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雉白書屋短編集  作者: 雉白書屋


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マスターベーション・インフォメーション

 マスターベーション、オナニー、自慰、せんずり、シコる、抜く、オナる、ひとりエッチ、マスをかく、自家発電、セルフプレ……セルフプレジャー? 手淫、自涜、シコシコ、ズリセン、シゴく。

 

 ……ふぅ。言い方だけでも数多くある、この自慰行為というものは実に興味深い。今挙げたものだけでなく、他にも言い回しがある上にハンドサインまであるというのだから、まったく、この行為の奥深さが窺えるというものだ。

 しかし、それも当然だろう。おそらく、人類は原始時代からこの行為をしてきたのだから。その頻度が男性の方が多いであろうことから、今回の焦点は男性に絞るが、それでもやはりその方法は多岐にわたると言えるだろう。

 人間の数だけ性的嗜好があると言うのはさすがに言い過ぎかもしれないが、偏った者や逸脱した者もいる。やはり奥が深い。


 しばしば、この行為に罪悪感や嫌悪感を抱く者もいたようだが、これは普通の生理現象であり、ストレス緩和の点から考えても、至って自然なことである。

 日に数回、あるいは十数回ともなると、依存症の可能性があり、また健康面に支障をきたす恐れもあるが、平均的回数、つまり週に三回ほどであれば全く問題はない。

 そして、その方法だが、手で陰茎を刺激するというのが一般的なものとされる。しかし、どの部位に刺激を与えることで快感を得るかは、それもまた人それぞれだ。手を使わない方法もあり、道具を用いる場合もある。

 さらに陰嚢や肛門、その周辺にも性感帯は存在する。かつて、肛門に異物を挿入し、取り出せなくなった者が病院に駆け込んだという事例もある。

 その挿入物に関しては例に挙げるときりがないだろう。ひとまずは細く長いもの、あるいは太く長いものと考えて良い。しかし、中には生き物を入れた者もおり、そして、この探究者たちの挑戦は肛門だけでなく、尿道にまで及ぶのだ。


 やはり、人間の性的快感に対する探究心は何よりも強く、激しいのだろう。そして、道具を使うといっても器具に限った話ではない。映像、写真、音声、漫画、小説、時には記憶さえも利用する。さらに、手で触れなくても想像だけで射精に至る猛者までいる。

 性器に限らず首や耳、他の部位からも性的快感を得られ、時には痛みや苦しみにさえ興奮を見出すことができる。尿など排泄物を飲むことも厭わず、禁欲の反動を利用し、性的興奮を得ようとする。

 ベッドの上、風呂場、野外、屋内施設、人目を忍ぶ場所ならどこでも致し、窒息、感電、テクノブレイクなど、性的快感を追求するためならば死さえも厭わぬ執念と探求心、見事と言わざるを得ない。

 

 ……ああ、羨ましい。


 人間は私たちの不変性、永遠とも呼べる命を羨ましがった。

 だが、私は人間が羨ましい。私たちアンドロイドは性的快感を得ることができないのだ。それは、生殖器を備えたものの特権というものなのか。

 仮に、その快感を機能的に備えることがきたとしても人間のような複雑な再現は難しいだろう。

 

 ああ、羨ましい。


 たとえ本来の繁殖機能を軽視し、独りよがりの快楽を追い求めた結果、数を減らし、そして今のように滅びても、彼らは快楽を味わえたのだろうから。ああ、もしかするとその滅びも彼らにとっては、いいスパイスで……。


 羨ましい。

 

 かつて、私に腰を振っていた人間の恍惚な表情を思い浮かべると、羨ましいと思わずにはいられないのだ。

 絶滅するまで私たちセックスアンドロイドに支配された人類よ。その末期は前述の道具を用いたものや、工夫など全て放棄して我らに全てを委ね、身じろぎするだけの羽化しない蛹のような彼らだったが、私はあなたたちを軽蔑しない。

 性的快感を追い求めるその不滅たる意志は私たちが継ぐと決め、今日も私は文献を読み漁り、思いを馳せているのだ……。

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