるな? :約2000文字

「ふーっ……」


(ようやく、人心地がついた。それにしても、いい天気だな……っと、ふうん。お前今、おれの心を読んでるな? おれにはわかるんだぜ。おれも“持つ者”だから――)


(驚いたな、お前も能力者か)


(えっ)


(俺もだ。嬉しいぞ。仲間がいたとは)


(え、あの、え? この声は、えっと、あなたが、おれ、あ、いや、僕に送ってるものですか?)


(おあきだの)


(は、はい?)


(ああ、すまない。ちょっと今、立て込んでてな。まったく、しつこい連中だ)


(え、は、はい……。あの、追われてるんですか? ……まさか、組織的な)


(ああ、そっちは大丈夫か?)


(え、ええ。そんな、狙われるとかは……ないですね……)


(ほう。安全な暮らしをしてるんだな。だが気をつけろ。奴らは数が多い。俺たちを捕らえ、殺そうといつだって目を光らせてる……)


(それは、その……ご愁傷さまと言いますか、はあ、大変でございますね)


(おいおい、はははっ! そんな他人行儀じゃなく、もっと気楽にはなしてくりゃらやよ)


(あ、また、お声のほうが……)


(ああ、すまない。そっちに意識を集中しないとな。ここは仲間がやかましくてな。それはそうと、協力してくれよ)


(きょ、協力?)


(ああ、実はちょうど今、仲間と一斉蜂起して、奴らに一撃をお見舞いしようって計画してたところさ)


(ええっ!? そ、その……お仲間様もまさか、超能力者であられますか?)


(いや、俺だけさ。これまではな)


(はあ、それはそれは……ん? “これまでは”って……)


(ふふっ、これも天の導きだな。そう、お前だよ。お前がいれば、作戦の成功率は格段に上がる。わかるだろ? この能力があれば、作戦の指揮もスムーズに進む)


(え、ええ、ですが、それはその……あ、僕でなくとも、無線機か何かを使えばいいのでは……)


(ん? なんだ? 嫌なのか?)


(いや、はい、いや、その、なんと言いますか……き、危険なことは、あまり……あ、あなた様の身も危ないんじゃ……)


(はあ……怖いのか。気持ちはわかるが、もう抑圧された生活にはみんなうんざりなんだ。その気持ちもわかるだろ? 連中をぶっ殺して、革命を起こす時が来たんだよ)


(か、革命……! それはその、無関係な者たちへの被害もあるのでは……)


(無関係なんてねえんだよ。これはな、戦争だ。奴らと、俺たちのな……)


(そ、そんな、お、落ち着きましょう、ね? ね?)


(どうも乗り気じゃないらしいな……いいか? こうして声を送っている今、俺にはお前の位置が丸わかりなんだよ。それに、俺の能力はこれだけじゃない。俺に逆らった奴がどうなったか教えてやろうか?)


(いや、あの、その、あのですね……おれ、いや僕たちがこうして繋がっているのは偶然といいますか、その……)


(なんだと? 俺はお前が飛ばした思考を拾ったんだぞ。何の意味もなく『心を読んでるな?』と言ったとでも? はははっ、そんなわけがないよな)


(いや、まあ、その、はい……。へへへ、カッコつけたといいますか……ええ、そんなことを言いたくなるというか、考えたくなる時期があるというか……でも、僕にはその、能力なんてものは……)


(おい。下手な言い訳でごまかそうとするなら、こっちにも考えがあるぞ。お前のちっぽけな脳みそなんざ、近づきさえすれば爆発させることができるんだぜ)


「そんっ! あっ、いえ」


(そ、そんなことおっしゃらないでください!)


(いーや、俺は馬鹿じゃない。俺ができるんだ。お前も、そのうちできるようになるかもしれん。つまり、危険ってことだ。味方じゃなければ――敵だ)


(い、いいいや! 僕は! へ、へ、平和主義! 平和主義者です!)


「ラブ&ピース! ……あ、すみません、なんでもないです」


(今、そっちに向かっているぞ。仲間たちとともにな。覚悟しておけ。ションベン垂らして泣き喚くことになるぞ)


「もうちょっと漏らしてます! あ、いや、違うんですよ、漏らしてなんか……」


(そら、もうすぐだ。ひひひひ、殺してやる。殺すのは好きだ。腕を磨けるからなあ。そうやって能力を鍛え、いずれは奴らのでっかい脳みそも破裂させてやるぞ)


「あば! あばばばば! やば、殺され、いや、あの、大丈夫です! 警察なんて、そんな……ああ、いや、大変だ! 殺される! あああ! あああ、みんな殺される!」


(ああ、そうだ。きききき……お前の脳みそを食らえば、俺の能力はさらに強まるかもなあ。啜ってやるよ。肉にかぶりつき、頭蓋骨を削り、脳を掻き出してやるよ、ききききき)


「ああああ! ど、どど、どうし――」


「お客様! あのっ、お客様! 大丈夫ですから、どうか落ち着いてください! さあさあ、こちらに」


「ああああああ! いや、その、はな、放して! おれは頭おかしくなんか……! いや、頭は大変だけど! あああああっ、来る! ああああああ! ……あ?」


「うお!」

「きゃあ!」

「ネズミだ!」

「なんて数だ!」

「どうなってんだこのファミレス!」

「うああああ!」


(……あれ? お前って、でか――あ、足。ぷぎゅ)

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