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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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シュリンクフレーション

 値上げ。それは思考と趣向の放棄。愚の骨頂、裏切りの象徴。それは誰の言い分か。消費者という名の評論家。

 突然の試練に嘆き、嫌悪し、非難する消費者。しかし、企業にとってもまた一つの試練。いかに消費者の怒りを買わずに利益を守るか。答えはもう手に入れている。


 そう、古代から続く手法、こっそり内容量を減らすことである。


 ごまかし、姑息、サイレント値上げとも呼ばれるが、それはまさに企業努力。値上げに踏み切れば、消費者は見向きもしなくなる。だからこそ、お値段据え置き、容器のサイズはそのままに中身を減らし、消費者の目を欺くことに全力を注ぐ。化かし合い、騙し合い、知恵比べ。財布の口を開けさせようと日々、研究に余念がないのだ。

 景気が悪くなると、この手口は顕著になり、『リニューアル』『美味しくなって新登場』という言葉で飾り、たびたび実行されてきた。

 中身を減らしたことを悟られないように容器を底上げし、空気を詰め込む。ポテトチップスの袋を開けてみれば、中身は袋の半分も入っていない。

 容量は減り続け、工夫は進化し続けた。 

 箱の中にさらに小さな箱を詰め込むという『マトリョーシカ方式』

 空気を詰め込むだけでなく、重さを感じさせるために石を入れた『エアークッション』

 あえて砕き、個数がわからないようにする『チャフシステム』

 空の小包装紙を大量に詰め込み、くじ引き感覚を楽しませる『無慈悲なテキ屋』

 袋や箱の中に商品の絵を描いた『トリックオアトリック』

 飲料に関しては、ペットボトルの内側に仕切りを作り、外側を着色した水で満たし、あたかも容器いっぱいに入っていると見せかける『遊漁なき水族館』など、様々な工夫、戦術が披露されたが、最終的には匂いだけを梱包した商品が店頭に並ぶようになった。

 というのも世界全体が食糧難に陥り、解決策として開発された合成食品が各家庭に配給されたためである。

 量と最低限の栄養は含まれていたが、味がなかった。そこで、匂いを嗅ぎながら食べるスタイルが一般的となったのだ。

 量が減っても、消費者は値段さえ高くならなければ購入し「ま、残して捨てるよりはいい」や「食べ過ぎちゃうから、これくらいでちょうどいい」などと自分を納得させ、適応するというわけである。



 それにしても、最近匂いが薄くなったような……。

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